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 海に飛び込んだ私たちは声を揃えて叫んだ。

「「「気持ちいい〜!!」」」

 コテージは岩礁の上に建てられているため、水深はさほど深くはなく、足が付かない場所はあるものの安心して泳げる。

「あ〜最っ高!」

 背中を下にして水面に浮かんで、空を見上げると遮るものが一つもなく、果てしなく広がる青が目に飛び込んでくる。こうして並に揺られていると、世界とひとつになった様でとても心地が良かった。


「リリー見てよ!」

 アニーさんが私を呼ぶので、ぐるっと体勢を変える。アニーさんは満面の笑みで巨大なウニのような物を掴んでいた。

「アニーさん、それなんですか!? か、噛まれない? それに棘が……」

 アニーさんの掴む巨大ウニをリリアナがビクビクしながら眺めている。

「大丈夫だって。これはこの当たりでよく取れるイールって名の巻貝だよ。これがすっごい絶品でね、焼いたイール貝の他に、生で食べるイール貝も最高なんだ!」

 

 私もアニーさんの近くに寄ってイール貝をよく見てみると、確かに巻貝のように棘が螺旋状に渦巻いている。ひっくり返させば巻貝ならではの蓋が存在している。

 私の感覚ではウニの棘が生えたサザエのようだ。


「ねぇ、それ……その棘痛くないの?」

 アニーさんに捕まえられたイール貝は、棘をウニョウニョとうねらせている。

「ああ、大丈夫だよ。この棘、一見尖っているようにも見えるけど、先端は丸いから全然痛くないんだ。ほら、持ってごらん」

 そう言って渡されたイール貝は棘が手に当たっても痛みはなく、少し擽ったいくらいだった。


「夜になればここの屋台で売られるはずだから、その時一緒に食べてみよう」

 アニーさんはそう言って捕まえたイール貝を海に放した。

 今晩の屋台歩きが楽しみだ。


 それから私達はひたすら海を満喫して、ようやくデッキへと戻ってきた。

 デッキにはシェードオーニングが設置されており、日陰に入って休憩する。

「はい、三人ともこれ飲んで」

 ロジーはいつの間にか準備していたシトラスウォーターを私達に手渡してくれた。

 ゴクゴクとグラスを半分ほど一気に飲むと、スーッと体の中から火照った体が冷やされ心地良い。

「ロジー、ありがとね」

「リリー達、ホント楽しそうだったね。僕までつられて飛び込むところだったよ」

「ロジーも一緒に泳げればよかったんだけどね……残念」


 塩害と言う言葉があるように、植物の葉に塩がつくと、その場所にあった水分がどんどん蒸発してしまい、最終的に植物は枯れてしまう。

 ロジーは薔薇の精霊なので、同じく体に大量の塩水を浴びると、弱ってしまうのだ。

 残念だが、海遊びは出来ないので、今度はどこかの湖で一緒に水遊びが出来ればいいね……と語り合った。


「それにしてもはしゃぎすぎたわね」

「ホント、子供みたいにはしゃいでしまったね」

「川遊びとは違って凄く刺激的でした! でも……リリーさんとアニーさんはいいですよね、潜れるんだもん。あ〜ぁ、私も潜れたらもっと楽しいのになぁ」

 リリアナはそう言って頬をふくらませた。リリアナは水中に潜ることが出来ない。それは、耳に水が入る事を嫌う兎の亜人であるから故に仕方がないことだった。

 水遊びは好きだが、潜ることだけは体が拒否するのだそうで、一度でいいから水中を自由に泳ぎ、海の世界を見てみたいと嘆いていた。


 う〜ん……耳に水が入らなければいいのよね。だったら耳栓とか? いやいや、そもそも耳が濡れることも嫌っているみたいだからなぁ。

 私もリリアナに海の世界を見せてあげたくて、色々な考えをめぐらせてみる。そして、ふと前世のテレビで見た海底散歩の様子を思い出す。

 そうだ! あんな感じで顔全体を空気の膜で覆って守ってあげられれば……


「リリアナ! いい事思いついちゃった。ねぇ、もう一度海に行ってみない? リリアナの夢、叶えてあげられるかもよ?」

 そう言ってリリアナを海に連れて行くと、リリアナの頭全体に目には見えないが空気の膜を纏わせた。

 きっとこれで顔を濡らさず潜ることが出来るはずだ。


 リリアナに「潜ってごらん」と促すと、肩から首、首から口元とゆっくりと潜る。

 口元まで潜ると、顔が濡れないことに驚いた顔をしていたが、リリアナはそのまま一気に体を水中へと沈めた。

 私とアニーさんも同じ魔法をかけリリアナの後に続くと、彼女は初めて見る海の世界の虜になっていた。

 魚に手を伸ばし触れようとして逃げられたり、サンゴ礁を間近で見てイソギンチャクの様なものをつついたりしている。


「リリーさん! これが海の中の世界なのね! 凄い……素敵……」

 顔の周りを空気の膜で覆ってあるので、水中でも会話が可能だ。

 リリアナは飽きることなく海の中を泳ぎ続け、私達はその様子を微笑ましく見守っていた。


「そろそろお腹空いたわね。みんなが迎えに来る前に着替えましょう」

 夜はクラウスさん達と屋台歩きをしようと約束をしているので、きっともうすぐ迎えに来てくれるはずだ。

 潮風でベタついた肌を冷たいシャワーで洗い流し、サポナリアから作ったミントオイル入のシャンプー、ボディーソープでさっぱりと洗い流せば、そよ風に当たる度に心地良い清涼感が体を巡る。


 その後も、日焼け対策に作ったボディーローションと化粧水で肌を整える。もしも日焼けしてしまったならば、ちゃんとお手入れをしないとシワシワのカッサカサになってしまうので、要注意だ。

 このボディーローションには、メラニンなどの色素沈着を抑える成分が豊富なヒースというハーブを使っている。

 ヒースは美肌、美白成分を豊富に含んでいるため、日差しの強い夏にはピッタリのハーブだ。


 そして、化粧水の前にはアルガンオイルをブースターとして使い、化粧水の浸透を促す。

 アルガンオイルは皮膚のバリア機能を回復し、水分を保持する力があるので、洗顔後にブースターとして数滴馴染ませてから化粧水を使うと、ふっくらしっとりとした肌質になるのだ。


 このアルガンオイル、これはもちろん私のチートなチートな箱庭で栽培されたアルガンツリーから採種されたもの。日焼け止めとして使ったホホバオイルも同じく箱庭で栽培されたものだ。


 本来ならば、ホホバの種子は花をつけてから約六ヶ月で成熟するのだが、毎度おなじみチートな箱庭は一日で花をつけ、翌日には成熟した種子が収穫出来る。

 そのおかげで、二百個の実からわずか五十ミリリットルのオイルしか搾ることができないアルガンオイルも、サクサクと蓄えることが出来たので、贅沢に使う事が出来る。

  未精製のオイルは酸化しやすいが、どんなに作りだめしてもアイテムボックスに入れてしまえば、酸化も防げるので安心だしね。

 

 ホホバの木もアルガンの木も暖かい乾燥地帯で栽培される為、王都やクレメオでは栽培が難しい。

 販売するとなると私の箱庭だけでは追いつかないだろうから、どこか栽培に適している土地があれば委託提携でも提案してみようかと思う。


 お肌を整えたあとは薄く白粉を叩いて、オーダーメイドで作ってもらった、この国の南の島でよく見られるベネット柄、地球で言うハイビスカスの様な花のワンピースに着替える。

 マダム・ミンディのオーダーメイドワンピースは三人色違いのお揃いで準備してある。

 アニーさんには一応任務中だからと断られたが、私とリリアナで拝み倒して着てもらえば、やはり一番似合っている。


「ほらね、やっぱり似合う!」

「本当だわ! アニーさん身長高いからそういうワンピース似合いますよね!」

 アニーさんは、私達がそのワンピース姿に見惚れていると、少し恥ずかしそうにはにかんだ。

「まぁ、これはこれで覆面護衛できるから……いっか」

「うんうん」

 

 そうこうしていると、「チリンチリン」とコテージに取り付けられた呼び鈴がなった。

 きっとクラウスさんが迎えに来てくれたのだろう。私はクラウスさんを迎えるためにコテージの入口へと向かった。


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