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花と浄化

「ただいま〜。あぁ〜疲れた〜!」

 家に着くなりソファー倒れ込む。


 今日は色々あったな。ソニアさんに出会えたのはとても幸運だったと思う。買取のことはもちろんだけど、村の人達から【魔女】と疑いの目を向けられた時、疑いもせずに庇ってくれた。あの時ソニアさんがいてくれなかったらどうなっていたかと思うと血の気が引いてくる。あのまま噂が広がり、魔女討伐なんて大騒ぎになれば私はここには居られなくなるのだから。


 それに、あの女の子たちに出会えた事も私にとっては嬉しい出来事だった。私を心配し涙を流してくれた彼女たちに、次にあった時どんな花をプレゼントしようかと胸を膨らませる。ポプリが気になっていたようだから、ラベンダーのポプリと、新しく違う香りのポプリを作るのもいいだろう。それをプレゼントしたら喜んでくれるかな?


 そして、初めて見た魔獣。あの黒い魔素を纏った大きなイノシシは【ワイルドボア】と言っていた。日本にいた頃に動物園で見たサイくらい大きかったな。長い牙と赤い鋭い目。神様も言っていたけど、濃すぎる魔素のせいでモンスターが増えたみたいだし、住んでる村にモンスターが頻繁に出れば死活問題だろう。それに、ここの土地も魔素で汚染され人が住めない土地になっているみたいだしね。私は浄化出来るから住めているんだろうけど。


 しばらく物思いにふけっていたが、ソファーから起き上がり、カモミールティーと、ティーセットを持って外へ出る。外への扉を開けた先はカバードポーチになっていてちょっとしたテーブルセットが置いてある。そこで外の景色を見ながらお茶をし、ここでの生活での目標を立てることにした。


 まずはこの濃すぎる魔素の浄化よね。とは言っても、ここで生活してるだけで浄化出来るって神様は言ってたけど、自覚ないから本当に浄化出来てるのか分からないんだよね。そういえばワイルドボアを初めて見た時、体から立ち上る黒いオーラのようなものを見て、直感で「あれは魔素だ」って思ったんだよね。あんな感じで、この地の魔素も目視出来れば浄化のヒントを得られるんだろうけどな。

 そう、例えばこんな風に集中して目を凝らすと見えたり……。

「ん?」

 何か、見える? 目の錯覚かとも思ったが、お茶を入れる手を休め、カバードポーチから出て花壇の方へ行ってみる。

 もう一度、目に魔力を集中させる感じでよく見てみる。すると、ワイルドボアのオーラのような魔素ほど濃くはないが、黒いモヤのようなものが辺りに広がっている。

「ほんとに見えたね。何でもアリか」

 そんな事を言いながらも、そのモヤをよく凝視する。すると、モヤは私の方へ吸い寄せられフッと消えていく。モヤはどんどん集まってくるが、その全てが私の周りで消えていった。

「これって、浄化してるって事なのかな?」

 神様が言っていた通り、本当に何もせずとも浄化しているみたい。


 そこでモヤ(もう魔素と呼ぼう)の動きを見ていると、どんどん私に集まってくる魔素の他に違う所にも吸い寄せられている魔素があった。目で追っていくと……

「花?」

 そう、花壇の花に吸い寄せられ、魔素は花に取り込まれた。

「えっ? 大丈夫なの?」

 花の様子を見ていると、魔素を吸い込んだのち花からキラキラ輝く粒子が吐き出されていた。

 そして、その粒子は空気に溶け込むようにスッと消えていく。

「綺麗ね……これってもしかして、花も浄化をしてるんじゃない?」

 また直感でそう感じた。

「これはいいかも!」

 私の周りほど沢山の魔素は集まってはいないが、花をたくさん植えればその分浄化の進みも良くなりそう。

「何だか上手く行きそうな気がする」

 明日からしばらく、魔素の動きを見ながら花を植えて検証してみよう。


 それに、村も守らないとね。例えばだけど、ペパーミントって魔獣系のモンスターが嫌う匂いを放つんだよね? って事は、村にペパーミント植えたらいいんじゃないかな? ミントは繁殖力が強いから勝手に増えていくし、村の人でも手入れが出来ると思う。その為には何とか効果を体験してもらわないと。ここは村長さんとソニアさんに相談ね。


「きっと上手くいく。みんな待ってて」


 それから一週間、忙しくも充実した日々を送った。


 まず、一つ目は花と魔素の研究。花によって浄化の進み具合は違うのか、またどんな花が浄化の力が強いのかを調べた。

 結論から言うと、どの花も浄化の力は同じだった。とにかく沢山の種類の花を植えて、観察してみたんだけど、みんな同じなのよね……残念。まぁ、おかげで家の周りは花で賑やかになったけど。


 散々試した挙句結果が得られず、残念に思っていたが、ふと家の南東、ハーブ園を見たところある一角で魔素が確実に薄い場所があった。急いで行くとそこは【ヒソップ】を植えたところ。


 草丈約六十センチ、幅一メートルにもなる株に紫の花を付けたハーブ。そのヒソップが、ガンガン魔素を吸い取っていた。

「……すごい! でも、何でヒソップ?」

 ヒソップはヤナギハッカとも呼ばれ、ミントのような香りがする。が、スペアミント、ペパーミントを見ても浄化の力は弱い。


「香り的には似てるんだけどな〜。何が違うのかな?」

【ハーブコーディネーター】の知識をフル回転させ、一つの結論を導き出した。

「花言葉……?」

 そう。ヒソップの花言葉は「清潔」「清める」そして、「浄化」

 思い出した瞬間ざわりと鳥肌が立ち、何かが芽生えたような感覚に陥る。

「? なんだろ。この感じ。そうだ! ステータス!」

 自分のステータスを表示してみると、前回とは違ったステータスが目の前に。


名前  リリー

職業  ハーブコーディネーター

称号  ハーブの魔女

魔力  ∞

スキル 鑑定スキル 製薬スキル(メディカルハーブ)

特記  創世神の加護 アイテムボックス∞ 自動翻訳


「なんか増えてる」

 製薬スキルにメディカルハーブの表示。確かちょっと前までは製薬スキル(特殊)だったはず。

 メディカルハーブとは、健康維持に活用するハーブの事。いわゆる自然療法ってやつね。

 そして、職業。無職脱出しましたー!ハーブコーディネーターなんて職業こっちには無いだろうから自称になっちゃうかもしれないけど、ちゃんと仕事しますよ! と、まぁここまではいいとして問題は……


「ハーブの魔女って何よ。魔女って!」

 バースの村で魔女疑惑をかけられ、危うくえらい目に遭うところだったのに……。何でこんな事に。でも、称号って別に誰に見られるわけでもないし、黙ってれば問題ないか。


 脱無職に喜び、メディカルハーブの製薬スキルを手に入れ、そこで火が付いた。これが二つ目。

 村のみんなの為、ハーブで何か作れないか試行錯誤。そして数種類のメディカルハーブを作った。


・エキナセアの抗ウイルス薬

・エルダーフラワーの解熱剤

・アーティチョークの吐き気止め

・セージの抗菌スプレー

・フェンネルの催乳ティー

・アロエ軟膏

・サフランの止血剤

・クローブの痛み止め

 メインのハーブに補助効果のハーブをブレンドして色んなものを作ってみた。


 三つ目はローズガーデン計画。

 なんと、この一週間で色々なバラが誕生した。あの、【ローズガーデンの種セット】からまさかの珍種が盛りだくさん。

 でもね、何回も言うかもしれないけど、バラは種からは普通育てません。バラの種って売ってるところ見たことないでしょ? 確かに、バラの種は存在するよ。バラの花が枯れるとローズヒップが実り、そこに種が出来る。

 でも、その種を蒔いたからといって、種を採取したバラと同じ花が咲くとは限らない。親株から違った特徴を持ったバラが生まれる事があるの。(それも醍醐味って考えもあるけど、販売には向かないよね)


 だから挿木や接木で育てるんだけど……


「ローズガーデン作れるから嬉しいけど、なんか……納得いかない……」

 なかなか割り切れない私であった。




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