ギラ・ドーラスの理由
およそ生き物の死に方とは思えない光景を不気味と感じたエターナは、思わずピコハンの柄を握る両手の力を強めていた。
「ああいう死に方をするって……」
「文字通り、この世のものではないという事でしょう」
そう言ったアインの紅い瞳は消え去った異魔人のいた場所でもエターナでもなく残された敵であるギラへと向けられていた。 そしてそれはアストも同様であったが彼の持つマナの剣から光はすでに失われている、人間に対し使うべき力ではないという事だろう。
「下級とはいえ異魔人を倒すとは……マナの剣、あながち偽物というわけでもないという事か……」
感心した風にアストを見た後に、今度はエターナを見たその表情は呆れたというものに変わる。
「そしてエターナル・ブレスレットがありなが何も出来ないでいたとはな、やはりお前のような小娘が持つべきものではないな」
ギラの言い方がとても身勝手なものと感じたエターナは「うっさいわ!」と言い返す、このブレスレットはちゃんと師匠から貰った物でありどこの誰とも知らないおっさんにとやかく言われる筋合いはない。
「ギラ・ドラース。 トキハ様の兄弟子であった男、何かと突っかかって来て困っていたとトキハ様が話していたように思います。 そのあなたが何故エターナの前に現れるのですか?」
アインの問いにギラは忌々しそうな表情をした。
「トキハは後からやって来たくせに師に目を掛けられ可愛がられ、挙句の果てにはエターナル・ブレスレットまで譲られおったのだ。 そんなもの認められると思うか?」
「エターナル・ブレスレットとは何なんです? いくら発掘遺産とはいえ、こうも拘る物なのですか?」
言われてエターナも同じ疑問を持つ、欲しい物は力づくで奪うという事がまかり通る世界ではない。 窃盗や強盗は立派な犯罪であり然るべきリスクを伴く行為なのだ。
「エターナル・ブレスレットは師の師、更にはその師からと受け継がれてきた物なのだ、つまりブレスレットを譲られるという事は師の後継者であるという事なのだよ!」
ギラは右手に持った杖を前に翳すと、杖の宝玉が不気味に光を放ちだす。
「その証しが”夢幻の魔女”だ、”夢幻”とは師に認められた後継者に受け継がれる称号なのだっ!!」
杖に先端に小さな火が現れたと思ったら、それがみるみる肥大していき最終的にギラの上半身が視えなくなるくらいの大きさの火球となった。
「げっ!! 《ファイア・ボール》!?」
エターナが驚くと同時に火球は放たれた、この火球は着弾した場所から一定範囲を炎で包み込み敵を焼く強力な魔法だ。 何の対抗策もなければ人間など簡単に焼死させる威力の火球は、まっすぐ彼女目掛けて飛んでくる。
「「エターナっ!!!!」」
アインとアスト、二人の悲鳴めいた声が響いた。