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魔法使いさんと猫さん

魔法使いさんと古書店主さん

作者: なみのり

夕方。私は商店街の古書店にやって来た。猫さんがいつまで経っても帰ってこないのだ。どうせまた、うちのお店も手伝わずに古書店に入り浸っているのだ。これは一発ガツンと言わなきゃダメだ。そう決心して古書店の敷居に入る。

「おじゃましまーす。」

「おい!魔法使いさん!迎えに来るのが遅いぞ!」

いきなりレジの方から猫さんのお怒りの声が聞こえた。

「え…あっごめん猫さん…。」

…何故私が謝っているのだろうか。釈然としない気持ちで猫さんの方に行く。猫さんは目の前に本を広げながら、スフィンクスみたいな体勢でレジに座っていた。

「あー猫さん。そんなところで立ち読み…もとい座り読みしちゃダメだよ。店主さんに怒られるよ。」

私が猫さんを注意すると、レジの奥からある人物が溌剌とした声と共に現れた。

「あ!魔法使いさん。猫さんには僕がここで読んでいいですよって言ったんですよ。」

いつもスマイルを浮かべているのが特徴のこの店の店主さん…もとい古書店主さんである。

「え?でもこんなところで読まれたら邪魔じゃないですか?」

「いえ。これから「喋る猫がいる古書店」として売り出すのでOKです。」

猫さんも驚いている所を見ると、初耳だったようだ。…ウチがさきにやればよかった…。


「と…とにかく帰るか…魔法使いさん。」

猫さんは逃げるように私の両腕に入ってきた。猫さんは不器用だから格好良く肩に乗れないのだ。だから私の両腕でずだ袋みたいに抱えられている。

「あっ魔法使いさん!ちょっとお時間頂けます?新しい古書店のイノベーションを考えたので、見ていってください。」

「え?イノベーション…?なんですかそれ?」

それには猫さんが答える。

「技術革新のことだな…。使い方は違う気もするが、ようするに新しい客寄せを考えたって事じゃないか?」

ああ、さっき猫さんがやってたみたいな奴のことか…。私は猫さんが招き猫をしている所を考えて、吹き出しそうになった。

古書店主さんは私達を店前のオール100円の棚に連れていった。

「?なにか変わったんですか?」

私はつぶさに観察するが、棚にも本にも変わった所は見られない。

「これを見てください!」

古書店主さんは100円と書いて貼られた紙を指差す。

「あ」

そこには幾らか小さな字で「豪華特典付き!」と書かれていた。

「え!特典ってなんなんですか!?」

「ふっふっふ。それは買ってからのお楽しみです!」

「じゃ~買います!」

私は100円の古本の中から比較的綺麗な一冊を取りだし、お金と一緒に会計して貰った。

「おい、魔法使いさん!そんな即決していいのか!?」

「まあ、100円くらい良いじゃない!豪華特典も気になるし。」

「そういう風に無駄遣いばかりしてるからいつも金欠なんだろう!100円あればもやしもうまい棒も買いほうだいだろうに!」

そういわれるとなんだか惜しくなってきた。だが、もう100円は古書店主さんの手の中なのだ。冷静に考えると特典もあまり期待できないだろうが、終わった事をうじうじ考えても仕方がない。私は頭の中に浮かんでいるマックのツイストソフトを頭から追い出した。

「はい。こちらが豪華特典です!」

渡されたのはレジの奥に置いてあった、リカルデントのボトルから出されたガム一つだった。ちなみにミント味。

私はその場に座り込んで一通り落ち込んだ。やはり感情に任せて行動すると、いいことがない。


その後も古書店主さんのちょっとズレたイノベーションに付き合わされた。イノベーションの説明をしている古書店主さんはずっと気持ちのいい笑顔だったので、ふと古書店主さんに聞いてみた。

「古書店主さんはこのお店が好きなんですね。ずっといい笑顔ですよ。」

古書店主さんは一時停止した後、衝撃の一言を繰り出す。

「いえ、僕は地の顔が笑顔なだけです。」

今度はこちらの時が止まる。

「え…。じゃあ、今までも楽しかった訳では無いんですか…?」

「え?いや、まあ楽しいですが。ただ笑ってるように見えるのは地の顔が笑顔ってだけです。」

私は少し興醒めてしまった。だが、古書店主さんは言葉を続ける。

「ただ、このお店は好きですよ。というか本が好きです。この沢山の本を見てくださいよ。」

古書店主さんは手を広げて見せる。私は幾つもの棚にパンパンに詰め込まれて溢れかえっている本を見る。

「この本一つ一つ…いや、一文字一文字に書いた人の想いや悩み、愛や憤りが込められているんです。この夜空の星の数ほどの文字を思うだけで、自分の悩みなんて大したことないとおもいませんか?」

成る程…悩みの無さそうなスマイル古書店主さんにも色々思うところがあるんだなぁ…と思った。

「ちなみに古書店主さんはとの本が一番好きですか?」

気になったので聞いてみる。

「いや、本は眠たくなるのであまり読みません。」

…。

本当によくわからない古書店主さんだと思った。

お恥ずかしながら文章の仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、一生懸命1歩ずつ頑張りたいと思います。アドバイス等をどしどし下さると助かります。

コメントも一言貰えるだけでモチベーションが凄く上がるので、お暇であればお気軽にお願いします。

毎日1話以上の投稿を目指していて、今日で8日目、今日2個目の投稿です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >スフィンクスみたいな体型→体勢 香箱座り、とも言いますよね。 [一言] 「魔法使いさん」がシリーズ編集されている!! 小説の中でいいので、魔法使いさんの見た目や猫の毛色・声を知り…
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