足跡5
めっちゃ、短いです!
ぱぱっと読めちゃいます!
「え、嘘……みずは……?美來……?」
出口は開いたかと、みずはに尋ねようとして、振り返った時にはもう、先程まであったはずの二人の姿が、忽然と消えていた。
「え、嘘、一方通行なのよ…?」
この通りは、間違いなく一方通行。そして出口の穴は牛鬼の糸により、塞がれている。
得体の知れない妖怪であるとはいえども、みずはが何も言わずに姿を消すとも思えないし、そもそもそんな力があるようには見えなかった。もし使えるのならもっと前の段階で使っているはずだ。
その瞬間、脳裏に今日の昼間見た足跡が思い浮かんだ。
そして、ふと疑問に思う。
──あれ?昼間見た足跡って、さっき倒した牛鬼みたいに、蜘蛛の足みたいな形……してたかしら……。
一気に血の気が引いて青白くなる。
何故、今の今までそのことに気づかなかったのか。
昼間見たあの足跡は、あの足跡は、どう考えても、さっき倒した牛鬼のものとは別物だ。
さっき倒した牛鬼の足は、どう見ても蜘蛛だった。
あの蜘蛛のような足で、昼間見たような巨大な足跡を残せるはずはない。
つまり。
牛鬼は……一体ではない。
「みずは!美來!どこなの!?返事して!」
一体目を倒して安心しきっていた。よくよく考えれば、あの牛鬼の姿を見た時にすぐに分かったはずの事を、なぜ今の今まで気付かなかったのか。
あの足跡は間違いなく、牛の足の形をしていたのに──。
みずは達が居た出口のすぐ側に急いで戻ると足元に大きな穴が空いていた。
その先はまるで、シャボン玉の膜ように色々な色が混じった層があり、勝手な先入観でものを言えば、この先は全く別の場所に繋がっていそうな気がした。
所謂「テレポート」が使えそうなこれに、思い切って手を突っ込んでみる。
向こう側に突っ込んだ掌で僅かに風の流れを感じた。
「や、やっぱり、どこかに繋がってるのね…」
鬼になってから、なんだか勘が冴えている。
こういうところだけで言えば大変便利なのだが。
「ということは、みずは達もこの先ね……。ちょっと怖いけど、仕方ない……、うわあっ!」
思い切って頭を突っ込んでみる。が、辺りの景色を確認する前に、重力に押されて中に引きずりこまれるような形で落ちた。
背中から勢いよく落ちて、痺れるような痛みに悶える。
「いったたた……」
腰をさすりながら辺りを見回してみる。
すると驚いたことに、そこはもう洞窟ではなかった。
そこは深い森の中だったのだ。
沢山の背の高い木々が、大きく枝を伸ばしている。加えて、辺りは湿気が多く、薄く霧がかっていた。
森林浴をするにはいいかもしれないが、今この状況では、薄気味悪いとしか思えない。
「ここも牛鬼の結界の中? ていうかさっむい……」
ひんやりと冷たい風に片腕をさする。
ため息という名の白い息を吐きながら、とりあえず歩こうと思ったその時、前をぼんやりと金色に光る玉が横ぎっていった。
「え、なにあれ……ほたる?」
ほたるにも似たその玉は、ふよふよと私の目の前を浮遊したのち、森の奥の方へと飛んでいく。
でも不思議だ。誰に言われたわけでもない。その光が喋ったわけでもない。なのに、ついてこいと言われている気がして、私は気がったら後を追っていた。
9話は明日あげますー!