足跡4
7話です!
よろしくお願いします!
戦闘シーン書くの難しき!!
ここは一体何処だろう。
私、水島美來は、気がついたら見知らぬ洞窟の中にいた。
冷えきった壁と地面。湿気が多く、天井から水が滴り落ちている。辺りに明かりはなく、真っ暗でほぼ何も見えない。
「え、え、ここ、どこ……? ていうか、私なんでこんな所に……。あっ」
そうだ。私は噂を確かめる為に夜まで学校に残っていたのを思い出した。
警備員と教師の目を掻い潜って、旧校舎の裏側までやってきたところまでは覚えているのだが、そこから、どうなったんだっけ…?
頭を強く打った時のような頭痛に襲われて、私は頭を押さえた。
「取り敢えず、出口探してみようかな……」
見知らぬ場所ではあるが、歩いていればいずれ出口くらいは見つけられるだろう。終わらない夜は無いように、出られない洞窟など無いはず。もし出口が無いのであれば、作ればいいではないか。などと、私が楽天的な言葉を零せば、いつもなら……あの二人がツッコんでくれるのに。
ふと、心細さを感じて、周りの空気が一気に寒くなるように感じる。
「まぁ、ここでじっとしていたって仕方がないしね…」
そうだ。ここでうじうじしていても始まらない。取り敢えず歩いてみよう。
と、一歩踏み出した時。背後に気配を感じて振り返った。
一瞬で空気が凍りつく。
そこには、暗闇の中に浮かび上がった大きなシルエット。
黒々としたシルエットは足が多く、まるで蜘蛛のようだ。体はゴツゴツとしていて岩のよう大きい。
『グオオオオオオォォォォッ!』
その黒いシルエットが、地面も震えるような声を上げる。耳を手で覆うが、それまあまり意味をなさない。静まり返っていた洞窟がそのシルエットの声を反響させていっぱいになる。鼓膜が敗れてしまいそうだ。
と、その時、首の後ろに激しい衝撃が走って、私は声にならない声を漏らした。
「……ッ」
それと同時に、意識が吹っ飛んだ。いきなり電源コードを引き抜かれたテレビのように、ぷっつりと視界がシャットアウトする。ぼんやりと残る意識の中で、聞きなれたあの子の声がする。昔から聞きなれた、懐かしい声。なんだか胸の内がぼんやりと暖かくなった気がする。
ああ、良かった。
あの子がいればもう、大丈夫──。
*
「見つけた……!」
暗闇の中で、牛鬼の姿が見えた。
みずはが話していたように、下半身は牛、上半身は鬼である──と思ったのだが。
下半身はお世辞にも、牛に見えるとは言い難い。そう、私から見れば完全に蜘蛛だったのだ。身体は大きく蜘蛛の様に生えた六本の足は、先が鋭く尖っており、爪が長く伸び過ぎた人の手にすら見えて気味が悪い。顔はみずはの言っていた通り鬼の顔であり、悪鬼の顔とも大差がない。強いて言うのであれば、悪鬼よりも牙が長いといったところだろうか。
牛鬼の前には、呑気に辺りを見回している美來の姿。やっぱりここにいた。
どうやら背後の牛鬼には気がついていないようだ。だが、それをいい事に牛鬼がその鋭く尖った前足を持ち上げた。美來を切り裂くつもりか。
胸の奥そこでふつふつと湧き上がる何かが、溢れた気がした。これを怒りと呼ぶのか、憎しみと呼ぶのかはわからない。というより、そんなことはどうでもいい。今は、美來を助けることだけ考えればそれでいいのだから。
美來がやっと牛鬼の気配に気がついて振り返る。牛鬼は振り返った美來を威嚇するように大きく吠えた。
「グオオオオオオォォォォッ」
声で威圧し、獲物の動きを止めようとする常套手段を繰り出した牛鬼の前に、私は飛び出す。
「おい! ヌシはまた勝手に飛び出しおって……!」
その時、牛鬼が、その鋭い爪を振り下ろした。勿論今は、身体能力も人間の時とは違い、尋常ならざる速さで動くことができるので、避けることは可能なのだが、気がついた時にはもう、みずはの小脇に抱えられていた。もう一方には美來が、いつの間にやら気絶させられた状態で抱えられている。みずはが私と美來を抱えて飛び退いた場所が、牛鬼の強靭な爪で大きくえぐれる。そのままクレーターの様に大きく跡が残った。
「牛鬼に真正面から立ち向かうやつがあるか!」
「ちょっと! なに人の友達を何いきなり気絶させてるのよ!! 怪我でもしたらどうするの!」
「そんなことよりヌシはもう少し自分のことにも目を向けよ、変化の術が解けておるぞ!」
「えっ?」
慌てて頭に手を当てると、無くなっていたはずの小さな角が、控えめに主張してくる。いつの間に生えてきたのか。よく見ると髪も若干赤みがかってしまっている。私はもう完全に、鬼の姿となってしまっていた。
「いつの間に……!?」
「あまり心を乱すでない。ヌシにかけておる術はあまり強力ではないのでな。心が乱れれば簡単に解けてしまう。友人に人でないと気づかれては困るだろう。取り敢えず逃げるぞ」
みずはは、私を下ろして、気絶した美來のみを抱えた。
獲物が増えたとその巨大な足で、地面を掘ってこちらへ向かってくる。この牛鬼、あの図体の割に素早い動きをする。私たちが避けたギリギリの所を牛鬼の鋭い爪が横切って行った。
「これ、出口どこにあるの?!」
「この洞窟は常に出口が移動するが、こっちから風が来ておるから、恐らくこっちだろう!」
「そんなんで本当に大丈夫なの?!」
すると間もなく目の前に一筋の光が見えた。今は月明かりすら眩しく明るく見える。
「良かった、出口…!」
だがその希望の光は直ぐに太い蜘蛛の糸と思われるものに張り巡らされ塞がれてしまった。
道は一方通行、逃げ場がない。
「塞がれた……?!」
「困ったことになったものだな……」
流石のみずはも切羽詰まっている様子だ。このままでは全員この牛鬼の餌食になってしまう。私たちは出口に背を向けて、牛鬼を睨みつけて後退するしかない。この状況を打破するにはどうしたらいいか。私は必死に考えた。
そういえば、と、みずはがここに入ってきた時のことを思い出す。
「みずは、ここに入った時みたいに、術かなんか使ってそこを通れるように出来る?」
「……できるが、時間がかかる」
「なら、私がコイツの相手をする。それなりに強くなってるんでしょ?私」
勿論恐怖はあるし、面倒なことはしなくない主義の私だが、此処で諦めて大人しくこの牛鬼の餌食になるほど往生際は良くないし、友人の命をそう簡単に諦めるほど落ちぶれてもいない。
「だが、1人で牛鬼をどうにかするなど流石に無茶だ」
「いいからさっさとやって!」
牛鬼の追撃が来る。その鋭い爪を太刀のごとく振り下ろし、その勢いに応じて周りの空気がヒュンッと音を立てる。私は慌ててその爪を受け止めた。まさか受け止められるとは思わなかったが、その代わりにこの爪の勢いと重さが私を通り抜けて地面に伝わり、地面が大きく割れた。
私を纏う妖気が赤く色づく。
そのまま力一杯持ち上げ……たかと思ったが、それほど重くないことに気がついた。まるでティッシュの箱のように軽い。これなら。
「おりゃッ」
私は持ち上げた牛鬼を遠くの壁に向かって軽い力で投げる。
その力に従って投げられた牛鬼はものすごい勢いで壁に叩きつけられて、ドオォンッと音に見合わぬ大きな音がする。
「え、えぇ……」
もしかしたら、牛鬼そのものが軽いのかもと思ったが、音を聞いた限り、そういう訳では無いらしい。見た目相応に重い様だ。
ということは、だ。私はそれ程までに怪力という事だろうか。
我ながら女でこの怪力は無いなと思える。
みずはに、ゴリラと呼ばれるのも時間の問題かもしれない。そんな下らないことを考えながらも、心の片隅では、確かに、この力に恐怖を感じ始めていた。こんな身体になってしまったことに。底なしの体力に、この怪力。もし、これが友人や家族に向けられたらと思うと、ゾッとする。
私に壁にぶん投げられた牛鬼は、あまりの物理的な衝撃に気絶してしまったようだ。足一本だって動かない。喜ばしいような、私の怪力が怖いような。ともあれ、危機は脱した。出口の方はどうなっただろう。なんだか拍子抜けしてしまう展開に、肩の力を抜きながら振り返る。
だが、そこに二人の姿は無かった。
「え……?」
二人はどこへ行ったのか!続き早くあげたい!!
戦闘シーン難しかったです!
もっと、上手にかけるように努力します!