表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

足跡2

どの辺で切ったらいいのか分からないので、取り敢えずこの辺で

 私は放課後、友人の輪をこっそり抜け出して、校舎裏の中庭を見に行くことにした。

 普通の人間には何も見えずとも、半妖の私ならば、妖怪の仕業か、それ以外かくらいはわかるような気がした。妖怪の仕業なら、何かしら手がかりがあるはずだ。

 

 「どこへ行く」


 「うわぁ?!」


 唐突に後から声をかけられ、柄にもなくびっくりして肩を大きく震わせてしまった。

 慌てて振り返ると、そこには、私を鬼にした元凶がすました顔で立っていた。


 「みずは……?! なんでこんなところに」


 そう、私が鬼、もとい、半妖になってしまった原因を作った男。妖怪魍魎(もうりょう)。名をみずは。

 整った顔立ちが健在の彼は、一度学校に足を踏み入れれば、彼の甘いマスクによって女子達の群れが出来上がってしまいそうなものだが、全くそんな様子はない。それどころか、私の隣を歩いていった生徒は、みずはのことが、見えてすらいないようだった。やはり、みずはも妖怪だから人間の眼には映らないのだろうか。


 「なに、ヌシが会いたがっているかと思ってな!」


 「いや、全然そんなことないから」


 口を開けばこれである。本当に残念なイケメンだ。


 「何故だ?ヌシの今の状況を知っているのは我だけであろう。さぞ、心細かろうと思って、わざわざ我がここまで出向いてきたというのに、可愛げのない女子だ」


 彼はきょとんとして首を傾げると、やれやれと首を横に振って見せた。どうやら私が照れているのだと思っているらしい。確かに、私の今の状況を知っているのはみずはだけだ。正直、心細くないと言えば嘘になる。

 だが、断じて照れてなどいない。断じて。


 「それで、どこへ行こうとしていたのだ?」


 あ、そうだった。

 私は我に返り、みずはの手首を力強く掴んで歩き始めた。


 「なんか学校で変なものを見たって生徒が出たのよ。今から、妖怪の仕業かどうか見に行くからみずはも来て」


 「お、おい、そう強引に引っ張るでない」


 みずははそう文句を言いながらも、手を引かれるがまま大人しく付いてきた。


 旧校舎の裏庭の花壇には、季節に応じた花々が植えられている。今日は4月3日なので、花壇に植えられている花はチューリップだった。辺りには誰も居らず静まり返っているので、やっとみずはの手を離して裏庭を見て回り始める。


 「その生徒とやらは、此処で何を見たというのだ」


 「大きな足跡ですって……わ!」


 「どうした?」


 一歩踏み出した先の地面が何故かあたりの地面より沈んでいた事に違和感を覚えて視線を落とすと、先程まで何の変哲もない無かった地面に、直径1mはあるだろうと思われる大きな足跡が出現していた。


 「なになにさっきまでなかったじゃない気持ち悪い!!」 


 「妖気が薄まっているせいで見えづらくなっているのだろうな」


 「妖気が薄まっている?」


 「うむ、ついてから時間が経ったため妖気が薄くなったのだろう。妖気が薄くなると人間には見えん」

 

 「ていうことはやっぱり妖怪なのね」

 

 これだけ大きな足をもつ妖怪だ。今日自分の部屋で見た、あの可愛らしいフォルムの力の弱い妖怪とはわけが違うことだろう。大して妖怪に詳しくない私にもそれくらいはわかった。


 「果たして、このあやかしの目的はなんなのだろうな」


 「わかんないけど、やっぱり私絡みの可能性ある?」

 

 彼は言っていた。半妖になった私は「いろんな意味で、妖に好かれやすい体質になってしまった」と。この言葉は、妖怪から求婚されるかもしれないというだけでなく、私の命を脅かす妖怪も現れるかもしれないということを示している。霊力が強い人間はそれだけ美味なのだそうだ。味だけではない。相手の霊力が強ければ強いだけ、力も得られるのだという。


 「まぁ、ゼロはありえんだろうな」


 「やっぱりー……?」

 

 また、昨日のような目にあっては堪らない。命は大事にしなくては。


 「しかし、この足跡の持ち主は人間に敵意をもつタイプのものかもしれんな」


 「なんでそう思うのよ」


 「あれを見てみよ」


 みずはが差した先を見ると、そこには大きな穴がポッカリと空いていた。旧校舎のすぐそばにある敷居に大きくえぐったような大穴があいている。


 「うわ……、え、あれ、この足跡つけた妖がやったの?」


 「恐らくな。妖気からして中級の妖といったところか。足跡と組み合わせて考えると、恐らくこれは牛鬼がつけたものだろう」


 「牛鬼?」


 「体は牛で頭が鬼の妖しだ。人を喰らうことを好む」


 「え、人間を食べるの?」

 

 みずはの口から一番聞きたくない言葉が飛び出して、やや同様してしまう。

 額に滲んだ汗が、頬を伝って流れた。

 人を食べる。それは人間にとって明らかな脅威であり、人間が妖怪を恐れてきた理由の一つにも挙げられている。かくいう私も、現在は半妖の身であるが、妖怪から見れば、霊力の強い人間。と見られてしまうようなので、大した違いはない。要するに、私が数ある妖怪たちの中で最も会いたく無かった存在。人食いの妖怪だ。

 

 「だが、基本的に牛鬼が活動するのは夜とされている。学校に夜中まで残ったり、夜忍び込んだりしない限りは大丈夫だろう。」

 

 「そう……。ならいいんだけど」

 

 だが、なんだろう。この落ち着かない感じは。

 私はその時、密かに胸に湧き上がった不安を、特に言葉にすることもなく、胸の奥底に押しとどめて、見て見ぬふりをしてしまった。

もうちょっと、ちゃっちゃか進めたい!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ