飲まれたその後<光編>
ギャル風な彼女達三人は黒い闇の中で消滅していく中年を眺めていた。
彼女達は何ができるのか全くわからなかった。
中年が呻きながら動き、そして動かなくなり、火を全身に包んだと思ったら消滅していった。
彼女達にできるのは、警察への連絡だけだと思い110番をかけた。
「あれって魔法なんかな。火がついていたし」
警察に連絡をしたあとに一番に声を出したのは背の低い腰まで長いロングな茶髪で少しぽっちゃりとした女の子、泥谷カナコだった。
水を操ることができ、中年に向けて水を放ったのがカナコである。
「それはもちろん魔法の何やろ。どこかから隠れてやったんやろうけど、おっちゃんが消えていくときにはおらんのちゃう?おったら目撃者の私らも何されてたんかわからん」
こう話すのは、一番背の高いショートヘアーな茶髪の女の子、熱尾レナ。
薄着であり、胸が大きめなこともあり、谷間が少し見え隠れしている。
使える魔法は火である。
「まだ、犯人がここらへんでうろうろしてるのと違う?こわいわ。はよ、警察来てほしい」
臆病に、話すのが髪はミドルの風原サツキだ。
もう、名前でわかるだろうが、彼女は風を扱える。
火によって消滅したあたりには何も残されておらず、黒い闇によって取り除かれた地面だけが中年を消した跡になっていた。
警察は二十分後に到着した。
ゼイゼイと息を切らしながらも、こちらに二人の警官はこちらに向かってきた。
「山の上まで来るのはキツいな」
「殺人かもしれないから急がないといけなかった。通報してくれたのは、そこのお嬢さんたちかな?」
サツキ達は目でみたことを、まず二人に伝えていた。
その後から、刑事や鑑識を名乗るものもそろった。
「つまり、黒い球体のようなモヤに飲み込まれながら、男に火がついて燃えきったということかな?」
「そうなんです。水をかけ続けましたが跡形もなく消えてしまったのです。」カナコは言った。
警官は信じられないと苦笑していた。
「あのね、どんなに優秀な人でも鉄をやっと溶かせる温度にまでしか燃やせないのだよ。本当に見たの?」
「そう言われても見たんですよ。この目で。同じく信じられないです」火を使うことができるレナが答えた。
「それに黒いのってなにかな……。うーん、まあ、いいや、君たちは帰っていいよ」
信じてもらえなかった。
ギャルの遊びだと思われたのだろうか、完全に信じられないまま、帰らされてしまった。
帰り道にレナが言った。「あのおっちゃん、どこに行ってもたんかな」
「私は本当に消えたんやと思うよ」カナコが答えた。
サツキは一人黙っていた。
魔法による仕業なのか。
天変地異で起こったことなのか。
それとも、幻想を見ただけなのか。
行き着いた答えをサツキは述べた。
「あんなの絶対に魔法よ。まだ私たちには知らない魔法があるってことちゃうかな」
一般的には火、土、水、風の属性があるが、複数使える者は同時に二つの属性を使うことができる。
例えば水と火を組み合わせる蒸気や、水と風で電気を作り出すことができる。
しかし、複数を使うということは力の半分を水に、もう一つを火に分けるという事で威力は落ちる。
また、複数の属性を習得することで、低いレベルの属性が育つだけで中途半端になってしまう。
サツキ達は何を見たのか悩みながらも、警察に信用されなかったことにストレスを感じながらも帰りの電車に乗っていた。
警官達は何もなかったことに帰ろうとしていた。しかし、渦巻く黒い闇はまだ目に見えない形で存在していた。
そして、その闇は急激に巨大化し、ちょうどその上に立っていた一人の警官を飲み込み始めた。
彼女達の報告通り、闇が包み、警官は燃え尽きていった。