古代ギリシアの食材
コリーダ登場です。
ハーブや食材は間違いあったら指摘願います。
食事を終え出てきたサフランティーを飲みながらくつろいでいると巫女長が足元を見てつぶやいた。
「そろそろ午後一時かしら?」
「はい、今準備します。」
ピュロスも足元を見てから返答していた。
足元は石畳で正方形の大理石が敷き詰められているだけだ。
何を見ていたのだろう?
ピュロスは控えていた黒髪の奴隷に手で合図した。
彼女は建物の中に入ると、すぐに取っ手付きの一輪挿しのような壷を持ってきた。
壷はピュロスに渡され、ピュロスから巫女長に手渡された。
壷が近くを通る時にワインとローリエのいい香りが漂っていた。
巫女長は立ち上がると海側の石塀に向かい、中のワインを振りまいた。
「予言の守護神アポロン、その姉アルテミス、父なるゼウス、母なるレトにデイオニュソスの感謝を込めて」
宗教儀式のようだ。
小声でピュロスを呼んで聞いてみる。
「あの儀式は手伝わなくてもいいのかな?」
「灌てんは家長の務めですので特にないかと」
神様に感謝して葡萄酒を捧げる儀式とのこと。
ついでに足元を見ていたことを聞くと
「あれは影の方向を見ていたのです。この場所は石の継ぎ目が東西南北に合わせてありますので、影で時間がわかるようになっています。」
日時計が床に組み込まれてるのか、意外に凝った造りになっているようだ。
「さて部屋に戻りましょうか。」
巫女長が屋内に戻ろうと、腰を上げたときに声をかけた。
「それですがアレティア様、夕食の材料を見ておきたいので厨房へ行かせてもらってもよろしいでしょうか?」
巫女長はちょっと考え込んだが
「いいでしょう。午後二時からはお祈りもありますので、夕食でまたお会いしましょう。」
「ご配慮感謝します。」
「ピュロス案内しなさい。」
巫女長はそのままさっきの部屋の方へ歩いていった。
「では、アーシア様はこちらに」
ピュロスに案内してもらい別の建物に向かった。
そこには石造りの竈を備えた厨房があった。
「厨房の方には連絡してあります。食材や必要なものがあればコリーダに言ってくだされば対応します。」
そういって、さっきも脇に控えていた黒髪の奴隷を紹介された。
「私はピュロス様の仕事がありますので失礼します。」
彼女はそういって足早に去っていった。
「コリーダ、ピュロスって忙しいの?」
「はい、この時間は特に」
「なるほど」
後で聞いたが、この日は預言がなく暇な方らしい。
それでも、2時からの祈りの準備、占いをする時間を割り出し神官に連絡、来客の対応と案内、出納業務をした上で翌日以降の巫女長のスケジュール調整。
これを午後5時までにこなすというのだからハードだ。
「とりあえずコリーダ、使える食材を教えてくれるかな?」
神殿にあった食材は
=野菜=
タマネギ・ポロネギ・キャベツ・アスパラガス・ニンジン・芥子菜・セロリ・ニンニク・二十日大根
=穀類=
大麦・小麦・ひよこ豆・レンズ豆
=果実=
オレンジ・リンゴ・オリーブ・梨・葡萄・イチジク・デーツ・アルメロ
=タンパク質=
卵・チーズ・魚介類(カタツムリ含む)・鳥・牛・豚・山羊・羊・馬・鹿(ただし今日は鶏肉のみ、他は祭り用)
=調味料=
塩・蜂蜜・酢・魚醤・梨の漬物
=香草・その他=
アサフェティダ・フェヌグリーク・オリーブオイル・サフラン・クミン・キノコ(各種)・コリアンダー・ヘンルーダ・ローズマリー・ローリエ
昼のサラダの香りはアサフェティダらしい。日本人の醤油に近いらしい・・・夕食にどう取り入れるか悩む。
神殿のおかげで食材はかなり豊富だ。
生じゃなくて、干してあるのもあるけど使い方がいろいろうかぶ。
ただ、辛味がない。
タマネギとニンニクの辛味は加熱すると抜けてしまう。
唐辛子は南米原産・・・ないな。
クミンだと弱いし・・・胡椒があればいいんだが、食材にはなかった。
食材でなくて薬種に使えるものがあるかもしれない。
「コリーダ、薬草で胡椒って知らないか?」
「胡椒は薬では知っていますが、薬草園には長胡椒だけしか植えてありません。」
長胡椒?それよりも薬草園があるのか。確認しないといけない。
「少し欲しいものがありそうだ。薬草園と薬種の見学と採取の許可を取ってくれ。」
「わかりました。」
コリーダは燕のように身をひるがえすと、部屋をでていった。
「このサフランってすごい高価だろう?なんでこんなにあるんだ。」
壷一つにびっしり詰まったサフランを指さし、厨房にいた料理長に尋ねる。
「サフランは王家の黄色といわれるほど貴重なもんだ。アレティア様はスパルタ王家の血をひいてるからな。必要な分はスパルタから送ってくるのさ。」
「スパルタ王家?あそこに金あったっけ?」
スパルタってリュクルゴスが改革して鉄の貨幣使うぐらい貧乏のままだった気がするんだが?
「だから現物を送ってくるのさ。」
なるほど、サフランならそのまま使ってもよし、換金してもよしということか。
サフランを一本、つまみ、口に入れ噛む。
咥内に香りが広がり、すっと気分が落ち着く。
冷静になった頭でアレティア御子長の年齢と性別を考え、どんなコースをどれくらいの量で出せばいいのか、普段の食事と好物、苦手を料理長(ドロンという名前でイオニア人らしい)と相談しているとコリーダが戻ってきた。
薬草園と薬室にはアイオス神官長と一緒にいくことになったようだ。
ドロンに何点か食材を頼むと、コリーダに案内され神官長のいる別棟に向かった。