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剣舞

詩が終わると後ろの方がざわついてきた。

振り返ってみると肌色の多い美女が、歩いていた。だがビキニアーマー・・・一気に脱力した。


すごい美人で色っぽいというか色気のかたまりという点は認める。

ストレートでロングの髪も瞳も綺麗な黒、肌はやや小麦色がかっていていい香りがする。(たぶん伽羅だ。)

ティアラも腕輪も金製で宝玉が入っていてとてもきれいだ。

ビキニアーマーも黒皮の上に銀象嵌されていてセクシーさ2倍マシになっている。

ただ、これに剣を腰にさすと・・・なぜだろう?幕張とか後楽園とか・・・季節限定、渋谷スクランブル交差点とか・・・


「なにか失礼なことを考えてませんか?」


タルゲリア、鋭い・・・でもポーカーフェイスで


「失礼、はじめてお目にかかります。見惚れてしまいました。アーシアと申します。美しい方、お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」


最近、演技に自信ができてきた気がする。皆、腹黒いもんなー。

タルゲリアは訝しがりながらも、確信は持てないようだ。普通に返答してきた。


「ヘタイラのタルゲリアと申します。ご一緒させていただいてよろしいかしら。」

「ええ、どうぞどうぞ。」


さりげなく席を立ち、その席を開けると向かい側のパンドラさんの横に移動する。


「アーシアさんは、ずいぶん、警戒されてますこと。」

タルゲリアは席に着きながら話しかけてきた。


「いえ、横ではあなたの美しい姿が見えにくいので、見えやすい位置に動かせていただきました。」

あぁ、歯・歯がうく・・・でも頑張れ、俺。後ろの視線は冷たいぞ。


「まあ、お上手ですこと。」


「タルゲリアその辺にしてあげなさい。彼はこのような場は初めてなんだよ。」

クレイステネスさんが仲介に入った。


「仕方ないですね。あたらしい味が楽しめると思ったのですが。」

あたらしい味?ラーメンのことかな。


「ペルシアとアテナイが疎遠になってから新しい方との出会いに飢えていますの。アーシア様、お味見いかがですか?」


味って・・・え?


「タルゲリア、アーシアはアポロの巫女なんだよ。童貞を奪ったらどうなるかわからないじゃないか。慎みなさい。」

クレイステネスさんが即座に割って入った。


!!!あああーーー、もったいない。素直にもったいない。


「アーシア、タルゲリアはペルシアに近しい人を奉仕するために、ペルシア王が契約を結んだ珍しいヘタイラなんだよ。」

クレイステネスさんが説明してくれる。


・・・ということですか・・・なるほど色仕掛ハニートラップですね。

ストレートだこと。


タルゲリアの横に座っていたテミストクレスさんが

「それよりもタルゲリア、せっかくなので、お前の剣舞を見せてくれないか?」


この場を、それよりも、っていえるテミストクレスさんすごいな。

やっぱ年季なのかねー


「いいですけど、伴奏は?・テミ」


「私が務めさせていただきます!!」

え、ピュロス?なんか怒ってる?


「ほー、ピタゴラスの直弟子の登場か。これは楽しみだ。」

テミストクレスが呟く。


えええーーー衝撃の新事実。


「直弟子といっても幼い時に手ほどきを受けただけです。セゾンテトラコレスの皆様に比べると拙いですが、先ほどの演奏でお疲れでしょうから、代わって演奏させていただきます。」


な、なんだ、ピュロスとタルゲリアの間で視線が火花を飛ばしている。


「それでは、剣舞の相方は私が務めます。」


今度はコリーダ!!


コリーダも視線バリバリに火花が出てる。


「エンデミオン家で剣舞を修めてますので足手まといにはならないと思います。」


ピュロスとコリーダが1歩前に出る。


何だろうこの豪奢な二人・・・もしかしてクレイステネスさん、タルゲリアに関係なく二人に剣舞させるつもりで、このキトン指定したのかな?・・・あり得る。たぶんそうだ。


「わかったわ、演目はそちらで選んで、あわせてあげましてよ。」

タルゲリアの挑発に対してピュロスの反撃が炸裂した。


「それではコリーダ、「アルゴス殺しのヘルメス」のアルゴスをお願いできる?!」

いや疑問形で聞いてるけどそれ断定だよね。


「もちろんだ!」

あ、タルゲリアの顔から余裕が消えた。


「これは面白いな。踊り手、どちらも最上級の技量を必要とする演目だ。」

「クレイステネスさん、どんな演目なんですか。」


残念だがボクには演目だけじゃ内容はわからない。


「簡単に説明すると、最初に百目のアルゴスとヘルメスが高速で戦う。最初っから見せ場だな。そのうちヘルメスが追いつめられるが、伴奏の葦笛が流れ出しアルゴスのすべての目が眠ったところでアルゴスは打ち取られる、で終わりだ。」


・・・すげー、舞台じゃ実質二対一じゃん。完全に怒ってますね、二人とも。


「拍子はワシがとろう。」

テミストクレスがシンバルのようなものを持ち出してきた。


=ジャン・ジャン・ジャン・・=


始まった。あたりのみんなが一斉にこっちを見る。


=ジャン・ジャジャジャン・ジャーン=


早い早い二人ともすごい速度で殺陣をしている。

絹の滑らかな動きも相まって、まるでカンフーみたい。

しかもワイヤーアクション無し、スローモーションなしの実写。ジャッキーチェンの初期の主演映画見たい。

でも、コミカルな部分なない分手に汗握るのはむしろブルースリーが近いのか?


あ、コリーダ、ちょっと髪の毛切れた・・・あれ・・模造刀だよね?・・・今度はタルゲリアの髪の毛・・・ゲ、マジで真剣で殺ってない・・・?


危ない!コリーダがよろけた。おっと、タルゲリアもバランス崩した!


=ジャンジャンジャーンジャーーーン=


ここでテミストクレスが派手にシンバルを打ち鳴らした。


あ、二人の動きが止まった。もう両方とも汗だらけで肩で息してる。


=ピピピイーーコロロ、ピーーーコロロ=


ここでピュロスのパンの葦笛だ。熱かった空気が急速に涼んでいく音色。


独奏は5分以上続いた。


ゆっくりコリーダ、膝をついた。タルゲリア近寄って首に剣を添える。ハイ!しゅうりょうーーーー。


辺りからすごい歓声が上がる。


さっきの詩に負けない演目になった。


なんかタルゲリアも出し切った感が半端ない。色気を出してない時は健康的で好きなんだけどな。


うちの二人も帰ってきた。褒めて褒めて感、満載である。


「よくやった二人とも。すごくよかったぞ。」


「全部、アーシア様のおかげです。」

俺のおかげ?


「まったく、アタシ達のご主人様に色目を使うのは百年早いっての。」

女性ふたりで頷きあう。


・・・それって怒りが実力以上引き出したって意味かな?・・・


広場中央からタルゲリアもやってきた。

「久しぶりに全力で踊ったわ。次はこっちが演目指定するからね。」


そういうと投げキッスをして離れて行った・・・目標、俺ですか・・・


「まだ狙ってる。」

「注意しましょう。コリーダ」


そんな会話をしていると後ろからクレイステネスさんが声をかけてきた。

「おい、そのキトン売れたぞ。」


・・・は?


「いや目立てばプレミアつくとは思っていたが、三着で1タラントンで売れた。感謝しろ。」

1タラントンて6000ドラクマですか。


「買い手は、今、拍子取ってたやつだ。追加であと2着も注文来たから、自分とヘタイラ用だろうな。残りの2着分のもうけだけでも今日の宴は大黒字だな。」


・・・クレイステネスさん抜け目ない。


これがアルクメオン家当主の実力ですか・・・さすがアテナイ1の大富豪。

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