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主演助演女優登場

竈から離れて風景を見渡すと、坂を上ってくる三角旗ペナントが見えた。

その風景にはかなり呆気にとられたが、どういえばいいのか・・・とりあえず見たままをつたえよう。

先頭に楽器を奏でながら進む少女4人がいた。

その腰には花を編み込んだ飾り紐が結びつけられ、後方の戦車チャリオットから伸びるT字のシャフトにつながれている。

本来なら馬をつなぐ場所だ。

ただし実際には、少女たちが戦車を引っ張っているのではないらしく、その紐は緩んでいる。

実際に戦車を押しているのは4人、屈強な男達が、車体から横に伸びたバーを真っ赤な顔で押している。

戦車は4輪馬車といってもよい形をしているが、前方に腰上までの防盾がついている。

戦車に乗っているのは3人。

おそらくテミストクレスらしい人物が鎧をつけて三角旗を持ち、前方中央に立っている。

その後ろに二人の少年が左右に控えて、手元の籠から花を後方に投げかけている。

そして群衆がその後ろに続き花を争って拾っている。


・・・なんというか・・・村の鎮守の山車の行進みたいである・・・


ただ、前を歩く4人の少女は群を抜いてかわいい・・・ロリ的な意味はなく、そう思う。

おそらく最年長でも15才は行ってないと思う。

右から竪琴を持ち金髪の少女、次に笙に似た葦笛(パンの笛)を吹く黒髪の少女、3人目は木琴だろうか?打楽器を奏でながらすすむ赤髪の少女、最後が鼓によく似た打楽器をもつ栗毛の少女。

彼女達が演奏する曲は竪琴と打楽器担当の少女の声を交え、アップテンポな雅楽といった感じだ。


「ご主人さま、護衛に来ました。」

ぼーっと見てたら、突然、後ろからコリーダに声をかけられた。

「ん、なにかあったか?」

「サンチョから、こちらは二人で大丈夫なのでご主人を守るように言われました。」


なるほど、これがサンチョの特質なのか。

与えられた命令の中で最大限の判断をしようとする。よくも悪くも二人とは違う。

「わかった。たのむ。」

「かしこまりしました。」

そういうとコリーダは俺の左後ろにひっそりとたたずんだ。

・・・メイド服とか似合いそうな気が・・・・いやいや・・・


「コリーダ、あの後ろから撒いている花に人が集まってる理由を知っているか?」

「すみません、ご主人さま。知りません・・・」


それもそうか。コリーダも見たのは初めてだろう。


「ありゃー花についてる袋に秘密があるんだ。」

「ヘラクレイトス様!!」

すっかり忘れてたが、麦わら帽に半裸な奇人ヘラクレイトスが横に立っていた。

「どうした?ワシが宴会に呼ばれてねぇとでも思ったかい?」

「いえ、忘れてました。」


あまりのテンポのよさに嘘もつけず、つい正直に話してしまった。


その答えをきくとかっかっかと歯茎を見せながら笑い出し、この爺を忘れられるとは大物だ、と機嫌よさそうに呟いていた。

「それで、花の袋の話ですが・・・」

「ああ、簡単な話で、あの花の袋の中には石ころ、銅の小粒、デミオボロス貨のどれかが入っている。石ころはごみだが、銅の小粒でも10個集めれば1オボロスになるかな?まあそんな感じだが拾ったもの勝ちさ。」

「なんでまたそんなことを?」

「景気づけと名前売りよ。それと戦車の進む道を開けさせるためかな。見てのとおり後ろにだけ撒くから」

「群衆は進路にはいなくなると・・・考えてますね。」

「その程度は考えねぇとアルコンにはなれねぇよ。おいあっち見ろ、別のが来たぞ。」


ヘラクレイトスが指さした方向には妙齢の美女がいた。

四方には護衛の男性がいたが旗を持っているわけでもなく、本当に護衛に徹していた。

見た感じではセゾンテトラコレスのような派手さはないように見えた。

しかしその判断は中央の女性を注視した瞬間に吹き飛んだ。

その妙齢の美女、彼女は20台前半で栗毛をアップにまとめていた。

そして、なによりも優雅さを感じさせる女性で、着ていた服装が一役買っていた。

彼女のキトンは絹製と思われ、薄い布地がおりなす細いドレープが風でゆらゆらと舞い、肩から掛けた短めの外套、毛織物のクラミディオンと対照的な裾の動きを演出していた。

髪飾り、首飾りも金色に光を反射しているので金製だと思う。


しかしその上品な雰囲気もキトンを押さえつけるように、真っ赤な胸帯アポティズムを一番上につけることでたまらないエロスを醸し出していた。(現代風に言うなら見せブラである。)

彼女のもとに馬に乗った男性が迎えに行った。

クレイステネスさんである。

うーん、悔しいが似合う。

やっぱり男性はある程度の貫禄がないと彼女には釣り合わないだろう。

ヘラクレイトスさんも呟いていた。


「女なんてぇもんはどうでもいいが、あのパンドラだけは別格だな。一度お相手願いたいもんだ。」

「同感です。」


その瞬間・・・後ろから黒い闇を感じた・・・殺気か!・・・


慌てて振り向くと、そこにはニコニコしたコリーダがいた・・・

「ドウカシマシタカ、ゴシュジンサマ」

「いやなんでもない。」

頬を冷たい汗が伝わり落ちた。


「ん?もう一人来るのか?」


夕闇迫る中をラクダの一団がやってきた。

・・・ラクダってもういたんだ。

先頭を進むのは筒袖、頭巾付きワンピースみたいなコートにズボン!!

色もカラフルで動きやすそう。


いいな。あれ欲しい。


ラクダから砂漠を連想し、たぶんペルシアの服装と判断する。


ん・・・ということはペルシア王の手勢か・・・ヘタイラの名前はタルゲリアだっけ?


その後ろのラクダに乗った彼女を見て度肝を抜かれた。


アラビアンナイトの踊り子の格好だったとか、胸丸出しだったとかなら、まだしも、

完全武装の女性兵士・・・しかもビキニアーマーバージョンだったのである。


・・・え?


「驚いたか?」

「はい。」

ヘラクレイトスからの質問に力なく答える。


よく見れば薄い紗々の布がスカート状についていたとか、うでに薄い絹の袖がついているとかはあったが俺にはやっぱりビキニアーマーにしか見えない。

・・・第一印象で固定されてしまった。


「タルゲリアはあれで普通の兵士より強え、あの格好は元がペルシアの踊り子らしい。あれの剣舞は一級品だぞ。」

「はあ・・・」 知らないということは幸せだ。


「しかし3組とも揃う、つーと、皆、よほどお前さんに会いてぇーんだな。」

「ボクにですか?」

「そうだよ。おめぇさんだ。」


他にも三々五々と参加者が丘を登ってきていた。

女性連れ・・・ヘタイラを連れ銘一杯気取った人物も来ているが、あれだけ濃いのを3組も見せられると・・・なんというかほほえましい。


つくづく、あの二人をヘタイラにして、同じ土俵ステージに上らなくてよかった。

そう思いながら料理を続行すべく竈に戻った。

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