イストミア祭とアテナイ
日本は縄文時代でもうすぐ弥生時代になるはずです。
で、昔から不思議なのが大和朝廷は北方騎馬民族説が強いですよね・・・ところが米は南方・・・どこで混じったんでしょうか?
それとも別々に来た?この辺ずっともやもやしてます。
まさか中華料理を食べたことがある人が,古代ギリシャにいるとは思わなかった。
おまけにアジアの植物持ち込んでるとか・・・栽培に成功したら歴史変わるの間違いなし。
イベリア半島の稲作は9世紀以降のアラブ人の持ち込みだから・・・先んずること1400年になるのか・・・まて・・・たしか日本はまだ縄文時代で、弥生時代に入ってない。
これだと日本より先に稲作文化がヨーロッパに根付くかもしれない。
目の前の人物を見ながら、自分の常識がガラガラ崩れていくのを感じていた。
念のため中華についても確認しておいた方が良さそうだ。
「中華というのはどういう国でした。」
「蓬莱について話してもらうのが先のような気もするが?お客の要望だ、答えなくてはな。」
そういうとクレイステネスさんは春秋戦国の戦国時代について話してくれた。
時代は呉が孫武、伍子胥 を将軍とし越を滅ぼした時期で、将軍たちの逸話や平民のしぶとさ、中華の土地の豊かさについて事細かに話してくれた。
「あの土地は豊すぎる・・・人は多く、産も多い、ヘレネスの力では敵対できないほどに・・・」
人口は推定で2000万人・・・よかった登場人物も人口もほぼ記憶と同じだ。
クレイステネスさんは語り終えると溜息を深々とついた。
「では、蓬莱について聞かせてもらおうか。」
彼はまだ見ぬ神仙の国について興味津々だった。
「正確には蓬莱ではなく、その2000年後の日本という国ですが・・・」
そう前置きすると、現代日本について要約し説明を試みた。
ところが、そうしてみると、意外に説明に困ることが分かった。
なんというか、歴史と科学と職人が混ざらないと説明できないのである。
日本人の気質を理解するのに江戸時代の制度は必須であり、基本的に無信教の成立は神仏習合と神仏分離について理解がないと難しい。
王家に対する尊敬と民主主義への傾倒の両立。生産性に関する異常なまでの向上心、どう見てもそれに関する慣習の数々。
なにから説明すればいいのか困りきった俺は分野を区切って説明することにした。
まず一番最初に政治形態について話し始めた。クレイステネスさんが一番理解しやすい話だと思ったからである。
民主主義について、議会政治と政党について、選挙について、そのあたりでクレイステネスさんは失笑していた。
「2000年たっても私が決めた方法がスタンダードになってるとは思わなかったよ。」
ちょっと虚をつかれたが、たしかに言われてみるとその通りなのである。
500人議会という代議員制度を作り、それに伴う選挙区を決める。
違うのは議員の選出方法が抽選か投票かという違いはあるが、投票方法そのものは陶片追放がまったく同じ手法を用いる。
これらの制度を作ったのは目の前にいる人物なのである。
その言葉に唖然としてると
「次は歴史だな。どうもそれを知らないと理解を間違う気がする。」
そのまま手を叩くと
「ともあれ、まずは食事だ。羊羹と米飯を作らせた。食べてからにしよう。」
奥のほうから数名の女性が出てきた。
その中に一人男性が混じっていて、彼はクレイステネスさんの耳元で何かをささやいた。
「千客万来だな。」
そういうと
「彼もこちらへ、夕食も準備してくれ。」
そう指示をだすと、こちらを向き
「アーシア君、ヘラクレイトスが訪ねてきたよ。珍しいこともあるものだ。」
そういってる間に入り口のほうから麦藁帽に腰布のスタイルでヘラクレイトスが近寄ってきた。
「よう、クレイステネス。やあアーシア。話の前に飯をもらおう。」
「ヘラクレイトス、君ならいつでも大歓迎だよ。今準備させている。」
そういうとクレイステネスの横に絨毯が敷かれた。
ヘラクレイロスも特に遠慮した風もなくその絨毯に胡坐をかく。
・・・腰布だと・・・丸見えなんですが・・・
なるべくそっちを見ないようにして食事が来るのをまつ。
メニューは深皿に載った白米の粥、器に入ったスープ、それと焼き魚(鯖)のようだ。
羊羹ってもともとは羊肉の羹だったな。
それよりも・・・蓮華と箸がある。
「アーシア君は箸は使えるらしいね。私は使えないので蓮華を使うよ。好きなほうを使ってくれ。」
そうクレイステネスさんが説明している横でヘラクレイトスは、ご飯を手づかみでスープを器を口につけて飲んでいる。ワイルドである、せめて帽子はとってほしい。
食べてみると、粥はちょっとヌカ臭い。スープは薄いみそ汁みたいではあったが焼き鯖と一緒にいただく・・・一気に心が落ち着いた。
やっぱり日本人には米の飯、それこそ今頃から2000年かけて作られていく食文化なんだよなー。
感慨にふけっていると、先に食べ終わったヘラクレイトスさんが話してきた。
「アポロン神殿に聞いたらこっちだって聞いたんで歩いてきたが、久しぶりにうまいものが食えた。アポロンに感謝だな。で本題だが・・・」
俺が慌てて箸をおこうとすると「そのまま食事を続けろ。」と言われたので食べながら聞くことことになった。
「まず、いくつか確認する必要がある。おめぇさんはコリントス行ったことあるか?」
「ないですが、この後向かう予定です。」
「次だ、ピューティア大祭の前後の年にはコリントスでイストミア大祭が開かれるが、これがアテナイの王テーセウスによって開かれたことは知っているか?」
「いいえ、知りませんでした。」
「イストミア大祭の権威はオリンピアに並ぶといわれているが、その権威を下げるものならアテナイからの協力は得られないぞ。考えておけ。」
「そのあたりは心配ないでしょう。」
これから会う神官がそういうことを許すとも思えない。
「その辺はアフロディテ神殿の神官と相談します。」
その言葉にヘラクレイトスは頷いた。
「そうしてくれ。あとクレイステネスは何かあるか?」
「特にはないが、中華の食材を使った料理はこちらにも指導してほしいな。まだあちらの味を再現できてないから。」
「だそうだ。」
「それは材料を提供してもらう以上、ご要望があるなら当然させてもらいます。」
それにしてもクレイステネスさんの方が大分年上に見えるんだけど・・・ヘラクレイトスさんは、ほぼ同格で話している。
すごく仲が良さそうだ。まさか・・・
その感情が表情に出ていたのだろう、クレイステネスさんが説明してくれた。
「ヘラクレイトスは私がアテナイを追放になっていた間、アテナイでの商売と情報収集を引き受けてくれました。いうなればアルクメオン家の金庫番兼案内人です。これ以上に信頼できる人物はいませんよ。」
はー、そういうことですか。でも、この二人ってなんかそれ以上の関係がありそうな気もするけど・・気にしすぎかな?