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アクロポリス

古代ギリシアの物価って1ドラクマ=1万円でほぼあってる感じです。

ヘラクレイトスがこっちの方ではアーシアとどうかかわっていくか・・・作者も楽しみだったりします(笑)


昨夜、ダモン神官と話し合った結果、デルフォイのアポロ神殿としても1頭奉納した方がよいという結論になったため、早朝に牡牛を買い付けに牧場に向かった。

デルフォイの神殿の格はとてつもなく高いらしく、日本で言うなら伊勢神宮か出雲大社みたいなものらしい。

そのため、たとえゼウス神殿でもドドナの神託所以外は格下扱いだそうである。

ましてや今回は神託をした巫女(俺)がいる以上、形式的に下賜する感じで奉納品を与えるのが普通だそうだ。

偉い人ほど交際費がかかるのはどこも一緒なんだなーと思った。

で、牛1頭の値段を聞いたらだいたい50ドラクマと結構高いが、馬は400ドラクマする。

奴隷が100~200ドラクマだと考えると・・・馬高い・・本当にもらって大丈夫なのか?


ついでに基礎知識でアテナイの物価を教えてもらった。

平均月給30ドラクマ、住宅1軒3000ドラクマ。

(ほんとにドラクマを万円に変えると、そのまま日本の価値観が通じそうだ。)

貨幣が銀貨がテトラドラクマ貨(4ドラクマ)、ダイドラクマ貨(2ドラクマ)、ドラクマ貨、オボロス貨(6分の1ドラクマ)、デミオボロス貨(半オボロス)の5種類、それにクハルコス銅貨(3分の1オボロス)で全部で6種類・・・と思ったら、他にも外国の通貨があってリュディアの金銀合金貨やマケドニアやトラキアの金貨等両替屋で確認しないと価値がわからない硬貨がある。

あと小麦が1ドラクマで8リットル、ワインだと5リットル買える。

・・・けっこう高いな・・・小麦がリッター1250円、ワインがリッター2000円かワインは分かるけど、小麦高い。


そんなこんなで牧場へ行って牡牛を選んでいたら牧童頭がデルフォイの巫女がアテナイにきて、奉納用の牡牛を自分の牧場から選んでいると宣伝したらしく、たちまちの間に黒山の人だかりができてしまった。

おかげで牧場の牡牛が売れる売れる・・・おまけで巫女様と一緒に奉納したいとせがまれ、午後二時エレテに全員で奉納ということで約束させられた。

かわりに牧童頭から牡牛をもらうことになったが、なんか釈然としない。


ということで正午メセンブリアにアクロポリスの城壁の前に到着したときの風景はまるでカウボーイの移動になっていた。


先頭にアポロ神殿を示す旗(といってもワインで赤く染めた三角形の単純な旗である。)をコリーダが掲げる。

その後ろに馬に乗った俺がすすむ。

言い忘れていたが馬は鞍はあるがアブミがない。そのせいで腿で鞍を挟み込む感じで乗っている。

その後ろにはそれぞれ牡牛をひくダモン神官と、そのさらに後ろにはそれぞれ牡牛を引いたカラメイコス居住の市民が二十人ほどついてきた。

すでに周りには見物人が現れ、大きなざわめきが起きているが、予想どおり進行方向に人はいない、というか避けてくれる。


ここまでは順調に進んでいるということで、事前に検討していたデュプロン門を抜け、市場アゴラを横切り、青髭の神殿の下を抜けて、ゼウス神殿に向かうルートを採用する・・・アテナの北西から中心通って南東へまっすぐ横切ると思えばいい。道のりはほぼ4kmであるが二時間を予定している。


門を抜けたあたりで独特の匂いが漂ってきた。

なんというかゲロと何かが焦げる匂いを足したような、まあ普通に悪臭である。

「カラメイコスの匂いですねー」

ダモン神官はこの匂いを懐かしんでいるようだ。

「この辺りは陶器を焼いている窯が多いんですよ。だから空気まで焼けているってよく言われます。」

そう言われてみると周りには焼き物を作っている窯がたくさんある。

何で陶片追放オストラコンなのかわからなかったが、攻防の横を見れば理由はわかった。失敗作を砕いた破片が山のように積まれている。簡単にタダで手に入る材料だから使ったのだろう。


煙の漂う路地の間を子供たちが走り抜けていった。鬼ごっこでもしてるんだろうか?歓声がきこえてくる。

元気な子供達で気づかされたが、街を歩いている人が若い。

ほとんど老人が見当たらない。老人は何をしているのか気になる。


街路を500m程まっすぐに進むと大きな広場に出た。

市場アゴラと呼ばれるアテナイの大商店街だ。

デルフォイでも揃わないものはないと豪語していた商人がいたが・・・ここは格が違う、すごい数だ。なにより石造りの商店がある。陶器、奴隷、金属用品、皮革、衣類etcそれぞれ石造りの商店があってその前に似たような商品を売る露店が集まっている。


喧嘩にならないんだろうか?


そう思ってたら、さっそく喧嘩が始まった。

皮売と布売の露店が喧嘩している。

すぐに、どこからか監督官が現れ仲裁に入った。


問題のあった方に罰金が科せられている。

なんか駐車違反の切符切られている風景みたい。


「アーシア様、昼食はいかがしますか?」

ピュロスが横にきて声をかけてきた。

そう言われてみると広場の向こうにパン屋が見えた。

他にもワインや果実、ハーブなど食料品を売る店が集まっている一角がある。

あの辺が青果市場になるのかもしれない。

「いったんここで休憩にしよう。ピュロスとコリーダは全員の分パンとワインを買ってきてくれ。」

「了解しました、アーシア様。」

「えっと、護衛できない間、気を付けてください、ご主人様。」

二人が昼食を買いに行った。


俺を中心に連れた人がサークル状に広がる。

結構、場所をとっていて、通行の邪魔のような気もするが誰も文句を言わない。

ダモン神官がついてきたみんなの様子を確認している。

「誰も問題ないようです。昼食の後はまっすぐゼウス神殿に向かいましょう。」

報告にきたダモン神官に疑問を尋ねる。

「こんな広場の真ん中で休んでいて迷惑じゃないんでしょうか?」

その問いをきくと笑いながら答えた。

「これだけ豪勢に晩餐が休んでるんですよ。誰も文句を言うわけがないじゃないですか。」


彼の言葉の意味は、

百腕巨人へカトンケイルにささげられた牡牛は生贄にされた後に、焼かれて、その肉を一般の人々に振る舞われる。その肉をこれだけ持ってきてくれた人に文句を言うわけがない。


至極当然の理屈だった。


「アーシア様、パン屋の方からパンは寄進だといわれました。」

ピュロスが両手いっぱいにパンを抱えてやってきた。

「え?」

パン屋の方をみるとこちらに手を振っている。

思わず日本風にお辞儀をしようとして・・・気づいて・・・あわてて手を振り返した。


「ご主人様、ワインは味見を皆さんにお願いしたいといわれました。」

そう言ってワインの壺・・・たぶん5リットル近いと思う・・・抱えて、コリーダが戻ってきた。

「そっちもかい、なんか、かえって悪い気がするよ。」


「完全にお祭り気分になってますねー」

ダモン神官が横で呟く。

「今日の百牛犠牲祭ヘカトンベーはいいお祭りになりそうです。アーシア殿のおかげですね。」

「そんな・・・」

「これだけ大量の牛が集まってるのを見ればそうなりますよ。もっとも神殿にはもう数十頭は牛がいるんですけどね。」

事前に振舞用の焼き肉を作るため、すでにゼウス神殿は数十頭買い込んで処理しているらしい。

そりゃそうか、解体だけでもすごい時間かかりそうだし。


「まあ奉納では一番の大口だと思いますよ。」


そのダモン神官の言葉を聞きながら、市場を見渡しているとピュロスが袖を引っ張った。すごい小声で話しかけてくる。


(アーシア様、あそこの角の方)


「ん?」


(たぶんクレイステネス様の腹心のヘラクレイトス様です。)


「え?」


思わず声が出てしまった。


その方向をみると・・・キトンも着ないで腰に布を巻いただけ・・・それなのに麦わら帽子をかぶってる・・・おまけに魔法使いの持つような杖を持った中年、あやしさ爆発中でこっちを見ていた。


たしかに間違いようがない程、変な人だ。あんな人が腹心って大丈夫か?クレイステネス。

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