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危機

やっとアーシアも状況を認識したようです。

そりゃ、世界の常識の異なる時代地域なら下手な異世界より危険でしょう。

なまじっか似てる世界を知ってるだけに。

埃とすえた臭いのする袋を頭からかぶせられると、いよいよどこに進んでいるかわからなくなった。

体に枝が当たり、ヒリヒリした感じがする。

擦りむいたか切れたかは、わからないが剥き出しの腕は肩から手の平まで結構大変そうな状態になっているようだ。

頭の横からは弾むような息づかいで、

「上玉、上玉」

と呟いているのが聞こえる。

上玉って・・・ピュロスやコリーダの方が上玉だと思うけど・・・違うみたいだ。

10分も走ったろうか?

「あー俺もうたまんねー。」

という声とともに地面に放り出された。

「グフ!」

受け身がとれないので、もろに食らった。

息が詰まって動けない。

そんなボクのまわりから上機嫌な声が聞こえてくる。

「俺、一ばーん」

「いや俺だ!」

「じゃあ上は譲るから下をもらうぞ」

・・・これって・・・

「オリーブ油はあったよな。裂けると売るときに値が下がる。ちゃんと塗りこめよ」

・・・マジでやばい。掘られそうだ・・・

「さーて綺麗なお顔を見せてもらうか」

そういいながら頭の袋をはがされた。

「ご開帳ー」

袋の中で暗闇になれたボクの目は、満月の明かりに照らされた盗賊達の顔がはっきり見えた。

全部で5人。

野卑な顔で笑っている。

「オーオーいい顔だな。これがやめてくださいって懇願するかと思うと」

「いい声で鳴いてもらおうか。もっともお口も使わせてもらうがな。」

余りにひどい体臭に吸い込んだ瞬間むせてせき込む。

咳こんだせいで目元に涙が浮かんでしまったのが嗜虐心を駆り立てたらしい。

いきなりお尻にヌルリとしたものがかけられる。

「よーく馴染ませてと」

手早くお尻の割れ目にオイルが塗りこまれてる。

逃げようとしたが、手足をそれぞれに押さえられ、うつ伏せのまま身動きもできない。

「こいつ腰振ってるぜ。」

「初物じゃないんだろう。」

逃げようと蠢いた結果がますますやばいことになる。

「じゃあ、俺からいくぜ。」

「なるべく早くしろよ。後がつかえてるんだからな。」

「はいはい。」

男がボクの腰を手でガッシリと固定すると、のしかかってきた。

尻の割れ目に温かい何かが挟まれたような感じがする。

何かは想像したくもないが・・・

「いくぞー」

ボクは身をこわばらせ激痛に備えた。

「ゲハァ!」

のしかかっていた男が横に転げ落ちた。

あわてて見ると喉に矢がつきたっている。

「助かった・・・?」

まだ手足は押さえつけられているが、今度はその一人の背中に矢が突き立つ。

右足が自由になった。

とりあえず左足を押さえている男を蹴りつける。

すぐに反撃されて顔を殴られた。

「ご主人サマー!」

大声とともにコリーダが飛び込んできた。

キトンは真っ赤に染まっている。

そのまま、流れるような挙動で3人の盗賊の首が切りつけられる。

吹き出した血がボクにぶっかかる。

血って温かくて生臭いもんなんだ。

妙に冷静になってしまい、体が洗いたくてたまらなかった。

「ご主人様、申し訳ございません」

コリーダが手を貸して立たせてくれた。

「怖い思いをさせましたが、もう大丈夫です。」

そういいきるコリーダが妙に頼もしくて、ボクは縋って泣いていた。

コリーダはボクを軽く抱きしめるとお姫様だっこで歩き始めた。

恥ずかしかったが、誘拐されたせいで素足である。

首に手を回すとコリーダはにっこりほほえんでくれた。

すぐにピュロスも合流すると謝罪がはじまった。

それは延々と続いたので、途中で「もういいよ。」といって中断させなければならなかった。

二人に守られて泉に戻ると。キトンを脱がされ水浴びさせられた。前後に同じく全裸になった二人がいて体を洗ってくれたのだが、今起きたことの衝撃と泉の水の冷たさのせいでボクのは縮みあがっていた。

泉から上がるとちょっと離れた場所にテントを移動させた。

すでに狼の血の臭いが染みついてしまったので、なにがくるかわからないとの話だった。

その原因を聞いたときに、頭の中で何かがかみ合いそうになったが、

「すっかり体が冷えてしまいましたね。」

そういわれて二人に挟まれくっついて、暖めてもらったせいで思い浮かんだことは消えてしまった。

二人はボクを暖め終わると交代でテントの外で明け方まで見張りをしていた。

ピリピリした怖い雰囲気をまとった彼女達はまるでアルテミスのように気高く美しかった。


朝になり、盗賊達の死体を埋葬に向かった。

手早く身につけていたものを剥ぎ取り素っ裸にした男達を

掘った穴の中に埋めていく。

布は高価であり、使わないなら神殿に寄付すればいいとの話だった。

埋葬は野生動物に人間の味を覚えさせないための作業であり、冥府が云々ということはないようだった。


それにしても、こういうことにも慣れていくのだろうか・・・

時代が変わるということは別世界で暮らすのと差はない。

美女より美少年が上玉とされる世界、かつての日本の常識は捨てないとここでは危険なだけだ。


初めて強く日本に戻りたいと思い、いつのまにか涙が頬を濡らしていた。




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