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旧約聖書

アピンについてはBC3000年代といわれてますが、粘土板の焼き上げの収縮変化という屁理屈で1500年ほどずらしました。

わかってやってるんで突っ込まないでください。

旧約聖書はエキゼセル書でソドムとゴモラや天空の天使の話が出てくるのですが・・・この章だけ妙に浮いてる感じがするんですよね。他の章に比べると・・・

後から挿入されたような気がしてます。(挿入時期は、あとからといってもBC5Cより前でしょうが)

巫女長はクッションを立つと壁の戸棚を開けた。

俺も立とうとしたら手のしぐさで、そのままにといわれたので座って待つことになった。

しかしユダヤ人の聖書か、旧約聖書のことだな。

それが、どうトイレに結びつくんだ?

巫女長は棚からなにか持ち出してきた。


「そのまま、楽に」


そういいながらアレティア巫女長は俺の前に、円形の粘土板を置いていく。

楔形文字で何か刻まれ、下には星座のようなものが書いてある。

聖書と何の関係があるんだ?


「これはロトの紋章と呼ばれる、ペルシア王国の奥深くメソポタミアの二ネべで見つかった星座版です。ふたご座・木星などの惑星の配置とアピンと名づけられた矢印が書きこまれており、この天体配置があった日の明け方の5時30分ころに、4分半かけてアピンは地上に落下したという記述があります。」

 

「このアピンが落下した時期ですが、粘土板の焼き上げの時の収縮を勘案して、計算すると約1000年前の7月頃と推定されます。」

「1000年前?なぜそれがわかるのですか?記載があったのでしょうか?」


「いいえ、ふたご座の形が少し変わっているのです。エジプトの資料と比較して年代を割り出しました。」


それがなぜ?トイレの話に結びつくのか、ボクには全く分からなかった。

そんなボクにアレティア巫女長は続けて説明し始めた。


「ミケーネ文明が崩壊したのがちょうどその頃なのです。」


今から1200年前クレタ島を基盤にフェニキア、エジプト人たちもかかわってミケーネ文明が成立した。

島々をつなぐ海洋文化のため港建築・造船・航海術に優れた文明だった。


この文明の衰退は急だった。


1050年前にサントリーニ島の噴火が起きそれに伴う火山性地震で大規模な津波が数度発生した。

この津波で主だった港町は壊滅し、大きな人的被害を受けた。

しかし海洋性国家は津波では衰退はしても滅亡はしなかった。

生き残った多くの人が船に乗り新天地を目指していた。

ギリシャ沿岸、小アジア沿岸で新たな港町が作られた。


このころの遺跡には、まだトイレは残っていた。


同じころフェニキア人も中東、アフリカ、イベリア半島に進出し始めた。



そして1000年前にアピン彗星がミケーネ文明に終止符をうった。


ミノア文明の崩壊の瞬間、それは朝焼けが消えかかるときに、天をものすごい数の流星で埋め尽くすことで始まった。

直撃した彗星アピンはコアが雪だけではなく小惑星を含むタイプだったようだ。

砕けながらもコアは地表・海面に到達していた。

多くのコアが今のエーゲ海付近を中心に落ちた。

地面を抉り、地峡を砕き、島々とした。

そして海面に直撃したほうき星のコアは大海嘯を発生させていた。


「この時に高台にあったアテナイ以外はほとんど壊滅しました。」


・・・たしかに・・・けどこれが・・・どうつながるんだ?


ボクの疑問顔に答えるように、聖書ではサントリーニ島の噴火による津波を「ノアの箱舟」、アピン彗星の衝突を「ソドムとゴモラの壊滅」として伝えていることをアレティア巫女長は教えてくれた。



「このあと生き残った人々は、まず「高台があること」を絶対の住居条件としました。その高台をアクロポリスと名付け、そこから見える範囲(逃げ込める範囲)を居住地と決め、周囲を津波対策に高い塀で囲むようにしたのです。・・・ポリスの発生です。・・・」


ポリスの発生・・・確かに重大事件だけど・・・


「この時点でトイレは失伝されました。高台であることを優先すると、十分な水資源を得られないことも多々あります。そこで水資源は飲用が優先されました。また川などを街に引き込むと、そこから津波が上がってくるので、よほどの高台でないと行えません、基本は海洋民族なので海岸から離れることを嫌がるギリシア人ではそのような海岸に隣接する地形は極めて少ないのです。」


「ならばせめて排泄物をトイレで集めて、肥料にすればいいのに。」


ボクの疑問は意外な回答で答えられた。


「それを行った都市が滅びた例が続いたので・・・」


滅びた?


「肥料中に残っていた寄生虫が農作物を通じて人々に蔓延し・・・衰弱して疫病にやられたのです。肥料にするには寄生虫の卵や菌を殺すため3か月は熟成しないといけないのですが、その知識の流布する前に肥料への使用は禁忌になってしまいました。」


・・・それは知らなかった。肥溜って理由があったんだ。


「それ以降、ポリスにはトイレがなく、集めて捨てる形になったのです。スパルタが地面に埋めるのは、たまたまドーリア人が、これより後にギリシャに南下してきたことと、行軍中の追跡防止を普段から習慣づけただけの結果です。」


それがスパルタ式がまだましな理由なのか・・・


「アテナイにしても人口が増え続けた結果、水資源の兼ね合いで、そうそうにトイレを放棄して、排泄物は路地から集めたのちに城壁から2km以上離れた位置に捨てると定められたのです。」


・・・


「そして最も重要なことは、この出来事がギリシア人の性向を決めてしまったのです。」


性向を決めたって不潔でも平気とか?


「徹底的な個人主義、自分が最優先・・・取り決めや準備は何の意味もなし。サントリーニ島の津波で津波の対策を知っていた人が逃げられただけなのです。」


津波の避難はてんでんこ・・・三陸のことわざだけれども・・・各自の判断で自分で決める。それ以外に津波から逃げる術はない・・・んだよな。


「しかもその知識すらアピン彗星には無意味でした。そこから生まれた未来を見ないことによる享楽的な考え方の礼賛・・・それが今のポリス市民の形成された気質です。」


「ポリス市民は約束は守りますが、自分がした約束以外は守らなくてもよいと思っています。このため例えばアテナイは直接民主制以外では国が運営できないほど個人主義が強いのです。」

ちょっと難しいがアルコン(最高統治者)が他のポリスとした約束でも、自分がした約束でないから守る必要はないということらしい。

その場合は自分もその意見に賛成を表明するか、あらかじめ神に誓ってこのアルコンの意見に従うことを明言しておかなければ強制力は生じないという・・・契約って概念がまるで違う。



重い・・・重すぎる・・・まさかトイレがなくなったのが・・・ここまで重い理由だったとは・・・考えが甘かった。


「続いてデルフォイの巫女を束ねることになるあなたには、もう一つ知ってもらうことがあります。」


まだあるのか。もうお腹一杯なんですけど。


「この程度は前菜にもなりませんよ。・・・次はリュクルゴス制の真の意味です。・・・」


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