スパルタの巫女
これでストック0です。
戦記の合間に書いてるとだいたい4日ペースのようです。
困った、眠れない。
暗闇の中、聞き耳をたてたり、掛け布を頭からかぶったりして気を紛らわしてみるが、やはり美女と同じ部屋で寝るのは心が逸る。
まるで部屋の中の空気があったかくて、ピンクに染まっているようだ。
コリーダが黒髪ラテン系の美女というのも心臓に良くない。
以前、付き合っていたブラジル人の彼女とのあれやこれやを思い出す。
そして、まだ夜の7時か8時・・・寝れるわけがない。
コリーダの息も寝てない感じだったので声をかけてみた。
「コリーダ起きてるか?」
「はい、アーシア様。お加減が悪いのですか?」
彼女の姿は見えないが、ベットの下の暗がりから声が返ってくる。
「いや、寝付けないだけだ。」
「そうですか。」
だめだ・・・話が続かない・・・なにか話題を・・・
「デルフォイについて教えてくれ。」
「デルフォイの何についてでしょうか?」
「まずは神託についてかな。どうしてボクの神託が本物と判断されたのか聞きたい?」
「詳しい話は聞いてませんが、その声を聞けば間違いないと思います。」
・・・声?
「明らかに神の声になっています。」
神の声???
「えーと、神の声って何?」
「神の声は巫女が神託をする時の声です。」
コリーダの説明を要約するとこうなる。
通常の儀式では巫女が三脚台といわれる場所に座り、大地からの神気を吸って神託を行う。
ただし毎回成功するとは限らない。
神託は神の気分しだいなので、起きないときは「神は今回預言なさらなかった。」が定例句となっていて、そう告げて終了となる。
10回に2・3回は起こるようだ。
神託があったときは、巫女の声が男性のような太い低い声になるらしい。
また意味のある言葉を告げることは稀で、横にいる神官がその声を判読して内容を告げるのが一般的らしい。
また巫女は神託が成功するとほぼ死亡するらしく、稀に生き延びても2回目の神託後には死亡している。
・・・今の巫女長の3回成功というのが尊敬されてるわけだ。
また神託に成功しなくても巫女が死亡する例があるため、神託の儀式自体も重要なことでない限りはおこなわれず、占術や巫術で判別するのがほとんどとなっている。
「それを聞いても、俺の声が神の声って理由がわからないんだが?」
「少年なのに明らかに成年の太い声になってますよ、いまでも。」
「!」
そういえば、自分でしゃべってる時に違和感覚えてなかった。
ということはみんなが聞いてるのは東山優馬の声か。
神託の時に急に少年の声から切り替わったなら・・・納得できるな。
「なるほど。」
「おわかりになりましたか?」
「納得した。」
あとは・・・巫女長と神官長か・・あの二人の関係について聞いておこう。
「あとは巫女長と神官長について聞きたい。」
「詳しいことは話せませんが?」
「構わない。話せる範囲でたのむ。」
アレティア巫女長 42才 女性 ドーリア人 南伊のタラント出身
今まで3回の神託に成功した偉人。 祖母がエウリュポン王家の出身。
タラントっていうのはスパルタの唯一の植民市、エウリュポン王家はスパルタの双王家の一つ、もう一つはアギス王家。
アイオス神官長 58才 男性 イオニア人 アテナイ市民
財政、外交担当。基本的は巫女長の補佐。
ただ、神殿への奉納は圧倒的にイオニア人が多いため巫女長とほぼ対等の権力あり。
巫女長はドーリア人、神官長はイオニア人が歴代の体制。
「というところです。」
「なるほど。奉納品か。」
「ええ、この神殿には奉納された宝物をしまっておく宝物庫がいくつもあります。」
コリーダが指を折りながら数えていく。
「シシリー、シフノス、テーベ、アテナイ、シラクサ、クニドス、コリント、シレネ、代表的のはこの8つですか。」
結構あるし、奉納品はそれぞれのポリスで管理するんだ。
「有力なポリスはほとんどありますが、スパルタはありません。」
あれ?たしかに
「それはスパルタがリュクルゴス制をとっているためです。」
うん、それは知ってる。
・鉄貨の採用による贅沢品の禁止
・私有財産をほぼ禁止した、軍政的共産主義
・新生児から始まり60才までつながる兵士適正優先。兵士になれない幼児はほぼ死亡。
くらいかな。
「つまり貧乏で奉納品が買えないと。」
「そうなります。」
「でも、そうするとスパルタが神託を受けたいときにはどうするの?」
「巫女はほとんどがドーリア人です・・・それもスパルタ出身の」
了解、巫女を送り込むことで権利をもってるのね。
「巫女は使い捨て扱いかな?」
「・・・そのようなことはないですが・・・12才くらいで来られて、成人する方はごく稀です。」
話からするとそうなるわな。
結構、黒い話だな。
あとは明日考えよう。ようやく眠くなってきた。




