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乱入者

「なぁ、とりあえず今は戦うのはやめにしてあいつらを倒すことにしないか?」

「嫌だ…と言いたいところだけれど仕方ないわね…」

「なら、そのフード取ったらどうだ。変にこだわると思わぬミスをするかもしれないぞ」

「………」


 少女はそれに答えることはなく、ミノタウロスめがけて走っていった。

 なるほど、どうあってもフードは取りたくないってわけか…。


「いい度胸だっ!!」


 俺はミーニャが相手にしているのとは別個体のミノタウロスめがけて走る。


「うぉらっ!!」


 俺は振り下ろされる金槌を掻い潜り、懐へ潜り込むと一撃いれる。しかし手応えは薄い。


「ならっ!!」


 俺は渾身の力を込めて回し蹴りを放つも、あまり効いている様子はない。

 そしてミノタウロスに足を掴まれそのまま地面に叩きつけられた。

 全身をとてつもない衝撃が襲う。俺は思わず吐きそうになりながらもなんとか立ち上がった。

 予選、準決勝、そしてミーニャとの戦いで既に疲労困憊。それはミーニャも同様で、ミノタウロスにかなり苦戦していた。

 だが、そんな俺のことなど全くお構いなしにミノタウロスは金槌を振りおろしてくる。

 一撃でも貰えばあの世行き。そんな緊張感の中、俺はなんとか避けていく。


「きゃああ!?」


 その時、攻撃が直撃したのかこちらに向かってミーニャが飛ばされてきた。

 俺は彼女を受け止める。

 ミーニャは既にボロボロだった。


「おい、大丈夫か」

「触らないで…! 私はまだまだやれるんだから…!!」


 そういうも、立ち上がるので精一杯なようで、俺から身を剥がすことさえままならいようだった。


「お前がこっちに来たおかげで、ミノタウロスもこっちに集中してきたじゃないか」

「うるさい…。そんなことわかってる…!!」


 俺の言葉通り、俺達の前後にはミノタウロスが鼻息を荒げながら近づいてきていた。

 このままこいつを守りながら2体相手にすることなんてできるのか…?

 まさに絶体絶命。

 だが…、ここで死ぬわけにはいかない!!!


『グルァ!!』


 2体のミノタウロスが一斉に俺達めがけて金槌を振り下ろした。

 ちぃ! 仕方ねえ…イチかバチか賭けてみるしかない!!

 俺はもう1つの剣を鞘から抜くと、右手の剣と左手の剣1つずつで金槌を受け止めた。


「…!! お前…」


 ミーニャが驚きの表情を見せる。


「ぐあぁっ!! くっ…悪いな…俺は元々双剣士…なんだ」


 なんとか片手ずつで受け止めたが、体に加わった衝撃は凄まじい。体が地面にめり込みそうな勢いだった。

 ミノタウロスは俺をそのまま押しつぶそうと、更に力を込めてくる。

 俺は歯を食いしばりながら、耐える。だがもう腕は限界に達していた。


「くうぅっ…!! このままだと…」


 両手でも受け止めるのがギリギリなミノタウロスの攻撃を、片手ずつで受け止めているのだ。これに押し負けてしまえば、俺もミーニャもミンチになるのは確実。そうわかってはいても、あまりの攻撃の重さに押し返すことなど到底不可能で、万事休すだった。

 せめてミーニャが動ければよかったのだが、立っているのがやっとな彼女にそれを任すのは酷だ。

 つまり、俺達は詰んでいる…?


「くぅ…っ…腕…がぁ……もた…な」


 もうダメか、そう思った時。

 突如俺の心臓の鼓動が早まりだす。

 それはまるで俺の中の何かを促すかのようだった。


「……」


 段々と熱くなってくる体。

 少しずつ、力がみなぎってくるのがわかる。


「くっ…ううおおおおぉぉぉぉっっ!!!」


 そして、その変化は唐突に起きた。  

 俺の体がまばゆく光り始め、次の瞬間周囲を光が覆う。

 ミノタウロスはその光に目をやられたのか、俺の剣に押し付けられていた金槌の力が弱まる。

 

「ああああああああ!!!」


 そして、光は一瞬にして弾け、再び会場内が見えるようになる。

だが、俺の姿を見て会場内にいる人々、そしてミーニャまでもが仰天した。


「な…!? お前…」


 俺はその声を無視し、なおも金槌で俺達を潰そうとするミノタウロスの攻撃を軽々と跳ね返すと、猛スピードでミノタウロスに連撃を加える。

 さっきまでは手応えのなかった攻撃も、今は確かな手応えを感じる。ミノタウロスは無数の切り傷を作り、そこから血が溢れ出す。


「これで終わりだ…死ね」


 俺は血を流すミノタウロスに更に容赦なく斬りつけると、出口の鉄柵に向けて思い切り蹴飛した。

 息絶え、ただの肉塊となったミノタウロスはそのまま猛スピードで鉄柵に叩きつけられる。

 鉄柵がへし折れた。

 そして、ミーニャを再び攻撃しようとするミノタウロスに思い切りタックルすると、体制を崩したミノタウロスの首を剣で刎ねた。鮮血が吹き出し、俺は返り血をかわす。


「ふぅ…」


 俺は剣をしまうと、ミーニャのもとへ。


「大丈夫か」

「あ、ああ…だが、その姿は」


 ミーニャは俺の姿にかなり驚いているようだった。不思議に思った俺はミノタウロスが持っていた金槌を鏡がわりにして自身の姿を見る。


「おいおい、なんだこりゃ…」


 頭には獣耳が生え、背中には尻尾もある。

 髪は白くなり、目も青い。歯も、獣のように鋭く、まるで何かの動物に変化したよう。


「お前…獣人種…?」

「獣人種? なんだそれは」


 初めて聞く言葉に、首をかしげる。

 俺はなんのことか聞こうとしたとき、ミーニャは突如ネジが切れたおもちゃのように、その場に崩れ落ちた。

 焦った俺だったが、脈を確認するとちゃんとあったことから、極限の戦いが終わった安心感から気絶したのだろうと推測した。

 その時、試合終了の笛がなった。

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