喫茶店に戻りたい
「瑞紀ちゃん」清水千夏は、やっと言葉を発した。篠宮英梨は、清水千夏を睨む。清水千夏はまた怯えてしまった。
「篠宮さん、今日は千夏と遊ぶ約束してたからまたお話ししましょう。予約してる店があるので失礼します。」篠宮英梨の手をどけ清水千夏の手を掴み早足で逃げた。篠宮英梨は清水千夏を睨んでいたが気にせず逃げた。後ろを見れば篠宮英梨の恐ろしい顔が見えてしまうようで前だけをみていた。
清水千夏は、泣きそうに下を向いていた。
篠宮英梨とどういうことがあったかわからないが聞けなかった。
喫茶店のテラスから清水千夏に出会い、その先に篠宮英梨に出会い人生がいっぺんしていた。色に例えていた自分が今はまた友達がいる。
私と清水千夏は、喫茶店から離れたカラオケ店にたどり着いた。
「千夏…。カラオケ行かない?ちょっと休んでいこ。」清水千夏は、震えが止まってなかった。下を向いてうなずき手を繋ぎ店へと入った。カラオケ店に入り、受付を済ませ清水千夏を先に部屋に行かせドリンクバーでアイスティーとコーラを選びボタンを押した。
清水千夏が少し一人になりたいような気がして少し飲み物がいれ終わるまで息を落ち着かせた。篠宮英梨と出会うなんて不運だと思った。
ひどく ため息がでる。
コップを持ち、清水千夏がいる部屋へ向かった。清水千夏に篠宮英梨の話は無理だと思ったが部屋に入ると清水千夏はドアのすぐ前に立っていて携帯を突き出した。
「瑞紀。ごめん。泣いてばかり。」驚くよりも、篠宮英梨と何かがあったのはわかった。
「千夏、嫌かも知れないけど篠宮のこと教えて。あ、飲み物先に飲んでゆっくり話そう。無理に話さなくてもいいから。」テーブルにコップを置き清水千夏を座らせた。
「瑞紀、携帯見て欲しい。全部分かるから。篠宮英梨のメールのやり取りとアルバムにもあるから見て。」
携帯を受け取り、篠宮英梨とのメールを確認した。
私の名前が次々出てくる。内容は、脅しのようなものばかりで篠宮英梨の一方的なメールだった。
「これって、いつから始まったの?」もしかしてあの時からずっとこうなのかと思った。
「瑞紀が篠宮英梨を避けるようになってからだったと思う。瑞紀に何か言ったんだろって電話とか何件もきて。」メールをずっと見ていると驚くようなメールがあった。
(私の瑞紀を取らないで。私は瑞紀しかいないの。)
そんなメールに私は、混乱してしまった。
「瑞紀、篠宮英梨は瑞紀が好きなの。だから私が瑞紀といたりすると怒るというか八つ当たりみたいにしてきたりする。」篠宮英梨が私を好きなんて信じられなかった。
「一応、女なんだけど。でもびっくりだ。千夏に迷惑かけてた、本当にごめん。」深々と頭を下げた。篠宮英梨に私自身が言うべきだと感じた。
「瑞紀は、可愛いいから。気づいてないだろうけど私も瑞紀が大好き。」清水千夏の言葉に何故か顔が赤くなった。私は、女だし好きなのは男性だ。篠宮英梨も清水千夏も色がレインボー色でわけがわからなくなった。
「えっと、それは友達としてだよね?ちょっとよく理解できてなくてわからなくなってきた。」清水千夏の距離が近くなる。慌てて立ちドアノブに手を伸ばした。
「瑞紀?」
「御手洗い行ってきます!」大きな声でドアをおもいっきり開け走った。危ない展開を回避した私の心は混乱している。ごちゃごちゃになっていた。
思わず携帯まで持ってきてしまった。
「怖い……。携帯持ってきてるし。」まだアルバムを見ていないことに気づきおそるおそるひらいてみた。
「……え。私の写真。嘘だろ。」そこには私がたくさん写っている写真ばかりで専用の瑞紀と書いてあるファイルがあった。
私は、恐怖で固まってしまった。
気分は、青ざめたような色に黒が全体を塗り潰すような思いだった。
「何で、こんなことに。」私はしゃがみこみ喫茶店にいた自分に戻りたいと願った。