第二話◆仮面とったら萌えなんて邪道だろ?◆
「隊長……」
「何だZ」
「やっぱ無理がありますって」
「何がだ」
「何がって……」
玉座にて片膝をつく二人。何時もならばZの呼び名にも突っ込むのだが、今回は少々状況が違っていた。
「に゛ゃ〜」
「まぁ〜シンヘォニーったら変な鳴き声ばかりねぇ」
王座にチョコンと座る金ピカ仮面にフラつく猫(ミックス二歳♀)に、后妃は心配そうな顔を向けた。
つーか后妃、名前微妙に呼び間違ってるし……
つーか、バレない訳ないし。と、Zは心配そうに隊長をチラ見する
「心配すんなー」
最近歯医者でヤニ取りしたから綺麗だろー、と言わんばかり隊長の歯がキラリと光る。
【隊長っ、やはり何か良い手があるのですねっ】
Zは安心したように顔を上げた。
「ふふ。あの仮面はなーレプリカだから軽いんだー。だから、か弱い猫ちゃんでも安心……」
【ドォゴォォン!!】
「あらあらぁ?兵隊さんの靴が壁に刺さってるわぁ。何処からかしらぁ?……あら?隊長さん大丈夫?頬から血が……」
「ちょォーっと真剣に探してきまぁーす!!」
Zが半目ガン切れ青筋で睨みつける中、青ざめた隊長がビシッと敬礼し、そのままで後ずさる。
「あらあらぁ、探し物かしらぁ……?」
后妃は、んー?って感じで首を傾げた。
「それよりも……シンフォニーちゃんが二人……どっちが本物かしらぁ?」
首をかしげる視線の先で金ピカ仮面猫と、後ろ手を拘束された仮面野郎を見比べる。
「ムフンムングーー!!ムンググェー!!!!」
(※勇者は口封じの為、猿轡をされたまま仮面をはめられた)
訳※
「気付くだろ普通ー!!どんだけぇーー!!」
「ダラララララ……」
「五月蝿いのー」
どうやら兵士は小太鼓を叩く真似事で、このイベントを演出しているつもりらしいのだ。
イベントとは王が幼少期より着けているこの仮面を外す事。
「え?何故イベント扱いかって?」
「……うむ」
「だってそりゃー、ねぇ?誰も見たことが無い素顔なんて興味あるじゃん」
兵士はワクワクと言い放った。
「変な奴よ」
呆れたよう、だが少し嬉しそうに言い放つと、ガチャガチャと側面を触った。
(余に興味を持ってくれた人間は初めてじゃ)
初恋に似た感情と云うのか……、とにかく甘酸っぱい感じ、チェリーとかじゃなくstrawberryみたいな。
そんな嬉しさに胸高らかせ、王は今、脱皮する!!!!
【がチャリ】
重苦しい音と共に仮面がゆっくりと落ちる。
「うわっ」
ビュッ!!と暖かな強い風が一瞬吹き抜け、兵士は思わず瞼を閉じた。
そしてゆっくりと瞼を開ける。ゆっくり……ゆっくりと
「…………ッ!!」
兵士は思わず目を見開いた
「………………ブッハァ!!アーッヒャヒャッヒャ!!!!!」
「なっ!?何だ!?」
「アヒャ、あの……あ、目が目が……“33”みたいな!!!!アッーハッハッハ」
兵士は笑い転げた、腹が筋肉痛なる位に。
「余の……余の感動を返せェェェ!!!!」
その日、王は泣いた。
****
「つーか…………、顔洗ったら普通の顔って何さ、邪道過ぎだろ。あ・り・き・た・り。しかも本当ふつー。萌え要素とか無いわけ?普通さ、眼鏡取ったら輝くよ?仮面は着けた方が輝くかもだけどー」
兵士は、あーおもんなって感じで吐き捨てた。
ちょっ、ねぇ誰かコイツ殺して!!!!僕笑顔ですけど、涙止まらないんですけどッッ!!heartが早くも限界っぽいんですけどォォオ!!
「うーん……昨日の、の○太目スペックは確かに神だったのに――」
「――お前死ねやぁぁ!!」
*****
――拝啓、母上どの
最初は嫌々だった王も何だか元気そうです。少し安心しました。
ニコリと微笑み、幸せな余韻に浸りつつ隊長はパタリ。と日記を閉じ……
「早く保護せぇぇぇやーーーーーー!!!!」
――ゴフゥ!!
「クッ……」
俺様に片膝つかせるなんざ、やるねぇ。つーか最近本気だよね、Zさん……
イライラだよね、ひょっとしてアレかな?女の子の日かな?突っ込みに殺意を感じるよ。つーか走り込んで足で突っ込みとか斬新だよね……
「あ、意識が……」
「た、隊長ォオ!!」
「つーかお前、それ言いたいだけだろぉがよぉぉぉ!!!!」
はてさて
お気楽な御一行はハチャメチャなまま街へ突入。
いやはや、どうなるどうなる…………?
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