TILE4 ありがとう、死姫よ
放課後。
この学園には、主に部活動はない。だからまあ、帰るのは普通だが、ここでは違う。放課後は基本、保育所の手伝いをしている。
涼しげな和室の中で瑠亜が幼児の相手をしていた。
「って、飛夜理は!?」
「ふぁい、ほれおおはへど」
「は!?」
「俺ここだけど」
いや、聞いたけどそーじゃなくてと瑠亜が目を細める。
「何食ってんだよ……、一応授業時間だぞ……………」
「弁当。……………それがさー、俺学園に転入して中等部上がってこれのどこが授業だよ、って何回も思ったんだよなー」
と、腕を組みうーん、と悩みながら飛夜理は話した。
「今更アンタは何言ってんのよ」と言う麗華の声と一緒にばしっと叩かれる。
「あの面倒くさがりの創先生やらがあっさり引き受けるとでも思う?」
「お……思えないっス」
「でしょ?」
麗華は水色の明るい髪をガシガシと荒く掻き、はぁ、とため息を一つ着いた。
「とりあえず、いいから。早く行けよ、愛歌んとこ。困ってたよ」
麗華がにやりと笑い声は無愛想に言った。
「え、あー…うん」とちょっと悩んだようだが飛夜理は急いだ様子で愛歌のいる教室の方へ走っていった。
その頃、愛歌はあわあわとエプロンをし、頭にマフィンの生地を付けて、どうしてこうなったのだ、と悩んでいながらもふらっと座り込んだ足を立ち上がらせた。
『なにをしているのですか…』
「助けて。何があったかよくわからないわ。」
『そう言われましても……。』
「アンタってやつは…………。言うことは、それだけ?」
『……………いえ、この数日、愛歌を見守ってきて、つい何年か前のあの決められ自分を殺し続けた日々を終えて、今ここに貴女は立っています。』
「話切り替えるの早いわね…………つまり?」
『見守ってわかったのは、貴女が、''楽しそう''ということです。
見えない運命に恐ることなく、凛と前を向いてしっかり地に足をつけて。
だから、もう、心配することも、私の辛き欠片も全て消えました。
だから、貴方には礼を言わなければ。
ありがとう。ありがとう、我が村の最悪にして最高の幸せを取り戻した死姫よ。』
「………………そう。」
愛歌の反応は実に薄かった。
でも、口元だけはふっと笑っていた。