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FILE41 冬が過ぎた頃

 飛夜理は表情のころころ変わる愛歌をみて、ニコニコ微笑んだ。

 気がつけば、日は過ぎ、あっという間に冬は過ぎていた。………愛歌はいま、この瞬間が長くて一生とも言える長さに感じたのだろうか、彼女は疲れきった顔をしていた。


「ふぇ………」


「情けないですね。」


 春のそよ風に愛歌のぼやく声は消えていく。ふぶきの言葉は、呆れたように、でも、子を見守る母の様な言葉だった。


「あ。」


 愛歌の座っていた椅子が倒れたタイミングと、ふぶきの言い出しの言葉が重なり、愛歌の視界は歪んでいった。


 鈍い痛みに、眩しい光で愛歌は目を閉じようとした。でも、聞きなれた声に目を開けた。


「愛歌ぁぁ!!」


「はぁ、よかったよかった。」


「おい、舞菜、騒ぐなぁ。大したことない。一時的に意識がトんだだけだ。」


 そこには、相変わらず変わらぬ笑顔の舞菜と頭を抱えた飛夜理と舞菜を睨む保健教諭の創がいた。

 まっさきに事情を説明してくれたのは創だった。


「椅子が壊れたらしい。これも古かったからな。で、飛夜理が軽々と抱えてきょったわけだよ。」


 1度に色々説明をする創は好きじゃない。けど、今はありがたいと感じた。


「飛夜理、ありがとう。」


「ははは……流石に真吾先生が抱えてったー…なんてなったら、愛歌、キレるだろう?」


 苦笑い気味に話す飛夜理には照れ隠しなのが丸見えだった。


「ありがとう。私なら、大丈夫だから。」


「……丁度いい。愛歌。少し俺と話そう。」


 へ?と飛夜理の方から顔を背け、創の方を向いた。素っ頓狂な顔をしていたが、創が彼女の頭にぽんと手を置き、「色々、話さなならんことがある」と言った。


「嫌だと言ったら?」


「閉じ込める」


「セクハラか。」


 創のことは愛歌は良く知っている。何せ、集落が同じなのだから。まるで、妹のように扱われてきたこともあり、今は反抗期なのだ。


「まぁ、とりあえず、舞菜たちは帰りますよ。愛歌に悪さしないで下さいね」


「誰が手ぇ出すかこのチビに。」


 心配そうな飛夜理に「おい待て大丈夫だから」と創は言った。

 なんやかんやで2人が去ると、円形のテーブルを2人で囲み、すっと愛歌の前に資料を差し出した。


「……わかってしまったのか。」


 愛歌は悲しそうにつぶやいた。


「あとは、あいつのタイミングだよ。俺達には変えようのない過去むかし現在いまだ。」


 創がぼやくと、愛歌は目を背けてしまった。


「…私は、彼が決意することを信じているわ。」


 ふぅ、とため息をひとつ。それに釣られ、創もため息をひとつ吐いた。

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