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Re:FILE1-2 前を向き直そう

「お父さん……今の、何?誰?」


「話は車の中だ。早く……早くいくぞ」


 瑠衣も瑠亜も父が深刻な顔をして言うことだから余程だろうと思い車に乗り込んだ。

 車内では必死に母が父に「どういう事なの?」とだけ、何度も何度も聞き返していた。

 道路は運良く混んではいず、約10分弱で目的地・学校の駐車場に着いた。


「こちら……ですよ」


 深刻な顔の若い警察官がそう呟き、目の前に倒れている少女を指さした。

 その時、意味はわかっていなかったかも知れない言葉が瑠衣と瑠亜の脳裏を過ぎった。


『瑠兎が、校舎の裏庭で首を吊っているのが見つかったそうだ』


 それは明らかな自殺だったそうだ。文化(いっぱん)的な自殺であり足元には1枚、『いしょ』と明らかに瑠兎の字で書かれた紙があった。その場に母は泣きながらしゃがみこんでしまった。


 遺書の内容から原因はいじめと発覚し二人は自分たちは何も気付けなかったと後悔し、祖父母のいる村へと越してきた。


「……つーことだよ…。」


 瑠亜が話終わり、何処かやるせない表情があった。

 麗華が目を逸らし時計を見たがまだ五分くらいしか経っていなかった。皆は今までの時間が長い時間経った気がしてならなかった。


「その事件なら、よぉく覚えてるぜ」


 そう口を挟んだのは真吾だった。皆が不思議そうに彼を見ていたが「忍事件(あれ)のあと一度、都会に飛ばされたんだ。」と苦笑いしながら答えた。そして瑠衣や瑠亜、皆の方を見てまだ続ける。


「あの日は凄く天気が良かった。今でも覚えてる。見つけた掃除員さんが震えて事情を話してくれたことも、涙を流していたことも。勿論、瑠衣と瑠亜もな。」


「あの日の警察官……先生だったなんて。知らなかったです。」


「そら、あの日のお前らは前も後ろも分かんねぇくらい泣いてたんだ。俺を覚えてなくて当然さ。」


「そう……先生も瑠衣と瑠亜に一度接点があったとはね。」


 真吾と瑠亜たちの会話に水を指したのは他でもない愛歌であった。

 そして彼女は一度ため息をつくと「ふぶきがね、この教室の二つ先を開けておくから来るようにって言ってたわ」と冷たく呟いた。

 二人は一度顔を見合わせその教室へ向かう。


「愛歌……なにを……」


「飛夜理、覚えておくといいわ。この『空下村』はね、異名の他に別名もあるの。『後悔を取り戻す村』ってね。」


 その台詞に一度飛夜理は首を傾げたが麗華らが「細かいことは気にしないで行きましょう」と言った。

 瑠衣たちが先に行っていた二つ先の教室には『いるはずのない者』がいた。


「……え?……瑠兎…?」


 瑠衣が目の前の光に問いかけるが返事はない。だが二人は何かをわかっている様子だった。

 ずっと会いたかった。一度会って謝罪がしたかった。ここ二年、何度謝りたかった事か。

 光のそばにいた紫の布……いいや、言わば(かみ)の服、まさに昔の忍者の世に出てきそうな服に身を包んだふぶきが二人に近寄りこう言った。


「貴方方には『村の掟』として一つずつ『償い』を背負わせています。瑠衣には『今在るものを大切にする事』、瑠亜には『過去を背負って生きる事』。それが意するものは『瑠兎の死』を背負う事と気付けなかった罪に等しい。だから、罪を償うためにも貴方達が瑠兎に想いを言うのです。そうすれば貴方達の罪も少しは軽くなるはずだから。」


 ふぶきが話終え、瑠衣は少し気持ちを落ち着けると少し笑いながらでも涙は流しながら細々と話出した。


「瑠兎……ごめんなさい。気付いてやれなくてごめんなさい。ずっとずっと瑠兎と一緒に居たかった。ごめんなさい……。」


「……瑠兎姉。何も気付けなかった何も出来なかった。今更後悔しても遅いけどごめん。本当にごめん。俺も瑠衣姉や瑠兎姉と居たかった。」


 二人はボロボロ涙を流してそう懺悔する様に言っていた。


『もういいよ……姉さんらが笑っててくれないと私は、ヤダからね………でも、忘れないでいてくれて、ありがとう』


 光は小学生で時間が止まったままの瑠兎を映し出していた。その瑠兎は手を伸ばし二人の頬、髪に触る仕草をした。


『約束……破ったら、私怒るよ?姉さんらは笑っててね……?』


 そう言って瑠兎は消えていった。キラキラ光る光は空のずっとずっと遠くへと飛んで行ってしまった。

 廊下にいた舞菜や麗華たちは少し顔を見合わせ二人の元へと行った。

 瑠衣と瑠亜は確実にあれが瑠兎であることはわかっている。また少し振り返り、涙を拭う。でも、振り返った先に瑠兎はいない。


『────不安もあるだろうけどさ、姉さんたちなら大丈夫だよ。忘れないで、私は二人のそばにいるから。』


 そう、瑠兎が言い残した事が二人の脳裏を過ぎって行った。


 また二人は笑顔で歩き出した。……今はいない、けど、二人の大切な『姉弟』との約束を破らないために。


「愛歌……よかったね…………地雷でもなくて……」


「えぇ。……大丈夫よ。あの二人だもの」


「……?」


 話を聞いていた悠志は首を傾げたが「ほら授業始めっぞー」という真吾が見える。まぁいいかと呟くと歩き出した。

 その時、悠志の目には瑠衣と瑠亜、そのとなりにもう一人、ポニーテールと三つ編みをした少女が見えた気がした。


「瑠衣も……瑠亜も……いい人だから、ね。」


 そうぼやいて悠志は少し微笑んだ。

 ところ変わって、いつもの木の下に居たふぶきは今、誰かと話していた。


「姉さんと瑠亜をよろしくお願いします。忍さん。」


 何も言葉を返すことはできなかったが、彼女……瑠兎は空へ消えていなくなった。


「ふぶきちゃん」


 ふっと声がして、振り返る。巫女………いや、着物のような格好に普段前髪を隠している部分を明け、真ん中に1つの目が出ているきずながいた。その姿を見て、ふぶきは深いため息を吐いた。


「…………これでよかったんでしょうか」


「さぁね。………大丈夫だよ。あの二人は。いい方向にすすめるよ」


 きずなは微笑んだ。

 きっと、彼女らに辛い過去があったからこそ、今の出会いがあるのだ。それを考えたら、彼女らは、少しでもこれからの生活が幸せに満ちることを祈った。

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