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FILE35 どう足掻いても

 冬休みも明け、まだまだ寒さが強い村にも、一月の試練がやってきた。

 それは、年に一回あるかないかの生活がかかったものだった。


「母さん。ちょっとでかける。」


「あぁ、愛歌。もうちょっと着込みなさい。ほら、これもあれも………」


 コートにダウン、帽子にマフラー、手袋と、暑苦しいほど着込み、もぞもぞと歩き出した。


 さて、秋祭りには綺麗な川についた。何故川かというと、川が凍り水路が断たれたので止まっているところを砕きに来たのだ。

 この川があるのは古家地域で、古家の若者が大体出てくる。

 因みに学生で言えば、愛歌と麗華である。


「麗華、来たわよ。」


「あぁ、愛歌、遅かっ……………は?」


 麗華の前にいたのは確かに愛歌なのだが、えらく着込み、洗濯物の山が歩いているようだった。


「愛歌、何があったの。」


「母さんに着込まれた。動きにくい………。」


「あんたのお母さん、大分過保護だものね~。まぁ、あたし達だけじゃなんともならないから、優と飛夜理呼んであるし。そのままでいいわよ。」


 そういう麗華は、くくっと笑うのをこらえている。それを見て、愛歌は不機嫌そうに「笑うな」と言った。


「麗華さーん!」


「あ、優、飛夜理。来たんだ~」


「来いって言ったのは麗華だろうが。」


「あは、そうだっけ?………まぁ。いいや。来たからには手伝ってね♪」


 そして、優たちの視線は洗濯物の山…………いや、愛歌の方に向いた。

 顔をなんとか出して、愛歌は二人を睨んだ。


「さ、さぁ、仕事しようかぁ………」


「そ、そうですねぇ…………あはは……」


「なんか言えよ。」


 最後の最後に愛歌の冷たい一言が飛んできた。


「なんとも言えねぇ……………」


 愛歌はしばらくすると、着込まされた服の中で寝ていた。


「愛歌、こんなとこで寝たら風邪引くわよ。……………まったく、もう。」


 麗華は呆れながらも猫のように丸くなる愛歌を見て少し微笑んだ。

 まえに、ふぶきが麗華に話したことがあった。

「愛歌は、あの日、本当は嬉しかったのです。」と。あの日……………二年ほど前。彼女が自らの手で『未来』を掴んだその日。永遠に進みもしない、戻りもしないその秋から抜け出せた。それはとても愛歌にとっては嬉しいことだった。


「二年前………………貴女は勝ったんだもんね………。それに、バタバタした日々。休む暇もなかったよね。………今はゆっくり、休みな。」


 麗華の話す声はいやに落ち着いていた。


「麗華ぁ!終わったぞー!」


「お!なら飛夜理!ここ変われー!」


「はい!?!!」


 と、動揺する飛夜理を他所に、麗華はさっさと座れと言わんばかりに顔をしかめ、飛夜理を愛歌の隣に置いた。


 だが、どう足掻いても恋愛方向に何故か行かないのが空下村。

 傍から見れば、ただの洗濯物の山の隣に飛夜理が座っているようにしか見えない。そして、それに飛夜理が時たま話しかける。これほどに異様な光景を見たことがあるだろうか。


「飛夜理~♡愛歌………って、それは……洗濯物?♡」


「違いますよ…………愛歌ですよ………」


「あら♡飛夜理、虚しい~♡♡」


 珍しくもなんともないが、いつものように希がムカついた。

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