FILE1桜吹雪
それからというものだった。
平和になった空下村、愛歌らも学年が淡々と上がり、もう中2の春。
綺麗な桜が見える窓際の席に、愛歌と飛夜理は居た。
「今日、転入生が来るんだとな。」
「へぇ………。そう。」
「愛歌にとって、また珍しい話になるよな。」
うん、と首を振る。
しばらくすると、もあが「転入生と新任教師紹介するぞー」と言った。
「新任教師ですか?珍しいですね」
と、麗華。
「色々あんだよ」と少しやつれた口調でもあが言う。
「えーと、とりあえず、3人入って来い。」
と、教室に入って来たのは、髪が長く三つ編みにした少女、黒髪を後ろに束ねた少年、すらっと身長の高い男性………それは、見覚えのある人間だった。
「そ………下界の刑事……!?」
夢と舞菜が声をあげた。
やぁ、と言う感じに手を振る。
「あー、知っての通り、真吾も今日から教員だ………、自己紹介。」
「理数担当します、よろしくな」
皆少し心配気味な視線を送る。
「はいはい、次な」とその隣にいる2人を紹介する。
「自己紹介を…」
「はーい♪若尾瑠衣、色々あって村に来ました。まぁ、よろしくお願いしまーす!」
「若尾瑠亜、何かとに苦手科目しかないっす。よろしく。」
長めの髪を後ろに結った少年、瑠亜はニコッと笑った。
また双子……と愛歌はとある想像者を恨むことにした。
嫌な予感からいい予感から、全てが愛歌の楽しみになってきた。
見えぬ未来を恐れなくなった彼女を見て、「変わったな」と飛夜理はぽつんと呟いた。
「だよね。愛歌、変わったよね」
舞菜がにっと笑い呟いた。
今は彼女自身、見えない世界が楽しいのだろう。生きているという喜びなのか、良く分からない感情だろうが、今はどうにせよ、信じる事しか彼女には出来なかった。
「……………怖く、ないみたいだね。人見知りの愛が。」
悠志が少し微笑んで愛歌に言った。
うん、と愛歌も笑って返した。
…………そんな学園の前。
桜の木の下で1人、少女が根元に座り、桜色の木漏れ日から見える青い空を見上げる。風がすっとふき、桜の花が舞った。
そして、ふぶきは、
「彼女の胸の傷が、この長い長い時間の中で少しでも癒されますように………。」
と、誰にも聞こえない声で呟いた。