Prologue fin
転章
セイトは、父の影響でモンスターの知識は、人一倍持っていた。
モンスターと一概に言っても、好戦的なモンスターもいれば、友好的も、無関心もいる。
たくさんの種類のモンスターの中で、最も人々の生活に近いのは草食系のフレンドリーモンスターである。彼らは長い時間をかけて、人々と分かりあうことができる。勿論、喋ることはないが。心を通わせられれば、お互いの意をなんとなくでも解することができる。ペットと同じだ。
村には、牛や馬の代わりに、モンスターを使う人もいる。牛や馬に比べて力は異常なほど-異常なのだが-あるから、便利なのは間違いないだろう。当然ながら、それを快く思わない人もいるわけではあるが。
セイトがいくら博識と言っても、あくまで知識であり幼い頃は実物をみたことは当然、無かった。学校があったし、父の仕事にも当たり前ながら、随伴することはできなかった。
そんなセイトが、初めてアクティブモンスターと遭遇したのは、セイトが9歳になる頃だった。10年近く経っても語り草になるほどの出来事で、セイトの父が最強と呼ばれる所以となった出来事だ。
簡単に言ってしまえば、モンスターを村の中、居住区画へ入れてしまったのだ。狼型の大型モンスター、「ニカミ」を中心とした大きな群れだった。村の壊滅は逃れられない、と誰もが思ったところを救ったのが、村一番のサボり者であったセイトの父である。語り草を元にすると、父はフラリと現れ、騒ぎ立てる若いレイヤーから、鋳造品の安い湾刀を拝借して、あっという間に全てを片付けてしまったらしい。果たして、その話にどれだけの割合で事実が含まれているかは不明だが、その一件で、父は小さな村ではあったが『最強』の名を冠名することとなり、サボり者ではいられなくなったそうだ。それ以降、父は2日と開けず外へ出る様になった。父は最強の名を汚すわけにはいかんなぁ、と言っていたが、果たしてどう思っているのか。
さて、レイヤーについて、少しお話ししましょう。
「レイヤー」とは、モンスターの討伐、捕獲などを行い、人々の生活に対する脅威の排除と、モンスター組織の採集による研究への貢献が主な任務である。基本的に、各々の領主が一元的に任命、管理する。しかし、そのためには、「認定」を受ける必要があり、そのためには村もしくは地区からの推薦状を領主へ提出して、試験を受けねばならない。試験をパスできれば、立派なレイヤーの出来上がりであるが、基本的には村、地区へ戻り、先輩レイヤーからしばらくの間、レクチャーを受けるのが一般的である。もちろん、全て独学で切り開いていくレイヤーも存在するが。
さらに、レイヤーの世界には、「ギルド」制度が存在する。ギルドへの参加は任意だが、多くのレイヤーは何処かのギルドへ加入するのが一般的である。一定の活躍が認められれば、領主から褒賞が出たり、場合によっては、領地が与えられる。また、ギルドの創設も自由である。が、アーク領内ではギルド「聖騎士連合」の傘下に全てのギルドが入り、実質アークを治めているのは、聖騎士連合である。どのギルドも種族規制はないはずだが、聖騎士連合にサラマンダー族がいない様にやはり多少の軋轢はある。逆を挙げれば、ウンディーネ族とシルフ族のギルドには夫々の人が多く混ざっている。シルフ族とウンディーネ族は、古来から仲が良い。同じ様に、アーク族とサラマンダー族は決して友好的ではない。また、ファルト族は謎に包まれている。
セイトは、家の玄関の扉を開けた。朝日がこれからのセイトを励ます様に横顔を照らして、命の一瞬の輝きの様に朝露を僅かばかり輝かせた。
セイトの奇妙で美麗な物語は、ここが出発点である。
ここまでが序章です。
お付き合いくださりありがとうございます。
これからも、拙作とSaLaをよろしくお願い致します。