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i might Loved you.  作者: SaLa
3/6

過去が現在

「おーい!早くこいよー、お前がビリだぞ!」

そんなこと言ったって、足の速さは今すぐどうこうなるものではない。

「はっ…はっ……そんな、こと…言って…も」

丘の上、校門の不可視のゴールテープを切る。

「お前、いつまでもビリだな!なんか得意なことないのかよ。モンスター知識以外で」

いきなり全否定かよ。

「はっ…はっ…得意な…こと…」

「まあ、なさそうだな」

えー。じゃあ聞くなよ。

「ほら、早く行こうぜ。また怒られるぞ」

「うん」

いつもの5人グループはいつも通り競争をして、いつも通り学校へ行った。


転章


「ほーら、早くー」

自分よりもずっと早くエントランスに辿り着いた友人は、息を切らして坂を駆ける私をみて、笑った。

「あんた、足遅いね」

知ってたでしょ。

「…はっ…はっ、そっちが…早いのよ…」

乱れた髪を直す気にもならず、息を整えようとする。

「あんた、得意なことないの?」

うーん。得意なことといえば、

「料理は無しね」

無しですか。

「……裁縫…」

友人は私の声を聞いて、目を見開いた。

「へーっ、料理だけだと思ってた。そうかあ、裁縫かー」

ふうん、といったように鼻をならした彼女は、

「ほら早く、遅れちゃうよ」

と、エントランスホールを駆けて行った。


ここは、魔法が存在する世界。

魔法によって、人々は生きている。


転章


グッと力を入れた脚の反動が体を前に倒す。倒れる前に、もう片方の脚を出す。俺は、必死で走っていた。背後から聞こえる、シュルシュルという、呼吸音。ハアハアと大きくなる俺自身の呼吸音。

「セイトー!早くー!」

いつかの友人達の様に走る俺を呼ぶ声。しかし、あの頃の声とは、決定的に違う点があった。声の主が女であることだ。

その女の掌が、ボワんと濃紫(のうし)に光る。

それをみて、作戦通り、と呟き、彼女までの残り数十メートルを、


飛んだ。


見えない雲に乗った様な独特な感覚を感じて、加速する。

彼女の脇を通り抜けて、振り返る。

必死に追っかけてくる獅子型大型モンスター「ラルフ」は、そのまま彼女に突っ込む。

振りかぶった彼女の濃紫に光る掌は、タイミング良くラルフの顔面を捉える。

瞬間、スパーク。

紫色の光を散らして数瞬、ラルフは最期の唸りを上げて崩れ落ちた。

「ナイス、クロハ」

ふぅ、と一息ついて、額の汗を拭ったクロハは、にこりと笑顔を浮かべた。

「いい走りだったよ、セイト」

モンスターは、何故か死んだ後消えてしまう。その消えるまでの一瞬で、必要な部位を切り取る必要がある。さらに、モンスターには血液は無い。謎だらけだ。

ラルフを解体し終えた俺たちは、最寄りのシルフ領の村へ帰路を辿る。

そろそろ夏を迎える夕陽を正面に捉えながら、ちらりと隣の顔を覗き見た。視線に気づいたクロハはにこりと笑った。その顔は夕陽の赤に染まっていた気がした。

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