ただの偶然 Part1
集中さえできれば、大っ嫌いな数学でも
1時間くらいあれば解ける。
家であろうと、図書館であろうと
なかなか集中できないんだけど。
嫌いなものには、全然集中できない。
反対に、本読んでたらどこでも、いつでも
集中できる。
そのせい(おかげ?)でクラスでは
浮いてる感じになってるけど
1人は別に苦にならないし
何より好きなときに本が読める。
その代わり…○人の班作ってーとか、
好きな人と組んでーとか言われるとちょっと辛いけど、まぁ、いいんだ。
今日は珍しく普通に集中できたから
早く終わった。
だからいつもみたいに、本棚の間を
気の赴くままに、ぶらぶらする。
気になった本があれば
手に取ったり、ちょっと立ち読みしたり。
この時間が1日の中で1番好きなんだ。
外国の作家さんが書いた本が並んでいる
本棚を順番に見ようと
3つ目の棚の角を折れると
本当に珍しく、男の人いた。
地域の人もこの時間だとなかなかいないし
司書さんだって、そんなに見回らないのに。
うそっ!あの人制服着てる!
珍しいなんてものじゃない。
この図書館に来はじめて約半年。
制服姿で、それに高校生らしき人なんて
初めて見た……
さりげなくその人を見る。
この辺ではあんまり見かけない
あの詰襟の制服は、えっと、どこのだっけ…
あっ、長峰[ながみね]だ。
公立だけど有名大学進学率が
高いって言われてる地域の名門校。
ここからはちょっと遠い。
私の通ってる藤無[ふじなし]も
公立としてはそこそこだけど
長峰には見劣りがする。って言われる。
この辺だとわざわざ長峰に行くなら
藤無に行く人が多いんだけど
この辺の人かなぁ?
ちなみに私は長峰には行けない成績でした。
どうでもいいことを考えてたら
その人、(名前ないとめんどくさい。
今からあの人は長峰くんだ。)
長峰くんは本を1冊だけ持って
こっちに向かってきていた。
(あっ、まず)
ちょっと遅かった。
長峰くんとばっちり目が合ってしまった。
すぐ目は逸らしたけれど
何となく気まずくなってしまい
そろそろ帰ろうと荷物を置きっぱなしだった
自習テーブルへ向かった。