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愚者が描いた世界  作者: 白い黒猫
~風が吹く時~
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1-3 <英雄達の帰還>

 王族用の薄いレースのカーテンで覆われたバルコニーから フリデリックは謁見広場を見下ろしていた。

 ラッパの音と叫ぶような歓声が遠くから聞こえ、今回の英雄となるレゴリス・ブルーム大将が城下町に到着した事を伝える。その歓声が少しずつ近づいてくることで、謁見広場内の興奮も高まってくる。

 母と姉はあまり興味はないようで、扇で仰ぎながら二人で何やら女同士の会話を楽しんでいる。

 カーテン越しとはいえ、広場の熱気が肌に伝わり、フリデリックの心も高揚する。

 広場の門が開き、馬に乗ったレゴリス率いる軍隊が入場すると、割れんばかりの歓声に広場が揺れた。

 長身でしなやかな体躯をしたレゴリスは、髪の色と同じ黒い馬にのり堂々と広場を進んでくる。その様は圧巻の一言だった。

 レゴリスが率いるの紫龍団を示す古代紫の旗がなびく中に、レゴリスは侍従と思われる少年を伴って進み、旗と同じ色の腕章をつけた王国軍の軍服を着た兵士が続く。

 よく見ると数百人ほどが、地方領軍の軍服を身に纏っているのがわかる。それがこの式典のもう一方の主役達だろう。

 年齢も様々で、若者から老年にさしかかった人物までいるが、皆一様に堂々としており、フリデリックの目から見ても勇ましくみえた。

 ゼルフィア牢獄でマギラと戦った者は皆罪人だとは聞いている。にも関わらず国を想い立ち上がり戦った。

 その戦に参加した罪人は赦免され故郷に戻っていったという。そしてここに来ている者は、そのまま王国軍に入隊し、引き続き国の為に戦う意志を固めた者達。

 国王軍と義勇軍。二つの異なる集団が、驚くほどの息のあった行進を続けて様子は、すでに出来あがった強い団結力を示していた。その絆が見るものに安心感を与え、未来への明るい希望を感じさせる。

 中央正面に王が座るバルコニーの前でレゴリス・ブルーム大将の部隊が歩みを止める。

 レゴリスは華麗に馬を降り、王に対して敬意の礼をとる。背後の彼の部隊も見事なタイミングでレゴリスに倣う。

 レゴリスの戦果報告を受けて、ウィリアム王は大きくゆっくりと頷く。

「我が国自慢の王国軍ならび、自ら剣をもち果敢に戦ったロンサリアの民よ!

 そなた達はアデレードの誇りでアデレートの強さだ!」

 ウィリアム王の言葉に、再び広場に割れんばかりに歓声がわき上がる。

 満面の笑顔で手が痛くなるほど激しく、フリデリックも兵士達に拍手を送りつづけた。

 フリデリックはこの華やかな式典がアデレードの明るい未来を象徴しているように思え、素敵な予感に心を躍らせた。この広場に自分の人生を大きく揺るがす存在がいることにも気付かずに。その人物も、フリデリックの存在を気にもしておらず、笑いかけくるレゴリス・ブルームの合図を受け、別の一点を見つめていた。

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