詩 屋上で彼が歌う
「ラララ」
屋上で彼が歌い出した。
私は思わず聞いてみる。
「何の曲?」
「さあ?」
「さあって…」
目をぱちくりさせて戸惑っていると、彼が言ってくる。
「何でもいいから口にすると、気持ちいいんだよね」
「そうなの?」
彼は手すりに腕を乗せ、遠くを眺めている。
一緒の景色が見たいと、私も手すりに触れ、眺めてみるが、青空が広がる下、色んな屋根の色が見える。
まるでクレヨンの並び方みたいだと感想を持つと、また彼が歌い出す。
「ラララ」
その声は高くも低くもなく、聞いていてうっとりするものだった。
思わず耳を傾けていると、身体が彼のほうに倒れそうになる。
「危ない!!」
慌てて、彼が止めてくれ、一難去ったことになる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
逞しい腕に抱かれて、頬を赤らめる。
男の人の身体って、女と違って力強いんだよなと頭の片隅で思う。
「あの、もういいから」
「あ、悪い」
彼がゆっくり離してくれ、身体が淋しくなる。
もう少し浸っていれば良かったかと後悔したが、沈黙が訪れる。
彼は両手を上へ伸ばし、まるで雲を掴もうとしているようだった。
「カラオケでも行く?」
「うーん、どうだろう?」
彼の気のない返事に、それ以上、言うのはやめる。
彼がまた歌い出す。
「ラララ」
この歌声、私だけのものにしたい。
神様も自然の皆も、聞いちゃ駄目!!
私だけの歌い手。
彼に気づかれないように、うっすらと笑う。
最高の彼氏だ!!




