エピローグ
「陛下、是非、エレクシアに罪を償う機会をお与え下さい」
「まあ、良いだろう。役に立つとは思えんがな」
私はヴォルグ公爵、娘エレクシアをヨルグ少将の要請により戦場に送り出すことにした。
王妃教育を受けた者で失脚したら生涯修道院に幽閉される。戦時特例だ。
「しかし、ヨルグという男、全てが絶妙だな」
「父上・・それは?」
「見て見ろ。王宮の面々を・・・」
「ヨルグという者がレオンと戦えているようだぜ」
「あの変わり者?」
「なら、俺たちも戦えるのではないか?」
官僚国家で突出した功績を持つ者は妬まれ陥れられる。だが、レオンと戦えているのに侮られている。これは性格によるものだろうか?
貴公子達が浮き足立っている。その受け口は王太子だ。
「皆、父上に許可をもらった。それぞれ兵を集めてくれ」
「そうよ。私達が祖国を守るのだから!」
「「「はい、殿下!」」」
「「「ハンナ様」」」
「臆病な軍部に我らの力を見せつけるのだ!」
彼らは軍部の命令を受けずに出征をした。元帥は許可を出さなかったから私戦扱いだ・・・
元帥はあきれ顔だ。
「フン、レオンの怖さをせいぜい思い知るが良い」
彼は子飼いの部下達が破れ冷えたスープを飲む立場だ。だが、彼も軍人だ。敵の力量を測り味方を評価することは出来る。
「ヨルグという者・・・文官出身か。たいした者だな」
「元帥閣下、素人の策がたまたま上手く行ったのでしょう」
「素人の策?貴様は素人の策に翻弄されるのか?レオンは貴様の10倍は上だ」
「元帥閣下失礼しました!」
私は元帥に接近をした。軍部の支持を得る。
これは何か起きる予感がする。
そして、王太子の軍が破れ捕虜になった報が届く・・・莫大な身代金が必要だ。
エレクシアから手紙が来た。
第二王子の擁立の策である。
「父上、エレクシアが・・・こんな策を、前は真面目なだけでこのような策は出来ませんでした。これが出来たら婚約破棄の場で泣く失態は犯さなかったのに」
「馬鹿者、女だ。女が強くなるときは二つある。母になった時、もう一つは男を愛した時、女は愛する男のためにオーガをも倒すのだ」
「えっ、母上も?」
「怒らせたら怖いぞ」
エレクシアの策を採用し。第二王子派にも接近し取引をした。王を幽閉し退位させ。
国内外に向け。ゲオハルト殿下の廃嫡と第二王子の即位を宣言した。
さて、どうする?ヨルグよ。
戦勝記念パーティに招待した。彼は結婚の許可を求めて来た。
「公爵閣下にいたしましては、盛大に許可を・・・いえ、結婚をお許し下さい!」
「お父様、よろしくお願いしますわ!」
エレクシアよ。良い面構えになったな。24歳の娘だ。リボンをつけて贈ろう。だが、力量を試す。
「うむ。許可を出したいが、今、デルタ王国への身代金問題で頭を悩ませている。それが解決するまでは考えられない。何か良い策はないか?」
王太子とハンナと貴公子達の身代金問題。これは難しい・・・見捨てれば各国から冷たい国と言われる。かと言って言われるまま元王太子達の身代金を払えば侮られる。
「ありません!」
即答かよ。優柔不断だとばかり思っていたが・・・ありふれたことを言いよった。
話会いだ。
「話し合いましょう。向こうの責任者と話すのです」
「うむ・・・」
エレクシアが手紙を書き。話会いの場を設けようとしたら・・・・・
「やあ、ヨルグ、息災か?初見の方々にご挨拶をする。私はデルタ王国特明大使、レオン・バイカーだ。子爵位を賜っている」
・・・レオンが来た。鼻曲がりだ。すぐに分かった。数週間だから、即旅立ったのだろう。
「ヒィ!レオン閣下!何故?」
「ヨルグよ。話し合うまでもないことだ。あの馬鹿王子と馬鹿妃、ノース王国に返したら何かと不都合ではないか?故に我国で飼っても良い」
「あれだけ手柄を立てたのに・・・子爵ですか?」
「そうだ。子爵が丁度良い。動きやすいからな。ヨルグも人のことを言えないではないか?」
「そりゃ・・・勝ってはおりませんから。褒賞は感状を頂きました。1階級特進です」
「何を言う。我が生涯で唯一の負けは貴殿だ。これから先は負ける気はないがな」
正反対の二人だが、まるで長年の友人のように語り合いを始めた。
私の出る幕はない。
結果は・・・
ゲオハルトとハンナは両国の友情の証として無償で返還。
他の貴公子たちは、私戦故、身代金は各家門が払う事に落ち着いた。
ヨルグ曰く。
「何だか。今、王権は安泰です。僭越ながら私が陛下を支持しているからです。しかし、兄、旧王太子という緊張感があればなと思いまして・・・」
「ふむ。そうか、敵がいなくなると成長が止る。故に返還か。しかし、あの男、私に仕えると言っていた。節操のない奴だぞ」
「大丈夫でしょう。陛下は聡明な方です」
「分かった。結婚式に会おう」
ヨルグはレオン滞在中に結婚式をあげた。もちろん、レオンは招待するためだ。
「私は陛下の乳母と結婚することになった。その際、招待させて頂く。細君と来て頂きたい」
「はい、是非、エレクシア様も喜ぶと思います」
「あなた、様は余計ですわ」
その後、ゲオハルト元王太子殿下は、宮中伯の位を賜り。弟だった陛下と政争をしようとしているが、陛下はあしらっている。
「私はレオンと戦った勇者だ。レオンも私を褒めていた!」
「そうよ。ゲオハルトはレオンの前でも毅然としていたのだからもっと良い役職を寄越しなさい」
「兄上、公式記録がありますが、炊事夫として逃げようとしたとか。義姉上は看護婦と偽ったとか」
「それは嘘だ!」
「そうよ!ヨルグの嘘だわ」
「なら、レオン殿を呼びましょうか?ヨルグが招待すればすぐに来るでしょう」
「「ヒィ」」
この後、ノース王国とデルタ王国は蜜月関係にあると各国は認識した。
事実上の軍事同盟だ。
私は孫にも恵まれて・・・余生は楽しく過ごした。ヨルグは将軍のままだ。
元帥にはならない。元帥には元帥の資質があるそうだ。まあ、自分には威厳がないと思っているようだ。
私は家族、孫に囲まれながら女神様の身許に旅だった。
「義父上!」
「父上・・」
「お父様!」
「「「お祖父様!」」」
「ジィジ?ネンネ?」
「ミシリー、お祖父様は女神様の身許に行かれたのよ」
「うん・・・」
・・・・その後、レオンは軍学校の校長に就任。ヨルグは宰相府の副官になった。どちらも軍の一戦から退いた。
それを見越してか。デルタ王国、ノース王国を侵犯する国があった。
皇帝を自称する新興国家カロリア王朝であった。
「ア~ハハハ!勝った!噂に聞こえたデルタ王国もたいしたことはない。敗走しているではないか?これならノース王国も簡単だ。女将軍ミシリーとやらを拝みたいものだな。
昼は床を磨かせて、夜は余の上で踊らせてやるぞ!」
「ご相伴にあずかりたいですな」
首脳部が祝杯を挙げている最中、喧噪が響いて来た。
「何だ。喧嘩か?」
「陛下!敵襲であります。騎兵多数!背後から!」
「馬鹿な!」
「陛下!ノース王国軍ミシリー将軍の旗です!」
「何?軍を引き返せよ!ここは護衛軍しかいない」
「御意!」
しかし、突出した軍を引き返させたことで。
「陛下・・・デルタ王国軍が反転攻勢を開始しました。挟み撃ちです!」
「陛下!・・・もう持ちません。お覚悟を!」
挟撃されることになった。
「な、何だ。優勢だったのに、たった30分で何をされているか分からない・・」
自称皇帝パメロは捕虜になった。
縛られたパメロの前に赤茶髪の女将校がやってきた。ヨルグの末娘、ミシリーである。
甲冑を身につけているが、令嬢にしか見えない。彼女はつぶやく。
「あ~、伯父様の領地で、有名な絵師工房があったけど、採算度外視で作品を作ったら、やっぱり赤字、親方すごすぎて誰も止められなかったわ。この軍もそんな感じ?国の規模と軍が合っていない・・・だからほころびを感じた」
「ヒィ、どこから沸いてきた!」
「騎兵で大回りして、輜重隊を蹴散らしてきた感じ?
お父様はアルザ地方防衛の時に都市の防衛軍は徴用しなかったわ。だから、レオン校長は攻めあぐねた。この軍は後方スカスカで輜重隊ぐらいしかいなかったわね」
「卑怯者!」
「お父様は・・・止めたけど、これしか才能ないのよね」
「ミシリー様、デルタ王国より。掃討まで終わったそうです」
「さすが、レオン校長の息子、ピエール様。何だか、お父様の戦術を盗まれた感じだわ。見事な偽装敗走だったわね・・・兵、舌まで出して泣いてなかった?」
「・・・ミシリー様こそ、レオン閣下の戦術盗んでいませんか?」
「だってレオン様の学校に留学をしたのだもの。盛大に赤点取ったけど、実技では主席だったわ。ウフ♡」
「な、何だ!この会話は!?我は負けていない。たまたま上手くいっただけだ!」
「あ~、何だか敗軍の将なのに生意気~、ジル、こいつのヒゲ抜いちゃって」
「了解であります!」
「それが将軍のやることか?!品位がないぞ!」
「あ~、私大佐な感じ?だから大丈夫、額に犬も追加、消えない魔道ペンで書いちゃって」
「それはさすがにヒゲだけにしましょう。何かいけない気がします」
レオンとヨルグの戦術は受け継がれることになった。
永年、この地域は軍事的に安定し経済が発展することになるが、それがデルタ王国、ノース王国で起きた二つの婚約破棄が発端だと云う者もいる。
最後までお読み頂き有難うございました。




