鼻曲がりのレオン視点➁
戦争が始まって4年が経過した。各国は連合軍を編成したが叩き潰した。
現在ノース王国との国境沿いのアルザ地方を攻略だ。ここの占領をもって終戦とする。
「レオン閣下!敵は後退しております!」
我軍を見たら、逃げ出す国の軍もいる。しかし、整然と後退をしている。
逃走ではない。
そうか、小癪だ。戦争が始まってから4年そろそろ我が戦術を真似してくる国が出てきた。
偽装退却からの待ち伏せか。反転攻勢か。
しかし、この作戦は兵の統率が鍵になる。それが分からない多くの将軍は失敗した。偽装退却が敗走になるのだ。
命令書一枚で兵は動かないのだ。
もちろん。この戦術の対策はある。
「敵は偽装退却である。故に二キロ前進し。方陣である」
恐らく、騎馬兵がハエのように湧いてくるのだろう。重装歩兵でガッチリ固めて弓兵で射撃、魔道師がファイヤーボールを放つ。
数時間が経過したが、敵は襲ってこない・・・
「何故だ!」
「敵は本当に退却したようです」
「ふむ・・・」
意味が分からない。
まさか、本気で逃げているだけか?
確信したのは敵を捕捉したときだ。敵は河を背にして布陣していた。
「レオン閣下!敵は河を背に布陣しております!」
「愚かなり!しかし、敵は決死の覚悟だ。兵を無駄にしてもつまらない。故に、鶴翼の陣で半包囲して士気をくじけ!!」
しかし、朝になって敵陣が空だと分かる。朝霧もあり分かったのは九時を回ってからだ。
「な、何だと!馬鹿な!」
「敵は工兵を使い。舟を並べて・・」
「それは良い。敵将の名は?」
「ヨルグ・テイラー、階級は少将です。官吏出身であります」
一個旅団規模に残存兵をまとめ上げたか。
この時、初めて敵将の名を記憶した。今までは記号だったな。将軍、少将・・・
もし、拳闘の試合で渾身の一撃をかわされ続けられたらどうなる?
精神的にも疲労する。
「ウ、ウグ!」
「レオン閣下!」
「たいしたことはない。胃痛だ」
悩ましい敵だ。
都市を攻略しようとすると背後に現れる。
1日以内の距離にいる。
「レオン閣下、敵を捕捉しました!山を背にして布陣しております」
「うむ。どんな小狡い手を使うか分からない。故に裏をかいて夜戦である!」
危険だが、軍をわけて左右から挟み撃ちだ。
しかも、夜だ。これは逃げられまい。
満月だが、雲がチラホラでているか・・・
時々、真っ暗になる。
山間だ。1万の軍は逃げられまい。
「突撃!」
うむ。敵も終わりか。出来たら敵将とお目にかかりたいな。
しかし、嫌な予感がする。・・・うん?
「おい!魔道師!!停戦の発光信号をあげろ!」
「え、何故?ですか?」
「同士討ちだ!!」
まさか・・・・
兵が数百戦死した。
何故だ!何故だ!何故だ!
次の日、検証したら、山には猟師が通るような道があった。
「・・レオン閣下、敵は雲が月を覆った合間に少しずつ移動していたようです」
「布陣したのは全軍ではないようです・・」
敵は弱兵ではない。夢にまで見た強敵だ!
時々、小部隊の小競り合いが生じた。
しかし、敵は我軍を見て逃げ出す。
「ヒィ、レオン軍だ!逃げろ!」
「荷物など放って逃げろ!」
鹵獲した荷から信じられない情報を得た。
「手紙がありました・・・ご覧下さい」
「うむ・・・」
手紙の内容は、連合軍がこの地に十万規模の兵を派遣するだと?
信じられない・・・
「文章官、紋章官、この手紙を精査せよ」
結果は悩ましいものだった。
「この書類は、ダール王国に行政文書に一致しております」
「これはサウス王国で用いられる書式です・・・」
「つまり?」
「「極めて本物に近いものと思われます」」
「偽計と仮定しよう。これを作れるものは如何ほどの人物か?」
「はい、意外と官吏は自分の職務以外の書式や紋章に疎いものです。決済の立場にいる者・・・王佐の教育、王妃教育を受けた者でありましょう」
「現王太子妃ハンナにそのような実力ないと評判ですが・・・もしかして」
「笑止、戦場にそのような者が現れる道理がないな・・・見張りを厳とせよ!」
☆ノース王国軍
一方、この文書はエレクシアの指導によるものであった。
「グスン、グスン、ヨルグ様、出来ましたわ・・」
「有難う。エレクシア様、何故、泣いているの・・ですか?」
「ヨルグ様、お国の役に立てた嬉しさ半分、嘘をついた後ろめたさ半分ですわ」
「申訳ありません。すごく申訳ありません。盛大に申訳ありません!」
・・・・・・・・・・・・
本物を使った偽計かもしれない。イライラするが、兵に情報を開示する。
「諸君、散々痛めつけた諸外国がまた兵を集めるそうだ!どうしたらよい?」
「「「「叩き潰します!」」」
「うむ。故にまずは目の前の敵である!」
もしかして、ヨルグは我軍の弱点を分かっているのか?
いや、分かっているだろう。
「レオン閣下、我に別働隊の許可を頂きたい。敵と同じ行動を取ります!」
「ゲール大佐か・・よかろう。麾下の部隊だけでやれ。決して戦うな」
「了解です。戦わないなんて簡単なことです。敵以上にやってみせます。敵を見失ったら死を賜りましょう!」
そうだ。我軍は人材が育っていない。大規模な別働隊は作れないのだ・・・
ゲールは連隊、三千の兵で向かった。敵は1万だから約3分の1だ。
我軍は3万、ヨルグの軍は1万。自分も出来ると言うことだ。
案の上。
「ザール大佐!敵を見失いました!それどころか。敵に包囲されました!敗走です!」
ゲールはこの後におよんで弁解をする。
「レオン閣下が軍を分けてくれなかったからです。今度は上手くやります!」
「自らの言の責任をとれ。故にゲールは処刑である」
「ヒィ、そんな」
だが、ゲールの死は無駄ではなかった。半年にも及ぶ追いかけっこで落ちていた士気が上がった。
その時だ。
「レオン閣下、新手が現れました!あれは王太子の軍であります」
「王太子妃も確認されました」
そうか、あの偽計はハンナの仕業か。ヨルグは王太子のために時間を引き延ばしたのか?
丁寧に使者が来た。
「平原で決戦をいたそうとのゲオハルト王太子殿下のご意志です!【逃げるな】とのことです」
「・・・・分かった。と伝えてもらおう」
およそ三万から四万か。ヨルグの軍を入れて、五万とみるべきだ。
だが、見るべきものはなかった。半日もかからなかった。ヨルグはいなかった。
王太子の信が篤いのではないのか?副将としていたら厄介だった。
「ヒィ、私は炊事夫だ。身代金はでないぞ!見逃してもらおう!」
「わ、私は看護師よ!見逃してぇ~~~」
「そんな豪華な鎧の炊事夫とドレスの看護師がいるか!」
一目で王太子とその妃と分かった。何だ。このチグハグ感は・・・しかし、これで戦いは終わりだ。
王太子とその妃から莫大な身代金が取れるだろう。
うむ・・丘の上に人がいる。
観戦武官か?
数人の護衛と共に向かった。
そこにいたのは、村の青年のような風体の男と、黒髪でやや目がつり上がっている女だ。
夫婦か。私服だが周りに一個分隊の護衛がいる。
「ウゥ!」
この男を見たら胃が痛くなった。ヨルグか。
「戦いは終わった。レオンだ。観戦武官殿か?」
「は、はい、観戦武官であります!」
馬から下り。礼を尽くした。
「貴殿、デルタ王国軍の戦いはどうだったか?」
「いや、すごい。とてもすごい。盛大にすごいですね」
「そうか、もし、貴殿が戦うとしたらどうする?同じ兵力で戦わなければいけないとしたらだ」
「無理です」
「なら、数倍とする」
「いや~、その、あれですね。別働隊をつくり・・閣下の軍から対処するために軍を分けるように仕向けます」
「うむ。それで?」
「はい、別働隊は逃げまくり閣下の軍から離すように仕向けます。戦力の分散をはかります。閣下の部将は戸惑うでしょう。閣下のいないデルタ軍を個別に相手にするのです」
「どうして、そう思う?」
「はい、閣下の軍は、おそれながら、将は一人のみ。
いえね。領地でいるのですよ。とても高名な絵師の工房があって、親方、すごすぎて弟子が育っていないのですよ。もしかして、レオン閣下もそうなのではないかと。いえ、でも、並の国の将校よりも優秀でしょう!」
そうか、やはり我軍の弱点を分かっていたか。
「では参る。戦後処理があるのでな。そうだ。貴殿、ヨルグ少将にあったら伝えてくれないか?」
「はい!ようございます」
【次は負けないとな】
軍は奥深い・・・・
そうだ。陛下も言葉を話せるようになったご年齢だ。会いに行くか。
やっと胃痛から解放されそうだ。
最後までお読み頂き有難うございました。




