会合
会合の席は、整いすぎていた。
円卓。
距離は均等。
誰もが、同じ高さに座る。
威圧も、へりくだりもない。
だが——主導権は、最初から向こうにある。
ミレイアは、ラザルの隣に座っていた。
ラザルは、表情を崩さない。
いつもの会長の顔。
だが、
ミレイアは知っている。
この沈黙は、
考えている時のものだ。
対面に座るのは、レオニス・ヴァルデン。
前回と同じ、穏やかな笑み。
だが、今日は少しだけ違う。
余裕がある。
その隣に、補佐役の女性。
書類はすでに開かれていた。
「本日は、お時間をいただきありがとうございます」
レオニスが、にこやかに切り出す。
「前回は顔合わせでしたので、本日はより具体的なお話ができればと」
視線が、ミレイアに向く。
「お忙しい中、ご足労いただき感謝します」
ミレイアは、小さく頷いた。
それだけだった。
ラザルが、代わりに口を開く。
「こちらこそ。急な調整にも関わらず、場を用意していただいて」
声は穏やかだ。
探る気配は、ない。
レオニスは、満足そうに頷いた。
「いえいえ。重要な話ですから」
書類が、一枚、机の上を滑る。
「さて」
レオニスは、柔らかい声で続けた。
「改めてになりますが——本機関としては、ミレイア・カレヴァン殿を、ぜひ正式に迎え入れたいと考えております」
“改めて”。
すでに話は付いている、という前提。
環境。
待遇。
権限。
一つずつ、丁寧に読み上げられる。
前回と、ほぼ同じ内容だ。
だが、今日は説明が短い。
確認に近い。
「商会との関係についても、円満な形を想定しております。業務の引き継ぎ期間も、十分に設けるつもりです」
ラザルは、黙って聞いていた。
相槌も、挟まない。
——やはり、話を聞く前提ではない。
そう思いながらも、
顔には出さない。
レオニスは、書類を閉じた。
そして、穏やかに微笑む。
「では」
空気が、ほんの少しだけ締まる。
「改めて確認させてください」
視線が、まっすぐミレイアに向いた。
「ミレイア・カレヴァン殿」
一拍。
「本機関に所属していただく、ということで。よろしかったでしょうか」
その言葉には、
迷いも、保険もない。
すでに決まっていると信じている者の声音だった。
ラザルは、視線を動かさない。
ただ、隣に座るミレイアの気配だけを感じている。
——本当に、行くつもりなのか。
——ここで、差し出すのか。
胸の奥で、何かが軋む。
だが、
商人は、それを顔に出さない。
沈黙が、落ちる。
ミレイアは、
しばらく何も言わなかった。
視線は、机の上。
書類でも、相手でもない。
自分の指先。
静かに、組まれている。
そして。
顔を、上げた。
その目に、
迷いはなかった。
「私は——」




