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■ Ep.94 第55.5話:幕間【証拠隠滅】~屋上はただの老朽化です~

【第55.5話(Ep.94):まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回(Ep.93)は、冥府の女神ヘカテーを味方につけたクラウディア様が、戦場を鮮やかに焼き尽くし、見事に「黒の使徒」を撃退しました。……が、勝った後の景色はまさに地獄。 屋上はクレーターだらけ、貯水タンクは鉄屑の山、フェンスは飴細工。これ、どう見ても「ちょっとした生徒同士の喧嘩」で済むレベルじゃありません。

今回の第55.5話は、戦闘よりも胃が痛くなる**「戦後処理(隠蔽工作)」編です。カンニング・AIが弾き出した修繕費は、驚愕の金貨800枚**。払えなければ退学、バレれば聖教会の異端審問という、コタロウ史上最大のピンチが訪れます。

新登場の精霊「パティ」による超特急の「張りぼて工法」と、コタロウが極限状態で編み出した**「Sクラス級の猫真似」**は必見。 英雄が泥と漆喰にまみれて這い回る、不届き極まる「サボりのための防衛戦」をぜひお楽しみください!



【Ep.94 第55.5話:本文】

1. 祭りの後の惨状と、請求書の足音


「……これ、どうすんの?」


深夜の屋上。

修羅場(ヒロインたちの乱入)が一段落し、なんとか彼女たちを「下で待っててくれ、着替えてから行く!」と必死に説得して追い返した後。

俺、神木コタロウは、月明かりに照らされた惨状を見渡して、頭を抱えていた。


そこは、もはや屋上ではなかった。

神話級の災害ディザスターが通り過ぎた跡地だった。


コンクリートの床は、黒の使徒の大剣による衝撃でクレーターだらけ。

さらに、クラウディア(ヘカテー)の放った冥府の炎によって、あちこちがドロドロに溶解し、黒く焦げ付いている。

フェンスはひしゃげて飴細工のようになり、一部は完全に消失している。


極めつけは、屋上のシンボルでもあった貯水タンクだ。

黒の使徒の鎧が激突した衝撃で「粉砕」され、見る影もない鉄くずの山となり、そこから漏れ出した水が屋上全体を水没させていた。


「これ……学園側にバレたら、どうなると思う?」


『試算します』

脳内のカンニング・**【AI】**が、冷徹な死の宣告(見積もり)を突きつけてくる。


『修繕費:金貨500枚。

設備損害賠償:金貨300枚。

さらに「無許可での施設破壊」および「危険行為」による退学処分の確率:98.5%。

なお、現場に残る「冥府の炎」の残留魔力が検出された場合、聖教会による異端審問コースが確定します』


「(異端審問は勘弁してくれ! アリスに殺される!)」


精霊学部の喫茶店がいくら繁盛しても、金貨800枚なんて払えるわけがない。

リリスが泡を吹いて倒れ、クラウディアの実家(公爵家)に泣きつく未来しか見えない。

だが、そんなことをすれば「パトロン」としての彼女の顔に泥を塗るし、何より俺の「平穏な学園生活」が終わる。


「(おい、カンニング・【AI】! 何か手はないのか!? この惨状を、夜明けまでになんとか誤魔化す方法は!)」


俺は縋るように脳内で問いかけた。

**【AI】**は一瞬の沈黙の後、最適解を提示した。


『提案:物理的な修復は不可能です。

しかし、「外見上の偽装」を行い、損壊原因を「老朽化」へとすり替えることは可能です。

推奨精霊:補修の精霊**【パティ】**』


「(パティか! なるほど、あいつなら見た目を誤魔化すのは得意だ。 ……でも待てよ。俺の魔力はすっからかんだぞ? 召喚コストはどうする?)」


スキッドの召喚と維持で、バトンのエネルギーは使い切ったはずだ。

だが、**【AI】**は涼しい顔(音声)で答えた。


『問題ありません。

先ほどの戦闘中、直下のキャンプファイヤーと生徒たちの熱狂からチャージしたエネルギーに、まだ若干の「残留分」があります。

戦闘用としては不足ですが、工作用精霊の維持程度なら十分に賄えます』


「(マジか! みんなの青春パワー、まだ残ってたのか! サンキュー、フォークダンスのリア充ども! お前らの熱気で俺は退学を免れる!)」


俺はブラック・バトンを握りしめた。

まだ微かに温かい。祭りの余韻が、俺を助けてくれる。


「やるぞ! 夜が明けて、用務員の爺さんが見回りに来るまでの残り4時間。

この神話大戦の跡地を、『ただの老朽化した屋上』に偽装する!」


2. 補修の精霊【パティ】


「出てこい! 補修の精霊**【パティ】**!」


俺が呼び出したのは、漆喰と粘土でできた、左官職人のような姿をした精霊だった。

頭にはねじり鉢巻、手にはコテを持っている。


『オウ! お呼びでやすか、親方! ……へぇ、こりゃまた派手にやらかしましたねぇ! 焦げ臭ぇのなんのって!』


「パティ、時間がない。この惨状を『見た目だけ』元通りにしろ。

強度はどうでもいい。誰かが見た時に『ああ、ボロいけど壊れてないな』と思えれば合格だ」


『了解でやす! 中身スカスカの「張りぼて工法」でいきやしょう!』


パティが自身の体を泥のように変化させ、クレーターの穴に飛び込んでいく。

彼(?)は驚異的な速度でコンクリートの亀裂を埋め、表面を均していく。

ヘカテーの炎で焦げた部分は、上から「コケ色の塗料」を塗って、「長年の雨風で汚れただけ」に見えるようにエイジング加工を施す。


「よし、次はフェンスだ! 【金属操作メタル・シェイプ】!」


俺はバトンの先端から磁力波を出し、ひしゃげたフェンスを無理やり引き伸ばして元の形に戻す。

足りない部分は、パティに「金属風の塗装」をさせて誤魔化す。


「貯水タンクはどうする!? 粉々だぞ! パズルにもなりゃしない!」


『提案。残骸を外側に貼り付け、内側から「風属性魔法」で膨らませた風船で支える構造にしましょう』


「採用!」


俺たちは瓦礫の山から鉄板を拾い集め、立体パズルに挑んだ。

中身は空っぽ。水など一滴も入らない。

だが、外見だけは立派な貯水タンクが、月夜の下に再建されていく。


3. 用務員との攻防


「ふぅ……。なんとか形になったか……?」


作業開始から3時間。

俺とパティは、泥と油まみれになって肩で息をしていた。

屋上は、一見すると「少し古びただけの普通の屋上」に戻っていた。

よく見ればツギハギだらけだし、タンクは傾いているが、遠目には誤魔化せるレベルだ。


カチャリ。


その時、屋上のドアノブが回る音がした。 心臓が止まりそうになる。


「んー? 誰かいるのかー?」


懐中電灯を持った用務員の爺さんだ! 見回りの時間が早すぎる!


「(ヤバイ! 今見られたら、まだ乾いてないパティ(精霊)が動いてるのがバレる!)」


『マスター! パティを解除すれば、タンクが崩壊します!』


絶体絶命。

俺はとっさに、ブラック・バトンを「拡声器モード」に変え、物陰から声を張り上げた。

第54話で磨いた音響操作スキルの出番だ。


「『ニャ~~~ン……』」


「……ん?」 用務員の爺さんが動きを止める。


「『ナァ~オ……ゴロゴロ……』」


俺は必死に、野良猫の発情期の鳴き声を模写した。

Sクラス級の身体能力と、音響操作魔法をフル活用した、渾身の猫真似だ。

カンニング・**【AI】**が『猫の鳴き声波長:適合率99.9%』と表示するほどの完成度だ。


「なんだ、猫か。 ……ったく、恋の季節かねぇ。こんな屋上で盛り上がりおって」


爺さんは呆れたように呟くと、ドアを閉めて去っていった。

ガチャリ、と鍵がかかる音が遠ざかる。


「…………助かった」


俺はその場に崩れ落ちた。

女神ヘカテーや黒の使徒との戦いよりも、今の数秒間の方が寿命が縮んだ気がする。


4. 翌朝の風景


翌朝。 学園祭二日目の朝。

登校してきた生徒たちが、何気なく屋上を見上げる。


「あれ? なんか屋上のタンク、形変わってない? 傾いてるような……」


「えー? そう? 昔からあんなオンボロだっただろ」


「あ、鳩が止まったら凹んだぞ!?」


「気のせいだろ。見間違い見間違い」


俺の完璧な(?)隠蔽工作により、屋上の崩壊は「建物の老朽化」として処理された。

後日、学園側が「老朽化によるタンクの自然損壊」として修理業者を呼ぶことになるが、それは俺の知ったことではない。

少なくとも、退学と莫大な賠償金、および異端審問は免れたのだ。


「……ふあぁ。眠い」


俺は目の下にクマを作りながら、精霊学部の喫茶店へと向かった。

今日からは学園祭後半戦。そして夜には、あの「仮面舞踏会」が待っている。

平穏な日々は、まだまだ遠い。


(第55.5話 完)

【第55.5話(Ep.94):あとがき】

お読みいただきありがとうございました!

「ニャ~~~ン……」……まさか、あの「黒の使徒」を圧倒した神木コタロウが、用務員の爺さん一人を欺くために本気で猫になりきるとは誰が予想したでしょうか。


今回のハイライトを振り返ると:


補修の精霊パティ: ねじり鉢巻にコテという、精霊界の「現場担当」。中身スカスカの「張りぼて工法」で神話大戦の跡を隠蔽するその手腕、まさに職人芸でした。


青春パワーの有効活用: キャンプファイヤーの熱気を「接着剤」代わりにするという発想。青春を最後まで使い倒すコタロウの徹底ぶりには、AIも(心なしか)呆れていたようです。


驚異の猫真似スキル: 音響操作魔法を「発情期の猫」の再現に全振り。AIの適合率99.9%という無駄な高精度が、彼の退学を救いました。


なんとか夜明けまでに「見た目だけ」は元通りにした屋上。

鳩が止まるだけで凹む貯水タンクという爆弾を抱えつつも、コタロウの「平穏」は首の皮一枚で繋がりました。……次は、いよいよ華やかな舞台が待っています。


【次回予告】

第56話(Ep.95):『仮面舞踏会のワルツ:踊らされるのは誰だ』

学園祭はいよいよ後半戦へ。

着慣れない礼服に身を包んだコタロウを待ち受けるのは、ヒロインたちとの華麗なダンス……ではなく、さらなる修羅場の予感。

仮面の下で微笑むのは、果たして誰でしょうか?


次回もよろしくお願いします!


【作者からのお願い】

物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると嬉しいです。

皆様の評価が、パティの「エイジング加工(汚れ塗装)」のリアリティと、コタロウが次に披露するかもしれない「別の動物の鳴き声」の習得スピードに直結します!

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