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■ Ep.80 第49話:エピローグ:英雄の代償と、新たな敵の影

【第49話(Ep.80):まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!


前回、第48.5話(Ep.79)では、王都中を駆け巡った号外新聞によって、コタロウが勝手に「老成した賢者」へと仕立て上げられてしまいました。挙句の果てには、公爵令嬢クラウディア様との「婚約の噂」まで流される始末。布団の中に逃げ込んだコタロウでしたが、世間は彼を放っておいてはくれません。


今回の第49話は、オリンピア編の最終報告。

戦場よりも恐ろしい(?)「学園長室」への呼び出しです。

優勝の恩賞か、それともコロシアム破壊の責任追及か? 狸(学園長)や狐(副学園長)が手薬煉引いて待つ部屋で、Fランクの指揮者が突きつけられる「新たな査定」と、アヤネを狙う聖教会の影。


「目立たずサボる」というコタロウの夢が、権力の荒波に揉まれてさらに遠のいていく様子をお楽しみください!

【Ep.80 第49話:本文】

1. 学園長室での報告会

王立精霊学園、最上階。

重厚な扉の奥にある学園長室に、今回の「魔法オリンピア」に関わった主要メンバーが集まっていた。


部屋の中央にある巨大な円卓。

上座には、柔和な笑みを浮かべつつも目は笑っていないオスモンド学園長。

その左右には、学園の重鎮たちが顔を揃えている。


右側には、副学園長兼・政経占星術学部長のマグダ・フォン・ローゼンバーグ。

左側には、精霊学部長のヴォルコット。

さらに、錬金学部長(アイザックの師匠)と、治癒・生活魔法学部長(ソフィアの師匠)も同席している。


そして、彼らの前に立たされているのが、包帯だらけの俺たち優勝チームだ。


「……まずは、優勝おめでとう。諸君」


オスモンド学園長が口火を切った。

「帝国の竜騎士団を相手に、まさか完全勝利を収めるとはね。 正直、私も予想外だったよ。 おかげで、我が学園の株価はストップ高だ。理事会も大喜びしている」


「光栄です、学園長」


俺、神木コタロウは、代表として一礼した。

隣では、アヤネが緊張で固まり、モモが退屈そうにあくびを噛み殺している。


「フン。 結果は認めよう」


冷ややかな声を発したのは、副学園長のマグダだ。

彼女はモノクルの位置を直しながら、鋭い視線を俺に向けた。


「だが、そのプロセスには問題が多すぎる。 コロシアムの地下封印を解除し、古代兵器を暴走させ、精霊界から高額請求書を送りつけられる……。 優勝賞金が相殺されたとはいえ、学園の修繕費はどうするつもりだ?」


「それは……必要経費ということで……」

俺が言葉を濁すと、ヴォルコット学部長がバン! と机を叩いた。


「細かいことは気にするな、マグダ君! 重要なのは**『パッション』**だ! 彼らは世界に見せつけたのだよ! 王国の魂を! 精霊たちとの熱いセッション(マナ・ビュッフェ)を!」


ヴォルコットの暑苦しい援護射撃に、他の学部長たちも頷く。


「ヒヒッ! アイザック君が回収した帝国の装甲サンプル、あれは貴重なデータだ。錬金学部としては大満足だよ」


「……不潔な戦場でしたが、ソフィア君の防疫活動は完璧でした。治癒学部としても評価に値します」


どうやら、学部長クラスの評価は上々のようだ。

俺は胸を撫で下ろした。 これで、退学や処分の危機は免れただろう。


2. 聖教会の動きと、伏線回収

だが、オスモンド学園長の表情が、ふと真剣なものに変わった。

彼は懐から、一枚の書状を取り出した。 金色の箔押し。十字架の紋章。

それは、第37.5話でヴォルコットに見せられた**「聖教会からの書状」**と同じものだった。


「……コタロウ君。 君も覚えているね? この大会前、聖教会がアヤネ君の身柄引き渡しを要求してきたことを」


「はい。 ……今回の優勝で、その話は白紙になったはずですが」


俺はアヤネを庇うように一歩前に出た。 第37.5話でのヴォルコットとの密約。

『優勝して国民的英雄になれば、教会も手出しできなくなる』。

そのために、俺は必死で戦ったのだ。


「ああ、その通りだ」 オスモンドは頷いた。

「アヤネ君は今や『王国の守護聖女』として、国民から熱狂的な支持を受けている。 教会も、世論を敵に回してまで彼女を幽閉することはできないだろう。 ……少なくとも、表向きはね」


「表向き?」


「教会は引き渡しを諦めたわけではない。 戦術を変えてきたのだよ。 彼らは今、アヤネ君を**『名誉聖女』**として祭り上げ、教会行事に頻繁に参加させることで、実質的に取り込もうとしている」


オスモンドは苦い顔をした。

「および、もう一つ。 彼らは君にも目をつけた。 『異端の指揮者』神木コタロウ。 魔法を使わず、精霊と竜を従える君の力……。 教会の一部過激派は、君を『魔王の器』ではないかと疑っている」


「……魔王?」 俺は呆れた。 「ただのFランクですよ。 マナもほとんどない」


「だからこそ不気味なのだよ。 君の持つ**『解析能力』……いや、ヴォルコット君が報告してくれた『禁忌スキル』**。 それがバレれば、君は異端審問にかけられる」


俺の背筋が凍った。 ヴォルコットとの密約は、まだ有効だ。

俺の正体がバレないよう、学園側が隠蔽してくれるはずだが……。


「安心してくれ。 学園としては、君たちを全力で守るつもりだ」

オスモンドはニヤリと笑った。

「君たちはもう、学園にとって『手放せない資産(ドル箱)』だからね。 教会だろうが国だろうが、私の生徒に手出しはさせんよ」


その言葉は頼もしかったが、同時に「お前たちは逃がさない」という鎖のようにも聞こえた。


3. 新たな火種:公爵令嬢の野望

報告会が終わり、俺たちが部屋を出ようとした時。

マグダ副学園長が、俺だけを呼び止めた。


「神木コタロウ。 貴様に一つ、忠告しておこう」


「なんでしょう?」


「貴様、最近クラウディアと親しいそうだな」


マグダの目が細められた。 クラウディア・フォン・ルミナス。

Sクラス筆頭にして、マグダが学部長を務める「政経占星術学部」のエース。

および、俺をつけ狙うストーカー公爵令嬢だ。


「親しいというか……一方的に絡まれているだけです」


「フン。 ならば良いが。 彼女は優秀だが、野心が強すぎる。 ルミナス公爵家は、王家をも凌ぐ権力を持とうとしている危険な一族だ」


マグダは声を潜めた。

「彼女は今、秋の**『学園祭』**に向けて、何か大きな『計画』を練っている。 その中心に、貴様がいるという噂だ。 ……食われるなよ。 あの娘の愛は、毒よりも重いぞ」


「……肝に銘じておきます」


俺は冷や汗を拭いながら退室した。

教会の次は公爵家か。 俺の周りには、地雷原しか広がっていないらしい。


4. エピローグ:英雄の帰還と、日常への渇望

学園長室を出ると、廊下にはアヤネたちが待っていた。


「コタロウくん! 終わりましたか? 早く寮に戻って、パーティーの続きをしましょう!」

アヤネが無邪気に笑う。


「おう! 腹減ったぞ! 早く肉!」

モモが俺の袖を引っ張る。


「ヒヒッ! ボクの研究室で二次会だネ!」


「……不潔な廊下での会話は推奨しません」


こいつらは、自分たちが置かれている危うい立場を理解しているのかいないのか。

教会の監視、異端審問のリスク、公爵令嬢の罠。 問題は山積みだ。


だが、彼女たちの笑顔を見ていると、不思議と恐怖は薄らいだ。


「(……ま、なんとかなるか)」


俺は肩をすくめた。 Fランクの俺が、ここまで生き残れたのだ。

これからも、この頼もしい(そして手のかかる)仲間たちと、最強の**「カンニング・【AI】(相棒)」**がいれば、どんな無理ゲーでも攻略できるだろう。


「ああ、帰ろうぜ。 ……とりあえず、俺は三日間くらい寝るからな」


「えーっ! ダメですぅ! 明日は取材が入ってますよ!」


「取材? 食えるのか?」


騒がしい声を響かせながら、俺たちは夕暮れの廊下を歩いていった。

英雄になっても、俺たちの日常は変わらない。

ただ、少しだけ忙しく、少しだけ危険になっただけだ。


俺のポケットの中で、スタイラス・ワンド(重力核内蔵)が微かに震え、エンシェント・コアが静かに眠っている。

および、影の中ではネロがクスクスと笑っている。


俺の「平穏なサボりライフ」を取り戻す戦いは、まだ始まったばかりだ。


(第49話 完)

【第49話(Ep.80):あとがき】

お読みいただきありがとうございました!

「お前たちは手放せない資産(ドル箱)だ」……。学園長の笑顔が、どの敵よりも邪悪に見えたのは私だけでしょうか。英雄になった代償は、学園という名の「檻」への拘束だったようです。


今回のハイライトを振り返ると:


学園長室の攻防: 責任追及を「パッション」で押し通すヴォルコット先生、安定の暑苦しさです。


教会の新戦略: 「名誉聖女」という名の囲い込み。そしてコタロウにかけられた「魔王の器」という物騒な嫌疑。


マグダの忠告: クラウディア様の愛は毒より重い。次なる舞台、秋の「学園祭」に向けて不穏な火種が撒かれました。


人間たちの泥臭い権力争いが続く一方で、空のさらに上――精霊界では、今回の大会を巡る「もう一つのシビアな数字」が飛び交っていました。


【次回予告】 第49.5話(Ep.81)幕間:『決算発表会、始まる:コタロウ・バブルと、不法投棄された危険物』

次は、精霊界ホールディングスの決算報告会!

コタロウが撒き散らしたマナのおかげで過去最高益を叩き出した精霊王たち。しかし、彼の巾着袋に入っている「あの石」が、精霊界をも巻き込む経営リスク(ブラックホール)として議題に上がります。


次回もよろしくお願いします!


【作者からのお願い】

物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると嬉しいです。

皆様の応援が、コタロウの胃薬代と、セフィラ先生が書く膨大な始末書のペン先を支える力になります!

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