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■ Ep.71 第43話:準決勝:獣の誇りと、野生の呼び声

【第43話:まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!


前回(Ep.69-70)は、新聞部による「水着回特別号外」で王都中がお祭り騒ぎとなりました。アイザックとソフィアが禁じ手(環境破壊)を使いすぎて運営から新ルールを叩きつけられましたが、我らが王立精霊学園チームの進撃は止まりません。


今回の第43話は、魔法オリンピア準決勝。

舞台は一転、湿気と殺気が渦巻く**「巨大密林(ジャングル)」**です。


対戦相手は、力こそが正義の戦闘集団「獣人連合」。前衛アタッカー・モモにとっては、自分を「落ちこぼれ」として捨てた過去の因縁――「牙の王」ヴォルフガングとの対決でもあります。


連戦で魔力が枯渇しかけているアヤネたちを、コタロウがどうやって「現場調達(カツアゲ)」して再駆動させるのか? そして、恐怖に震える野獣の心に火をつける「究極の燃料」とは……?

ヤンキー精霊シップウと送る、爆速のジャングル・クルーズをお楽しみください!

【Ep.71(第43話):本文】

準決勝の出場選手:ソフィア・アイザック・モモ・アヤネ

1. 密林の狩猟場と、やる気のないヤンキー

『魔法オリンピア・バトルトーナメント、準決勝!! いよいよベスト4の激突です! ここを勝てば、明日の決勝戦への切符を手にします!』


熱気に包まれるコロシアム。

今回のフィールドは、熱帯の植物が鬱蒼と茂る**「巨大密林(ジャングル)」**。

視界は悪く、足場はぬかるみ、湿度は不快なほど高い。


対戦相手は、南の大陸を統べる戦闘種族の集団――「獣人連合」。

その待機エリアから放たれる殺気は、これまでとは桁が違っていた。


「……不潔です。湿度90%、気温35度。カビと腐敗菌の温床です」

ソフィアが嫌悪感を露わにし、足元に殺菌パウダーを撒き散らしている。


「ヒヒッ! 生体反応多数! 赤外線センサーも湿気で誤作動するネ」

アイザックがゴーグルを叩いている。


俺、神木コタロウは、この劣悪な環境を打開するため、ポケットから**【自律回転式魔導ペン(スタイラス・ワンド)】**を取り出した。


「(【AI】、このジャングルを有利にするには?)」


【AI:回答。現地の精霊を味方につけ、フィールド効果(地形補正)を書き換えるのが最適解です】


「よし、やるか。 ……出てこい、精霊たち!」


俺がワンドを振ると、ジャングルの湿った空気の中から、3体の精霊が実体化した。

その中の一体、風の精霊は、見覚えのあるリーゼントヘアーをしていた。


【風の精霊(ヤンキーVer.):シップウ】


容姿: 風で固めたリーゼント、マナでできたサングラス。第30話でモモとマブダチになった暴走族精霊。


特徴: 「型にハマった優等生」が大嫌い。モモとは気が合う。


『あぁん? 呼んだか大将(マスター)。 ……チッ、なんだよこの湿気た場所は。風がベタついて単車(気流)が走らねぇぞ』


シップウは不機嫌そうにタン(水蒸気)を吐いた。


「頼むぞシップウ! このジャングルを俺たちの庭に変えてくれ!」


俺が頼むと、シップウはサングラス越しにジロリと俺を見た。

『ケッ! タダ働きは嫌だぜ? このジメジメした空気、吹き飛ばすには相当な**「高純度マナ(賄賂)」**が必要なんだけどよぉ?』


「(……やっぱりそう来るか)」

俺はニヤリと笑い、後ろにいるアヤネたちを親指で指した。


「安心しろ。 **『極上のハイオク燃料』**ならそこにある」


2. 魔力徴収システム・ジャングルVer.

「えっ? コタロウくん、またですかぁ!?」

アヤネが嫌な予感に後ずさる。


「悪いなアヤネ、ソフィア、アイザック! 昨日のプールと同じだ! お前らの魔力で精霊を雇う! スタイラス・ワンド、記述開始(ライティング)! 【強制同期リンク】!!」


俺がワンドを振ると、透明なマナのチューブがアヤネたちに接続された。


『ヒャッハー! いただきまーす!』

シップウたちが歓喜の声を上げる。


「きゃぁぁっ! また吸われてますぅぅ!」


「……不潔です! 私のマナを勝手に!」


「ヒヒッ! エネルギー保存の法則が乱れるヨ!」


アヤネたちから吸い上げられた魔力が、シップウたちに注ぎ込まれる。

パワーを得た精霊たちが、一斉に動き出した。


『オラオラオラァ! 湿気ども、道を開けや!』(シップウ)


『土よ固まれ! ぬかるみを舗装道路に変えるぞ!』(クレイ)


『木々よ、どけ! 敵の視界だけを遮れ!』(リーフ)


ゴゴゴゴ……!

ジャングルの環境が激変する。

湿気は吹き飛び、地面はコンクリートのように固まり、木々は俺たちを守るバリケードとなった。


「よし、舞台は整った! ……あとはお前だけだぞ、モモ!」


俺は前衛に立つモモを見た。

彼女の両腕には、黒く鈍い光を放つ**【幻影の篭手(ファントム・ガントレット)】**が装着されている。

だが、その背中は震えていた。


3. 牙の王 vs 怯える猫

ジャングルの奥から、巨体が現れた。

身長2メートルを超える巨大な狼の獣人(ワーウルフ)、ヴォルフガング。

モモのトラウマである「牙の王」だ。


「……ヴォルフガング……」

モモの耳が伏せられ、尻尾が丸まる。


「久しぶりだな、モモ。 人間に首輪をつけられ、腑抜けた顔をしおって」

ヴォルフガングが嘲笑う。

「我ら『獣の誇り』の前に、貴様の軟弱な爪が届くかな?」


ガギィィィンッ!!!


戦闘が始まった。

しかし、モモの動きは鈍い。シップウが追い風を送っても、肝心のモモ自身が恐怖で縮こまっている。


「遅い! 軽い!」

ドゴォォン!

モモが吹き飛ばされ、巨木に叩きつけられる。

ガントレットの光学迷彩機能も、メンタルが弱っているせいでノイズが走り、うまく作動していない。


『あちゃー。あの子、ビビって足がすくんでるよ』

シップウがアヤネの肩(給油口)に乗りながら、つまらなそうに言う。

『俺様がいくら風を送っても、本人が走らなきゃ意味ないじゃん。これじゃ幻影(マボロシ)も見せられねぇよ』


「……分かってる。 あいつに必要なのは、風じゃなくて『火』だ。 心に火をつける燃料だ」


俺はワンドをマイク代わりに握りしめた。


4. ステーキによる覚醒

『おいモモ! さっさと勝って帰ってこい! 今日の夕飯は、王都限定「特上サーロインステーキ(300g)」だぞ!』


俺の叫び声が響いた瞬間。

モモの瞳から恐怖が消え、「食欲」という名の野性の火が灯った。


「……サーロイン……300グラム……」

モモが立ち上がる。その口元にはよだれと、獰猛な笑みが浮かんでいた。

「……いただくぜ、その肉!」


モモの全身から赤い闘気が立ち上る。

それに呼応して、ガントレットの回路が赤く発光し始めた。


「よし! 今だシップウ! モモに憑依しろ! あいつの闘気を全部吸って、**『音速の特攻服』**になれ!」


『了解! 美味しそうな闘気だねぇ! 夜露死苦ゥ!!』

シップウがアヤネから離れ、覚醒したモモへと飛び移った。


5. スタイラス・ワンドとシップウの合体

『乗ったぜ姉ちゃん! アクセル全開で行こうぜ!』

シップウがモモの肩に張り付き、エメラルドグリーンの光のオーラ(特攻服のような形)へと変化した。

モモの溢れ出る闘気を燃料にして、シップウが超加速の風を纏う。


「クレイ、滑走路を作れ! リーフ、邪魔な枝をどけろ!」

『おうよ!』『はいっ……』


地面が隆起し、真っ直ぐな一本道ができる。

木々がさっと道を開ける。


そして、俺はワンドを天に掲げた。


「【AI】、同期開始! モード:【航空力学演算(エアロ・ダイナミクス)】。 ターゲット:モモとシップウ。 風の抵抗を『ゼロ』にするルートを計算しろ!」


シュルルルルルッ……!

ワンドが高速回転し、青白いレーザーガイドをモモの前方に投影する。


『見えた! 風の隙間! ぶっ飛ばせぇぇぇッ! 姉ちゃん!』

シップウが叫び、爆発的な追い風を叩き込む。


「うぉぉぉぉぉッ!! ハンバーグゥゥゥ!!」

モモが地面を蹴った。


6. 奥義:ソニック・ファントム(精霊加速Ver.)

「小賢しい!」

ヴォルフガングが迎撃の構えを取る。

「正面から来るか! 力でねじ伏せてやる!」


だが、次の瞬間。

モモの姿がブレた。


カシャッ……!

幻影の篭手が作動し、モモの周囲に5体の残像が現れる。

さらに、シップウの風とワンドの整流効果により、そのすべてが実体のような質量を持って迫る。


【超高速制御・音速幻影(ソニック・ファントム)】


「なっ……!? どれが本物だ!?」

ヴォルフガングの動体視力を持ってしても、見分けがつかない。

残像の一つが右から襲いかかる。ヴォルフガングが迎撃するが、爪は空を切る。

「ハズレだぜ、オッサン!」


本物のモモは、既にヴォルフガングの背後に回り込んでいた。

シップウがヴォルフガングの耳元で叫ぶ。

『オラァ! 脇が甘ぇんだよ!』


ザンッ!!!!


交差する閃光。

鋼鉄の毛皮が紙のように切り裂かれ、ヴォルフガングが崩れ落ちた。


「……速い……。風そのものか……」


「へへっ。 風だけじゃねぇよ。 ……みんなの『食欲(サポート)』のおかげだ」


モモはVサインを決めた。

その腕のガントレットは熱を帯びて煙を上げ、肩には満足げなシップウが座っていた。


7. 決着と、枯渇する魔力

『し、試合終了ォォォォッ!!』


歓声の中、俺たちは勝利した。

だが、代償は大きかった。


「……コタロウくん……もう一滴も出ません……」

アヤネがミイラのように干からびている。


「……不潔です。魔力を吸われる感覚、生理的に無理です」

ソフィアもふらふらだ。


俺は熱を持ったワンドを回収し、苦笑した。


『あー美味しかった! また呼んでくれよな、大将!』

シップウたちは、アヤネたちのマナをたっぷりと堪能し、族の集会へ戻るように元気いっぱいに消えていった。


「……悪いなみんな。 今日のステーキは、俺の奢りだ」


俺たちはヨロヨロと退場しながら、明日の決勝戦――帝国の竜騎士団との戦いに不安を覚えるのだった。

これ以上、アヤネたちの魔力が持つだろうか?


(第43話 完)

【第43話:あとがき】

お読みいただきありがとうございました!

「正直者はバカを見る」。コタロウが叩き込んだその教えが、まさか「300gのサーロインステーキ」という形で見事に開花するとは思いませんでした。モモ、本当によく頑張った(食べた)……!


今回のハイライトを振り返ると:


魔力徴収システム・改:プール戦に続き、アヤネたちが完全に「移動式ガソリンスタンド」扱いされています。


ヤンキー精霊の特攻服:シップウとモモの相性が良すぎて、もはや魔法大会というより暴走族の集会に近い絵面になってきました。


ソニック・ファントム:コタロウの物理演算が加わり、モモの速度はついに生物の限界を突破しました。


モモの因縁に決着がつき、残るはいよいよガレリア帝国との決勝戦。

ですが、勝利の美酒に酔いしれる暇はありません。コタロウが放った「銀色の輝き」を、じっと見つめている蛇のような視線に、皆様はお気づきでしょうか?


【次回予告】 第43.5話(Ep.72)幕間:『VIPルームの冷たい紅茶』

次は、豪華な貴賓室で繰り広げられる「コタロウ解析会」。

氷の令嬢クラウディアとヴァルド公爵が、ついにスタイラス・ワンドの「重力干渉」という正体に辿り着きます。そして彼女が取り出した「黒い鍵」が、決勝戦を阿鼻叫喚の地獄へと変えることに……。


次回もよろしくお願いします!


【作者からのお願い】

物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると嬉しいです。

皆様の応援(パッション)が、モモのおかわりステーキの枚数と、アヤネの魔力回復用マカロンの質に直結します!

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