■ Ep.66 第40.5話:幕間【作戦会議】~勝利への数式と、公爵令嬢の優雅な撤退~
【第40.5話:まえがき】
いつもお読みいただきありがとうございます!
前回(第40話)では、アイザックによる「聖火台の核爆弾化」という前代未聞のトラブルを、コタロウと精霊王セレスティアの介入によって、奇跡的に「神の演出」へと昇華させました。王都を蒸発の危機から救い、満身創痍のコタロウですが、休む暇などありません。
今回の第40.5話は、いよいよ始まる「魔法オリンピア」本戦に向けた、深夜の戦略会議。
コタロウの脳内【AI】が弾き出した予測は、どれも絶望的なものばかり。魔法が効かないドワーフ、水中の覇者である人魚、そして空を支配する帝国……。
「サボるためには、まず勝たなきゃならない」
そんな矛盾した目的を果たすため、コタロウが提示する「合理的かつ非情な」メンバー選抜とは? 氷の令嬢クラウディアを絶句させた、アイザック特製の「秘密兵器」にもご注目ください!
【本文】
1. スイートルームの緊急招集
開会式の喧騒が去った、その夜。
王都ルミナスにある最高級ホテル「グランド・ロイヤル」の最上階スイートルームに、王立精霊学園チームの面々が集められていた。
豪華なシャンデリアの下、真剣な表情でテーブルを囲む……わけでもなく、メンバーたちは自由気ままに寛いでいる。
「皆様、お疲れ様ですわ。まずは開会式の『演出』……アヤネ様の輝きを損なわずに切り抜けた手腕だけは、評価して差し上げますわ」
部屋の中央、深紅のソファに優雅に座るクラウディア・フォン・ルミナスが、扇子を広げて言い放った。
彼女の視線はアヤネに向けられる時は慈愛に満ちているが、俺に向けられた瞬間、絶対零度まで冷え込む。
「勘違いしないでくださいね。貴方が優秀だからこの部屋を用意したわけではありませんの。アヤネ様を薄汚いビジネスホテルの硬いベッドで休ませるわけにはいかない……ただそれだけの理由ですわ」
「はいはい、感謝してますよ、お嬢様」
俺は肩をすくめ、テーブルの上に広げられたトーナメント表を指で叩いた。
「くつろいでいる場合じゃないぞ。このトーナメント表を見てくれ。明日から始まる本戦……組み合わせを見る限り、地獄だ」
2. 【AI】による未来予測
「コタロウ君、トーナメントなんだから、2回戦以降の相手は決まってないじゃないか」
肉を頬張りながらモモが首をかしげる。
「ああ。だが、俺の『計算(【AI】)』によれば、勝ち上がってくる相手はほぼ確定している」
俺はワンドを軽く振り、テーブルの上にホログラムの数値を投影した。
カンニング・【AI】が弾き出した、各ブロックの勝率予測データだ。
【カンニング・【AI】 トーナメント予測】
1回戦(確定): ドワーフ鋼鉄国
2回戦(予測): 南方諸島連合(勝率98%) vs 魔法都市連盟(勝率2%)
準決勝(予測): 獣人連合(勝率95%) vs 聖教国(勝率5%)
決勝(予測): ガレリア帝国(勝率99.9%)
「見ての通りだ。ドワーフ、人魚、獣人、そして帝国。これら全てに対応する『最適解』を、今ここで決める」
3. 第1回戦:対ドワーフ(確定)の「化学」シフト
「まずは明日の初戦。ドワーフ鋼鉄国のチーム『アイアン・ウォール』だ」
アイザックが補足データを投影する。
「彼らのミスリル装甲には『対魔導鏡面加工』が施されているヨ。魔法防御力はSSSランク。アヤネ君の光魔法や、クラウディア嬢の氷魔法は反射されるネ」
「……厄介ですわね。私の魔法が通じないとなると、泥仕合になりますわ」
クラウディアが不快そうに眉をひそめる。
「そこでだ。今回は魔法を捨てて『化学』で攻める。アイザックの酸化ガス、ソフィアのアルカリ洗浄液、そしてモモの物理破壊だ」
俺はクラウディアに向き直った。
「アヤネは囮として出す。クラウディア、悪いが今回は相性が悪い。お前はベンチで待機してくれ」
「……私が、ベンチ? この私が、Fランクの貴方の指示で?」
「ああ。お前の強力な魔法が反射されて、アヤネに当たったらどうする? アヤネを守るためにも、今回は下がるのが『合理的』だろ?」
アヤネの名前を出されると、彼女は弱い。
クラウディアは扇子をパチンと閉じ、不承不承ながら頷いた。
「……よろしいですわ。アヤネ様の安全が最優先。今回は貴方の『浅知恵』に従って差し上げます」
【決定:1回戦メンバー】 コタロウ(指揮)、アイザック、ソフィア、モモ、アヤネ。
4. 第2回戦:対人魚(予測)と「屈辱の選択」
「次は2回戦。AIの予測では、南方諸島連合チーム『セイレーン』が勝ち上がってくる」
俺がフィールドデータを表示すると、全員が絶句した。
『深水プール(水深30m)』。
「相手は水中の覇者。対して俺たちは、まともに泳げる奴がいない」
「……ボス。俺、猫だから水は嫌いだぞ」
「私もですぅ。足がつかないと怖いです」
「……不潔なプールになど入りたくありません」
「(……終わった)」
俺は頭を抱えた。陸上最強のメンバーが、水中ではただの溺死体だ。
「ヒヒッ! 安心したまえ! こんなこともあろうかと、秘密兵器を作っておいたヨ!」
アイザックが取り出したのは、露出度が極めて高く、腰や背中に魔導スラスターが付いたハイレグ水着だった。
**【反重力・ハイドロブースター水着】**だ。
「……これを、着るのですか?」
ソフィアがドン引きしている。
「背に腹は代えられない。全員これで特攻だ。そして、この試合のリーダーだが……クラウディア、お前しかいない」
「……は?」
クラウディアが絶句した。
「俺はプールサイドからワンドで全員を遠隔制御する。だから中には入れない。水中でも冷静に魔法を使えて、かつ泳げるリーダー役が必要なんだ。学園の代表の中でお前しかいない」
「お断りしますわ!!」
クラウディアが激昂して立ち上がった。
「あんな……あんな破廉恥な布切れを身に纏えと!? ルミナス公爵家の品位に関わります! それに、貴方のような下賤な男に、私の肢体を晒すなど……死んでも嫌ですわ!」
「そうか。じゃあアヤネ一人に負担をかけさせることになるな。アヤネがあの際どい水着で、敵の集中砲火を浴びるわけだが……」
「……!!」
クラウディアが固まった。
彼女の脳裏に、水着姿のアヤネが敵に囲まれ、涙目になっている光景(妄想)が浮かぶ。
「……くっ……卑怯な……!」
クラウディアはギリギリと歯噛みし、屈辱に震えながら俺を睨みつけた。
その目は「殺す」と言っている。
「……わかりましたわ。アヤネ様をお守りするためなら……悪魔に魂を売ってでも戦いますわ。ですが、勘違いしないでくださいね。もし私の体に指一本でも触れたら……その時は貴方の眼球を氷漬けにしますから」
「へいへい。遠隔操作だから触りませんよ」
(……怖すぎる。だが、これで戦力は整った)
【決定:2回戦メンバー】
クラウディア(リーダー・屈辱の水着)、アヤネ、ソフィア、モモ。コタロウ(プールサイドから遠隔操作)。アイザック(発明品ハイドロブースター水着の調整)
5. 準決勝と決勝:【AI】が弾き出した「非情な選択」
「準決勝。予測される相手は獣人連合『ファング』。これはモモに任せる。因縁の相手がいるんだろ?」
「おう! 牙の王ヴォルフガング……俺がぶっ飛ばす!」
モモが拳を鳴らす。ここはシンプルだ。
「問題は、決勝戦だ」
俺は、【AI】が算出した決勝相手のデータをテーブルに叩きつけた。
ガレリア帝国。ジークフリート皇子と竜騎士団。
「勝率99.9%。間違いなくここが来る。相手は空を飛ぶ。そして【AI】の予測では、何らかの『古代兵器』も投入してくる可能性が高い。総力戦になる。……だが、決勝の出場枠は**『5名』**だ」
現在、ここにいる主力メンバーは6名。
コタロウ、アヤネ、モモ、ソフィア、アイザック、クラウディア。
誰か一人が外れなければならない。
俺が口を開こうとした時、クラウディアが冷然と言い放った。
「私が降りますわ」
「……ほう?」
「勘違いしないでくださいね。貴方に譲歩したわけではありませんの。【AI】のデータを見れば明らかですわ。帝国の空軍に対抗するには、対空防御と広域妨害が必要……。単なる『戦力計算』の結果ですわ」
彼女は扇子で口元を隠し、目を細めた。
「それに、当日は各国の要人が集まります。公爵令嬢として、来賓をもてなす『ホステス役』も重要な任務。泥臭い前線は、貴方たち『使用人』にお任せして、私は高みの見物を決め込ませていただきますわ」
「……なるほど。高みの見物、か。お前らしくていいな」
俺は納得したフリをした。
だが、カンニング・【AI】の解析は、彼女の微細な魔力の揺らぎを検知していた。
(……嘘だな。こいつ、何か企んでる)
彼女の瞳の奥にあるのは、単なる撤退の意思ではない。
もっと深く、暗い、策略の色だ。
おそらく、VIPルームから何かを仕掛けるつもりだろう。
だが、今は追求しない。チーム編成がまとまるならそれでいい。
「分かった。決勝はクラウディアを除いた5人でいく。頼んだぞ、公爵令嬢様」
「ええ。せいぜい無様に踊りなさい、Fランク」
クラウディアは冷ややかに微笑んだ。
6. 決起
「よし、方針は固まった!」
俺はパンと手を叩き、会議を締めくくった。
「1回戦は化学実験。2回戦は水泳大会。準決勝は怪獣バトル。決勝は……まあ、出たとこ勝負だ。いいか、俺たちの目標は『優勝』じゃない。『生きて帰ること』だ! 以上! 解散! 寝るぞ!」
「「「おー!!(肉ー!)」」」
メンバーたちがそれぞれの部屋へ戻っていく中、クラウディアだけが最後に振り返り、俺に冷たい視線を投げかけた。
「……期待していますわよ、コタロウ。貴方が本当に『使える道具』なのか、それともただの『ガラクタ』なのか。この大会で証明してごらんなさい」
彼女はそう言い残し、ドレスの裾を翻して去っていった。
俺は一人残された部屋で、【AI】が弾き出した「勝率予測グラフ」を見つめ、重いため息をついた。
「……やれやれ。味方が一番の敵ってのは、笑えない冗談だぜ」
(第40.5話 完)
【第40.5話:あとがき】
お読みいただきありがとうございます!
ド派手な開会式の裏側で、なんともカオスな作戦会議が繰り広げられました。
今回のハイライトを振り返ると:
• 【AI】による非情な勝率予測: 勝ち上がってくる相手を100%特定し、戦術を最適化。コタロウの「解析」がチームの司令塔として機能し始めています。
• クラウディアの屈辱: アヤネを守るため、という最強の殺し文句に屈し、ハイレグの「ハイドロブースター水着」を着用させられる公爵令嬢。彼女の殺意が氷点下を突き抜けています。
• 優雅な撤退: 決勝戦を自ら降りたクラウディア。彼女がVIPルームで何を企んでいるのか……物語の大きな伏線になりそうです。
さて、方針は固まりました。次はいよいよ、物理攻撃も魔法攻撃も通用しない「歩く要塞」との第1回戦です。
【次回予告】
第41話:『鋼鉄の巨人vs錬金の狂気:精霊たちの「お掃除」大作戦』
ドワーフ鋼鉄国の「対魔導鏡面装甲」を前に、コタロウが繰り出すのは魔法ではなく「科学」の力。
スタイラス・ワンドと精霊シンクによる「共振破壊」が、最強の盾を砂に変える!
【作者からのお願い】
いよいよトーナメントの火蓋が切って落とされます!
作戦会議のメンバー間のやり取り、面白い!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると励みになります!




