表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/85

■ Ep.65 第40話:聖火は爆発と共に:降臨せよ、光の精霊

【第40話:まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回(第39話)では、アヤネの無自覚な魔力によって暴走した数万の精霊を、スタイラス・ワンドの精密演算によって「虹色のパレード」へと書き換えたコタロウ。

今回の第40話は、開会式の真のフィナーレ、**「聖火点灯式」**です!

ルミナスの至宝として、10万人の観衆が見守る中で聖火台へと登るアヤネ。

しかし、チームメイトのマッドサイエンティスト・アイザックが、そんな大舞台を「普通」で終わらせるはずがありませんでした。

聖火の燃料に詰め込まれたのは、禁断の爆烈液『ニトロ・マナ・グリセリン』。

点火の瞬間、闘技場は感動の渦……ではなく、戦術核級の爆心地へと変貌する!?

王都蒸発を阻止するため、コタロウが第13話で手に入れた「あの秘蔵の素材」を解放します。

物理法則をねじ伏せる重力の壁と、天空から舞い降りる「最大の誤解」をお楽しみください!

【本文】

1. 聖なる役割と、不穏な燃料


パレードの喧騒が収まり、グランド・コロシアムは厳粛な空気に包まれていた。

夜の帳が下り、魔法照明が幻想的にフィールドを照らし出す。

開会式のフィナーレ、**「聖火点灯式」**の時間だ。


『さあ、この神聖なる火を灯すのは……開催国を代表して、この方です! ルミナスの至宝! 聖女アヤネ!!』


ワァァァァァァッ!!

スポットライトが、フィールドの中央に立つ少女を照らし出した。

純白のドレス、輝く金髪。アヤネは緊張した面持ちで、しかし気高く、巨大な聖火台へと続く階段を登っていく。


「ふぅ……。やっとこれで終わりか」


俺、神木コタロウは、フィールドの袖でその様子を見守っていた。

パレードでの精霊暴走騒ぎ(第39話)で、俺の脳とスタイラス・ワンドは既にオーバーヒート気味だ。

あとはアヤネが火をつけて、花火が上がって、ホテルで寝るだけ。

そう思っていた。


「ヒヒッ! 見てくれよマネージャー君! アヤネ君が持ってるあのトーチ!」


隣でアイザックが、妙に興奮した様子で話しかけてきた。

嫌な予感がする。こいつが笑う時は、ロクなことがない。


「……あのトーチがどうした?」


「ボクが改良しておいたヨ! 通常の聖火じゃ火力が地味だからネ。燃料タンクに、特製の**『ニトロ・マナ・グリセリン(濃縮爆裂液)』**を充填しておいたんだ!」


「……は?」

俺の思考が停止した。

ニトロ? マナ? それ、ただの高性能爆薬じゃないか?


「しかも! 点火の瞬間にアヤネ君の『聖なる魔力』が注ぎ込まれることで、化学反応ケミカル・リアクションが起きて、空まで届くような美しい炎になるはずサ!」


俺の背筋が凍りついた。

アヤネの魔力はSSSランクの純度を誇る。

それを、爆発性の魔導液体に直接注ぎ込む?

それは「点火」ではない。**「起爆」**だ。


「(……【AI】! シミュレーションしろ!)」


【AI:解析完了。ニトロ・マナ・グリセリン + 聖女の魔力(全開) = 戦術級熱核反応。推定被害半径:1.5キロメートル。コロシアムは蒸発し、観客10万人は光の彼方へ消え去ります】


「ふざけんな!!」


俺は叫び出しそうになるのを必死で堪えた。

もう遅い。アヤネは聖火台の頂上に到達していた。

彼女はニコニコしながら、爆弾トーチを掲げている。


「止められない……! なら、抑え込むしかない!」


俺はポケットから、まだ熱の冷めやらぬ**【自律回転式魔導ペン(スタイラス・ワンド)】**をひったくった。


2. 臨界点突破


「皆様に、精霊の加護がありますように……!」


アヤネの祈りと共に、トーチが聖火台の受け皿へと差し込まれた。

その瞬間。


カッッッ!!!!


炎ではない。

目が潰れるほどの閃光が、聖火台を中心に炸裂した。

物理的な熱量と衝撃波が、風船のように膨れ上がる。

それは美しい聖火などではない。破壊の白い球体だ。


「きゃぁっ!?」

アヤネが驚く。


観客たちはまだ気づいていない。

「わぁ、凄い光だ!」と歓声を上げている。

だが、あと0.5秒後には、衝撃波が観客席に到達し、彼らの鼓膜と内臓を破壊するだろう。


「(間に合え……ッ! 俺の計算ワンド!)」


俺はワンドを天に掲げた。


「【AI】、同期シンクロ率MAX! スタイラス・ワンド、限定解除! モード:【重力結界グラビティ・プリズン】!!」


俺が叫ぶと同時に、ワンドに埋め込まれた**「重力核グラビティ・コア」**が、悲鳴のような高周波音を上げて回転した。


キュィィィィィィィィン!!!!!


第13話で手に入れた深層ボス「クリスタル・イーター」の心臓。

かつて巨大な竜を浮遊させていたその強大な重力エネルギーが、ガント親方の打ったミスリルの筐体を通して解放される。


俺の狙いは一つ。

爆発を止めることは不可能だ。

ならば、そのエネルギーの行き場を「上」だけに限定する。


3. 重力という名の「壁」


「書けッ!! 物理法則を書き換えろ!!」


俺はワンドを激しく振った。

ワンドの先端から、青黒い「重力の線」が描かれる。

それは瞬時に聖火台を取り囲む巨大な「円筒」となり、見えない壁を形成した。


ズドォォォォォォン!!!!!


爆発が起きた。

だが、横には広がらない。

俺のワンドが作り出した重力の壁に阻まれ、行き場を失った熱と光は、唯一開いている「上空」へと噴出した。


ズバァァァァァァァッ!!!!!


直径10メートルの極太の光の柱が、夜空を貫いた。

雲を突き抜け、大気圏さえも焦がすような、圧倒的なエネルギーの奔流。

観客席には、爆風の代わりに、心地よい熱風と眩い光だけが届く。


「ぐっ……! 重てぇ……!!」


俺は歯を食いしばった。

ワンドを通じて、爆発の圧力が俺の腕にのしかかる。

重力核が暴れようとするのを、俺のマナと【AI】の演算で必死に抑え込む。


【AI:警告。ワンドの表面温度、300度突破。重力核の出力、限界値を超えています。これ以上は、ワンドが自壊するか、マスターの腕がねじ切れます】


「知るか! 今離したら、王都が消えるんだよ!」


俺の指から煙が上がる。

ミスリルのボディが赤熱し、俺の皮膚を焼く。

それでも、俺はこの「光の柱」を維持し続けなければならない。


だが、アイザックの作った燃料はあまりにも強力すぎた。

アヤネの魔力と反応し、無限に増幅を続けている。

俺の重力壁にも、ピキピキと亀裂が入り始めた。


「(くそっ……! 抑えきれないか!?)」


万事休すかと思われた、その時。


4. 天空からの来訪者


光の柱の内部。

そこは、マナ密度が通常の数万倍に達する、物質界とは異なる次元の領域となっていた。

その超高密度の光の中から、**「彼女」**は現れた。


『……あら? なんだかいい匂いがすると思って来てみれば』


鈴を転がすような、しかし世界を震わせる威厳に満ちた声。

光の柱の中に、黄金の六枚翼を広げた、神々しい美女が浮かんでいた。


【光の精霊王・セレスティア】。


本来なら、最高位の精霊王がこれほど完全に顕現することはあり得ない。

だが、アヤネのSSSランク魔力と、ニトロによる爆発的エネルギー、そして俺のワンドによる「マナの圧縮」が、奇跡的に彼女を呼び出す「ゲート」を開いてしまったのだ。


「せ、精霊王……!?」

アヤネが聖火台の横でへたり込む。


セレスティアは、眼下で必死にワンドを振るう俺と目が合った。


『……ふーん。なるほどね』


彼女は一瞬で状況を理解したらしい。

爆発事故。それを隠蔽しようとする少年。そして、その手にある「重力核のペン」。


『生意気なオモチャを持ってるじゃない、コタロウ。あのクリスタル・イーターの核を、あんな小さなペンに押し込んで制御してるの? ……無茶をするわね。腕、千切れるわよ?』


セレスティアの声が、俺の脳内に直接響く。


「(……文句があるなら手伝ってくれ! あんたの聖女が吹っ飛ぶぞ!)」


俺が念話で叫ぶと、彼女はクスクスと笑った。


『いいわよ。この光のマナ……とっても「美味しい」しね。デザートのお礼に、少しだけ手を貸してあげる』


セレスティアが優雅に指を鳴らした。


5. 神の演出


パチン。

その瞬間、光の柱が変化した。


ただの破壊エネルギーだった光が、柔らかな黄金の粒子へと分解され、コロシアム全体に雪のように降り注ぎ始めたのだ。

セレスティアが、爆発エネルギーを瞬時に「祝福の光」へと変換したのである。


『民草よ、祝いなさい。この光は、新たな時代の幕開けである』


セレスティアの幻影が、夜空いっぱいに広がる。

その神々しさに、10万人の観客は言葉を失い、やがて平伏した。


「おお……! 精霊王様だ!」


「伝説の光の精霊王が、聖火に降臨された!」


「なんて神聖な儀式なんだ……!」


爆発事故は、一瞬にして「精霊王召喚の儀式」へとすり替えられた。


セレスティアは、光の粒子の中で俺にウインクを投げかけた。


『貸し一つよ、コタロウ。……あとで、そのペンの構造、詳しく見せなさいね。面白そうだから』


彼女はそう言い残し、光の中に溶けるように消えていった。


6. 熱を帯びた手


光が収まり、コロシアムには静寂が戻った。

そして、地鳴りのような拍手が沸き起こった。


「すげぇぇぇぇ!!」


「感動した! 最高だ!」


「ブラボー! 聖女アヤネ!」


聖火台の上では、無傷のアヤネが、何が起きたか分からずにキョトンとして手を振っている。

「えっと……よく分かりませんが、成功ですぅ!」


その陰で。

俺は膝をつき、荒い息を吐いていた。


「はぁ……はぁ……。死ぬかと……思った……」


手の中のスタイラス・ワンドは、赤熱してジュウジュウと音を立てていた。

俺の手のひらは火傷で真っ赤になり、感覚がない。

だが、ワンドは壊れていなかった。

ガント親方の打ったミスリルボディと、俺の魔力コーティングが、核爆発の圧力に耐え切ったのだ。


【AI:冷却モード移行。……マスター、心拍数が異常です。ですが、ミッションコンプリート。被害ゼロ。観客満足度120%。……完璧な「ショー」でした】


俺は震える手でワンドをポケットにしまい、立ち上がった。


7. 疑惑の眼差し


「……おい」


背後から声をかけられた。

振り返ると、帝国のジークフリート皇子が立っていた。

彼は観客席の最前列から、今の「ショー」を一部始終見ていたのだ。


「精霊王の顕現……。見事な演出だった。だが、俺は見たぞ」


ジークフリートの目が、俺の焦げた右手と、ポケットの膨らみを射抜く。


「あの光の柱が立つ直前……。貴様が掲げた『銀色の杖』から、空間を歪めるほどの重力波が出ていたのをな」


「……何のことだか。俺はただの応援グッズを振ってただけだ」

俺は痛む手を隠してシラを切った。


「フン。しらばっくれるか。重力を操り、核撃魔法級の爆発を抑え込むデバイス……。王国は、聖女以外にもとんでもない『怪物』を飼っているらしいな」


ジークフリートは、愉悦に歪んだ笑みを浮かべた。

「神木コタロウ。貴様への興味が、聖女を超えたぞ。……本戦で会えるのを楽しみにしている」


彼はマントを翻して去っていった。


俺は天を仰いだ。

「(……最悪だ。完全にロックオンされた)」


開会式。それは俺にとって、平穏な日々の終わりを告げる弔鐘だった。

手の中のワンドが、まだ熱を持って俺の太ももを焦がしている。

この最強のペンがある限り、俺の周りにはトラブルとカオスが吸い寄せられてくるのだ。


「……帰りたい。今すぐ寮に帰って寝たい」


俺の切実な願いは、10万人の歓声にかき消された。

明日からは、いよいよ命がけのトーナメントが始まる。


(第40話 完)

【第40話:あとがき】

お読みいただきありがとうございます!

開会式だけで王都が三回くらい滅びかけていますが、なんとか(?)無事に終わりました。

今回のハイライトを振り返ると:

• アイザックの「改良」: 聖火を核爆発に変えるという、味方とは思えないテロ行為。彼の「仕様です」は、今後もコタロウを苦しめることになりそうです。

重力結界グラビティ・プリズン: 第13話の深層ボス、クリスタル・イーターの核を応用したスタイラス・ワンドの真骨頂。物理演算で爆風を上空へ逃がすという、コタロウならではの力技が炸裂しました。

• 精霊王セレスティアの降臨: 絶体絶命のピンチを「神の演出」に変えてくれた精霊王。コタロウに「貸し一つ」を作った彼女の真意とは……?

• ジークフリート皇子の確信: 「応援グッズ」という苦しい言い訳も、帝国の天才には通用しませんでした。完全にロックオンされたコタロウ、平穏な夏休みはもはや絶望的です。

さて、派手すぎる幕開けとなった魔法オリンピア。次からはついに、具体的な対戦カードと「地獄の作戦会議」が始まります。

【次回予告】

第40.5話(幕間):『作戦会議 ~勝利への数式と、公爵令嬢の優雅な撤退~』

スイートルームで開かれる緊急会議。

AIが弾き出した、ドワーフ、人魚、獣人、そして帝国……。

強敵たちを「サボりながら」倒すための、コタロウの非情(?)なメンバー選抜が始まります!

【作者からのお願い】

物語はいよいよ、命がけのトーナメント編へ突入します!

聖火の爆発演出、熱かった!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると嬉しいです。

皆様の応援が、コタロウの焼けた右手を癒やす「マナ」になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ