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■ Ep.63 第38話:王都行き魔導列車は, カオスと殺意を乗せて走る

【第38話:まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回(第37.6話)にて、ついに結成された「学園最凶の代表チーム」。

聖女に野獣、氷の令嬢にマッドサイエンティスト、そして殺菌消毒の天使……。

コタロウが「ナイトメア(悪夢)」と評したこの面々と共に、舞台はいよいよ学園を飛び出し、王都ルミナスへと移ります。

今回の第38話は、王都への旅路を描く「魔導列車編」。

エアコンの効いた一等客室で優雅にサボる……はずだったコタロウの願いは、帝国の卑劣なハッキングによって粉砕されます。

暴走する時速300キロの鉄塊。

絶体絶命の危機に、コタロウが懐から取り出したのは、一本の「銀色のペン」。

これまで隠してきた彼の手札の一つ、**【自律回転式魔導ペン(スタイラス・ワンド)】**の真価が、ついにベールを脱ぎます!

【 第4章:対抗祭「魔法オリンピア」編 】の始まりです。


【本文】

1. 豪華列車『シューティングスター』


「わぁぁっ! すごいですコタロウくん! 見てください, 座席がフカフカですよぉ!」


「ヒヒッ! この内装材, ミスリル繊維が織り込まれているネ. 剥がして解析してもいい?」


「……不潔です. 不特定多数が触れた手すり, 座席, 窓ガラス. 全て消毒が必要です」


俺, 神木コタロウは, 王立精霊学園がチャーターした超豪華魔導列車**『シューティングスター』**の一等客室で, 深いため息をついていた。


本来なら, エアコンの効いた寮で寝て過ごすはずだった新学期. しかし, 学園選抜メンバー一員として, 俺たちは強制的に**「魔法オリンピア」**が開催される王都ルミナスへと送り込まれることになったのだ。


名目は「精霊学部の代表チーム」. メンバーは, 聖女イチノセ・アヤネ, 潔癖症のソフィア, マッドサイエンティストのアイザック, 野生児モモ, そしてマネージャー(兼, 雑用係)の俺. 学園が誇る問題児オールスターズだ。


「……はぁ. せめて移動中くらいは静かに寝かせてくれ」


俺はアイマスクを取り出し, リクライニングシートを倒そうとした. だが, その平穏はわずか数分で崩れ去ることになる。


2. 暴走の序曲


『キィィィィィィン……!!』


列車の駆動音が, 不快な高音へと変わった. ガタンッ! 車体が大きく揺れ, テーブルの上のジュースがこぼれる。


「おっと! なんだ, 急加速したぞ?」

モモが獣耳をピクつかせた。


「……変だネ. ダイヤグラムによると, ここは徐行区間のはずダ. なのに魔導エンジンの出力が120%を超えている」

アイザックがゴーグルを操作しながら呟く。


『――緊急放送! 乗客の皆様にお知らせします!』

車内スピーカーから, 車掌の悲鳴に近い声が響いた。

『現在, 当列車はシステムトラブルにより制御不能となっております! ブレーキが作動しません! このままでは, 王都中央駅に突っ込みます!!』


車内はパニックに包まれた. 時速300キロで暴走する鉄の塊. 王都に突っ込めば, 大惨事は免れない。


「大変です! みんな死んじゃいますぅ!」

イチノセ・アヤネが涙目でオロオロする。


「不潔です. 死体片が飛び散れば, 王都の衛生環境が崩壊します」

ソフィアが殺菌スプレーを構えるが, 何の役にも立たない。


「(……【AI】, 状況は?)」

俺は冷静に, 脳内の相棒に問いかけた。


【AI:解析完了. 原因は「外部からのサイバー攻撃ハッキング」です. 帝国の軍事回線を経由した妨害電波が, 列車の制御魔導盤コントロール・ルーンを書き換えています】


「帝国だと……?」

俺は眉をひそめた. 魔法オリンピアの開催直前. 敵国であるガレリア帝国が, 王国の威信を潰すために仕掛けたテロか。


【AI:このままでは衝突まであと5分. ……マスター, どうしますか? 放置すれば「安眠」どころか「永眠」ですが】


「決まってるだろ. ……俺のサボりを邪魔する奴は, 叩き潰す」


俺は席を立った. そして, 懐から一本の「銀色のペン」を取り出した。


3. スタイラス・ワンド, 起動


俺たちが向かったのは, 先頭車両にある機関室だ. そこでは, 車掌や魔導技師たちが真っ青な顔で制御盤を操作していた。


「だ, ダメだ! 制御コードが受け付けられない!」


「『暴走しろ』という命令が上書きされ続けている! 外部からの干渉が強すぎるんだ!」


彼らの目の前にある巨大な魔導盤には, 赤黒いノイズが走り, 正常な魔法陣を侵食していた. 帝国のハッカーたちが, 遠隔でウィルス魔法を送り込んでいるのだ。


「どいてくれ. 俺がやる」

俺は技師たちを押しのけ, 制御盤の前に立った。


「はぁ!? 学生に何ができる! 触るな!」

技師が怒鳴るが, 俺は無視した。


俺は手にした**【自律回転式魔導ペン(スタイラス・ワンド)】**を, 指先で軽く弾いた。


ヒュンッ!


俺の手を離れたワンドが, 重力を無視して空中に静止ホバリングする. そして, 内蔵された「重力核グラビティ・コア」が唸りを上げ, 高速回転を始めた。


シュルルルルルルルルッ!!


「な, なんだその道具は……!?」

技師たちが息を呑む. ワンドは俺の周囲を衛星のように周回しながら, 青白いマナの光を放っている。


「【AI】, 同期開始シンクロ・スタート. モード:【トリプル・アクセル(演算速度3倍)】. ……物理ハッキングで, 帝国のコードを焼き切るぞ」


【AI:了解(Roger). ターゲットロック. スタイラス・ワンド, 記述開始ライティング・スタート


4. 物理演算 vs 電子戦


俺が指を振ると, ワンドが残像を残すほどの速度で制御盤の上を走った。


ガガガガガガッ!!

ワンドの先端(ペン先)が, 物理的に魔導盤の表面を叩き, 新たな術式を直接刻み込んでいく。


通常のハッキングが「パスワードを入力して裏口から入る」ものだとしたら, 俺のやり方は**「ドアノブを物理的に破壊して, 新しい鍵を取り付ける」**ようなものだ. ワンドの超高速回転が生み出す摩擦熱と, 俺の「高純度・精製マナ」が, 帝国の侵食コードを物理的に焼き消していく。


【AI:警告. 帝国側からの対抗プログラム検知. ファイアウォールを展開してきます】


「関係ない. 全部ぶち抜け」


俺はさらに回転数を上げた. キュィィィィィン!! ワンドが発する甲高い駆動音が, 機関室のガラスにヒビを入れるほど響く。


「お, おい! 見ろあの動き!」

アイザックが目を輝かせて叫んだ.

「あのペンの先端, 1秒間に数千回の微細振動をしているネ! あれで魔力回路の『抵抗値』を物理的に書き換えているんだ! 理論上は可能だけど……それを人間の脳で制御してるのかい!? 脳みそ焼けるヨ!?」


「焼ける前に終わらせる!」


俺の視界には, 【AI】による膨大なコードが滝のように流れている. それをワンドが, ミシンが布を縫うような速度で実体化させていく。


【AI:帝国のハッキングコード, 排除率90%. ……ブレーキシステムの制御権, 奪還しました】


「よし! アヤネ, 仕上げだ! このワンドに, お前の魔力を全力で注ぎ込め!」


「は, はいっ! えいっ!」

アヤネがワンドに向かって聖なる光を放つ。


「【強制停止ハード・ストップ】!!」


俺がワンドを制御盤の中心に突き刺した. ドォォォォォン!! 黄金の光が制御盤全体に走り, 赤黒いノイズが一瞬で浄化された。


キキキキキキキキッ!!!

列車の車輪から火花が散り, 強烈なブレーキがかかる。


「うわぁぁぁっ!?」

全員が前のめりに倒れる. だが, 速度計の数字は急速に下がり――。


プシューッ……。

王都中央駅のホーム手前, わずか数センチのところで, シューティングスター号は静かに停止した。


5. 謎の英雄


「と, 止まった……?」


「助かったのか……?」


車内に静寂が戻り, やがて爆発的な歓声が沸き起こった.

「万歳! 奇跡だ!」

「聖女様が守ってくださったんだ!」


機関室の技師たちは, へたり込んだ俺を見て, 信じられないものを見る目を向けていた.

「あの一瞬で, 数千行の術式を書き換えた……? しかも, あんな小さな棒切れ一本で……?」


俺は汗だくになりながら, 熱を持ったスタイラス・ワンドを回収し, フゥーッと息を吹きかけた.

「……やれやれ. オーバーヒート寸前だ」


ワンドは『熱いよ! 酷使しすぎ!』と抗議するように, ブルブルと震えて俺のポケットに収まった。


6. 皇子の視線


騒動が収束したホーム. 俺たちが降り立つと, そこには帝国の使節団が到着していた。


その中心にいる, 黒い軍服の青年――帝国第一皇子ジークフリート. 彼は, 停止した列車の先頭車両を見上げ, 不審げに眉をひそめていた。


「……報告では, 制御不能になり突っ込む手はずだったはずだ. なぜ止まった?」


彼の傍らに控える側近が, 青ざめた顔でタブレットを見せる.

「は, ハッキング班からの報告です. 『異常な速度でコードが書き換えられた』と……. 魔法的な干渉ではなく, まるで『物理的に回路を焼き切られた』ような痕跡があります」


「物理的に……だと?」


ジークフリートの耳に, 先ほどまで聞こえていた「あの音」が蘇る. 列車が停止する直前, 機関室の方角から聞こえてきた, 蚊の鳴くような, しかし鋭利な超高速回転音キュィィィン


「……あの音. 魔導エンジンの音ではない. もっと緻密で, 人工的な……」


彼の視線が, ホームの人混みの中にいる俺たちに向けられた. 聖女イチノセ・アヤネの笑顔の横で, ダルそうにアクビをしている黒髪の少年. その胸ポケットから, わずかに銀色の輝きが見えた気がした。


「……神木コタロウ, か」


ジークフリートは目を細めた.

「ただの『聖女のオマケ』だと思っていたが……. どうやら, 王国の懐には『厄介な異物』が紛れ込んでいるようだな」


7. 王都到着


「コタロウくん! 見てください! 王都ですよぉ!」

アヤネが無邪気に俺の腕を引く. 目の前には, 白亜の城壁と, 魔法文明の粋を集めた大都市が広がっていた。


「……ああ, 着いちまったな」


俺はポケットの中のスタイラス・ワンドを指で撫でた. 帝国のハッキングをねじ伏せたこのペン. そして, それを見逃さなかった皇子の視線。


「(……平穏な観光旅行とはいかなそうだな)」


俺の予感通り, この王都で待っているのは, スポーツ大会の皮を被った「代理戦争」. そして, 俺とスタイラス・ワンドが, 世界中の注目(と誤解)を浴びることになる, 波乱の4日間の幕開けだった。


(第38話 完)

【第38話:あとがき】

お読みいただきありがとうございます!

優雅な旅行になるはずが、いきなり大惨事一歩手前でしたね。

今回のハイライトを振り返ると:

• スタイラス・ワンドの初陣: ハッキングを「物理」で解決するという、コタロウらしい(?)強引な演算突破。銀色のペンが奏でる超高速回転音が、物語のギアを一段上げました。

• アヤネの魔力供給: 最後の仕上げは、やはりアヤネの聖なるマナ。二人の「共同作業」が列車を救いました。

• ジークフリート皇子の視線: コタロウを「聖女のオマケ」ではなく「厄介な異物」として認識した帝国の天才。今後の二人の知略戦を予感させます。

「サボるための平穏」を求めて王都に来たはずのコタロウですが、ジークフリートに目をつけられたことで、その道はさらに険しくなりそうです。

【次回予告】

第39話:『開会式パニック:聖女の微笑みと、精霊たちのパレード』

10万人の観衆が見守るグランド・コロシアムでの開会式。

アヤネの無自覚な「集客力」が、王都中の浮遊精霊を呼び寄せてしまい……!?

【作者からのお願い】

物語がいよいよ本戦へと突入します!

この後の展開が楽しみ!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると、コタロウのワンドの演算速度がさらに上がるかもしれません!

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