■Ep.62 第37.6話(幕間):結成! 学園最凶のドリームチーム
【第37.6話:まえがき】
いつもお読みいただきありがとうございます!
前回(第37.5話)では、ヴォルコット学部長に弱みを握られ、逃げ場を失ったコタロウ。アヤネを教会の「家畜」にさせないため、そして自分自身の「禁忌スキル」を隠し通すため、ついに学園代表チームの専任マネージャー(兼、共犯者)としての契約書にサインをしてしまいました。
今回の第37.6話は、いよいよ**「学園代表ドリームチーム」**の結成回です!
アヤネとモモに加え、他学部から召集されたのは、コタロウをゴミのように見下す「氷の令嬢」、人体改造も辞さない「マッドサイエンティスト」、そして笑顔で漂白(消去)を口にする「殺菌消毒の天使」。
「これ、本当に味方チームだよな?」とコタロウが天を仰ぎたくなるような、最高にクセが強すぎる精鋭(変人)たちの顔合わせをお楽しみください!
【本文】
1. 円卓の騎士(変人)たち
「……帰りてぇ」
学園本館の最上階、「特別会議室」。 豪奢なシャンデリアの下、円卓を囲む5人のメンバーを見渡して、俺、神木コタロウは心の底から呟いた。
ヴォルコット学部長との「悪魔の契約」から数日。 今日は、来たる「学園対抗戦」に向け、各学部の代表者が一堂に会する結団式だった。 集められたのは、全校生徒数千名の中から選ばれた、たった5名の精鋭たち。
だが、俺の目の前に広がっているのは、エリート集団というよりは**「魔境」**だった。
「ムシャムシャ……。この会議室のクッキー、湿気ってるね。コタロウちゃん、私の隠し持ってる『極上マカロン』食べる?」
【精霊学部代表(2年):イチノセ・アヤネ】 いつものジャージ姿ではなく、学園指定の制服を着ているが、スカートのポケットからは大量のお菓子がはみ出している。学園の聖女とは思えない行儀の悪さだ。
「ガリガリ……ッ! クッキーなんぞで腹が膨れるか! おいコタロウ、肉だ! 晩飯はステーキだろうな!?」
【精霊学部代表(2年):百獣/モモ・イヌガミ】 椅子の上にしゃがみ込み、テーブルの脚を爪で研いでいる。制服のボタンは弾け飛びそうで、野生味が隠しきれていない。
この二人はいつものことだ。問題は、残りの3人だ。
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2. 氷の令嬢と、絶対零度の侮蔑
カツーン、カツーン……。 冷ややかなヒールの音が響き、会議室の空気が一瞬で凍りついた。 現れたのは、縦ロールに巻いた豪奢な金髪を完璧に整え、扇子を手にした少女だ。 その青い瞳には、一切の感情が宿っていない。
【政経・占星術学部代表(2年):クラウディア・フォン・アウステリス】 席次:学部首席
公爵家の次女であり、2年生にして政経・占星術学部のトップに君臨する「氷の令嬢」。 彼女は部屋に入るなり俺を一瞥し、まるで汚物を見るかのように目を細めた。
「……空気が澱んでいると思いましたけれど。なぜ、Fクラスの『石ころ』がここにいるのですか? 清掃業者の手配など頼んでいませんけれど」
「相変わらず挨拶が手厳しいな、クラウディア」
俺はため息をついた。 こいつとは、第4.5話で「アヤネに近づくな」と一方的に通告されて以来の因縁だ。 第18話で実家の暴風騒動を解決してやった恩があるはずなんだが、態度は軟化するどころか硬化している。
「おい。まさか忘れたとは言わせないぞ。夏休みに俺が助けてやった件はどうなった? 恩人に対してその態度はどうなんだ」
俺が言うと、クラウディアは表情一つ変えず、扇子で口元を隠した。
「恩人? ……思い上がりも甚ばしいですわね。あの件に関しては、貴方の要求通り『公爵家専用ダンジョン』の採掘権をお渡ししました。つまり、取引は完了しています。貸し借りはチャラ。貴方が私に馴れ馴れしく話しかける権利など、1ミリも残っていませんわ」
取り付く島もない。完全なビジネスライクだ。 俺は食い下がった。
「じゃあ、第10話のダンジョン実習はどうだ? お前が仕掛けた転移魔法が暴走したせいで、俺とアヤネは未踏の最下層まで落として死ぬ思いをしたんだぞ。あれは完全にお前のミスだろ」
その言葉を聞いた瞬間、クラウディアの瞳の温度がさらに下がった。 焦りも、動揺もない。ただ、絶対的な「傲慢」だけがあった。
「……ミス? この私が?」 彼女は冷然と言い放った。
「言いがかりはよして頂戴。私のアストロロジー(星読み)と魔導計算に狂いはありません。あれは、貴方という『不確定要素』が、私の完璧な術式に混入したせいで起きた事故……いわば天災のようなもの。私の責任ではありませんし、そもそも――」
彼女は扇子を閉じ、俺の胸元に突きつけた。
「貴方ごときが生きようが死のうが、それは些末な問題です。聖女アヤネ様が生還された。その結果だけが全て。貴方が生き残ったのは、単なる運か、アヤネ様の慈悲に過ぎません。身の程を知りなさい」
「……(こいつ、マジで話が通じねぇ)」
自分の非を認めるどころか、俺の存在そのものを否定してきた。 これが「氷の令嬢」。第4.5話から続く、徹底的な拒絶。
しかし、その氷の仮面が一瞬で崩れ去った。 彼女が視線をアヤネに移した瞬間だ。
「ああ……! アヤネ様……! 本日もお美しいですわ……!」
クラウディアは俺を突き飛ばし、猛ダッシュでアヤネの元へ駆け寄り、その手を取って跪いた。 さっきまでの冷徹さはどこへやら、その瞳は狂信的な熱を帯びている。
「学園の聖女、アヤネ様! ああ、そのお口の周りのクッキーの粉すら神々しい……! 第6話で『ガトー・ド・リュンヌ』の黄金シュークリームをお届けした時の、あの笑顔……昨日のことのように思い出されますわ! あの一件以来、私は心に誓いましたの。この身の全てを、貴女様のために捧げようと!」
「あ、クラウディアちゃん! あの時のシュークリーム、美味しかったよ~! また食べたいな♡」
アヤネが無邪気に笑う。
「もちろんです! すでに王都の全店舗に手を回し、在庫を確保させております! 今回、貴女様と同じチームになれるなんて、前世で国を救ったご褒美に違いありませんわ!」
クラウディアは恍惚の表情でアヤネの手を握りしめている。 ……俺への「絶対零度の侮蔑」と、アヤネへの「狂信的な崇拝」。 第6話で俺が作った「お前のために頑張っている」という言い訳が、皮肉にもクラウディアの「聖女ファースト」の精神をより強固なものにしてしまったようだ。
「いいこと? コタロウ. 貴方はマネージャーだか何だか知らないけど, アヤネ様のお世話係は私がやりますの. 貴方は私の靴磨きでもしていなさい!」
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3. 爆発と鋼鉄の錬金術師
「ヒヒッ……! 相変わらず激しいネェ, クラウディア嬢は. 感情の振れ幅が大きすぎて, 脳波測定器が焼き切れちゃったヨ」
円卓の端で, 怪しげなゴーグルをかけた猫背の男子生徒が, 壊れた計器を放り投げた。 白衣は薬品のシミで汚れ, 指先は金属製の義手に置換されている。
【錬金学部代表(3年):アイザック・ギアボルト】 席次:学部首席
彼は机の上に, フラスコやネジ, 怪しげな液体が入った瓶を並べている。
「光の大精霊に進化した検体Aに、精霊憑依を行う検体B……。ああ、素晴らしい素材ダ! ねえ、君たち。試合中に腕の一本くらいなら切り落としてもいいかナ? 僕の作った『対魔導義手・改』を試したいんだヨ!」
「ひっ……あの人、目が笑ってないよぉ」
アヤネがクラウディアの後ろに隠れる。
「貴様! アヤネ様に何て口を! 公爵家の権力で研究室ごと爆破しますわよ!」
クラウディアが即座に噛み付く。
アイザックは**【物質変換】と【魔導具作成】**の天才。 だが, その研究欲は常軌を逸しており, 「マッドサイエンティスト」として恐れられている危険人物だ。
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4. 微笑みの掃除屋
「まあまあ, アイザックさん。レディに対して失礼ですよ? それに、アヤネさんもモモさんも、制服が少し汚れていますね……」
穏やかな声と共に立ち上がったのは, 純白のローブを纏った, 慈愛に満ちた表情の女子生徒だ。 その手には, 不釣り合いなほど巨大な**「モップ」**のような杖が握られている。
【治癒・生活魔法学部代表(3年):ソフィア・ミラー】 席次:学部首席
彼女はニコニコと笑いながら, アヤネの制服についたクッキーの粉を払った。
「不潔は敵です。汚れは罪です。私は『治癒』と『生活魔法(家事)』を司る者として、チームの衛生管理を徹底させていただきます。 ……もし、私の基準に従えない不潔な方がいれば」
ソフィアが優しく微笑んだまま, 持っていたモップの柄を片手でベキッと握り潰した。
「**漂白**させていただきますね♡」
「「……ハイ」」
全員が直立不動になった。 彼女は「回復役」でありながら, 潔癖症が行き過ぎて**【洗浄魔法(浄化)】**を攻撃転用する, 通称「殺菌消毒の天使」だ。
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5. マネージャーの絶望
「……以上が, 今回の学園対抗戦の代表メンバーだ」
ヴォルコット学部長が, 満足げに頷いた。
• 学園の聖女(天然):イチノセ・アヤネ
• 音速の野獣(暴走):百獣モモ
• 聖女ガチ勢の氷の令嬢:クラウディア
• マッドサイエンティスト(解剖):アイザック
• 潔癖症の殺戮ヒーラー(消毒):ソフィア
そして、
• 「禁忌スキル持ち」のパシリ(マネージャー):俺
「どうだね, 神木君. 各学部の首席を集めた, まさにドリームチームだろう?」
「……ナイトメア(悪夢)の間違いじゃないですか?」
俺は頭を抱えた。 個性が強すぎる。協調性という言葉が辞書にない連中ばかりだ。 特にクラウディアは, 俺を目の敵(ゴミ扱い)にしながらアヤネにへばりついている。 第4.5話から続く敵対心に, 第6話の恩義による聖女崇拝が加わり, もはや宗教レベルでこじらせている。
「フン! 底辺コタロウ! 足手まといになったら即刻排除して差し上げますわ! アヤネ様の栄光ある道に, 貴方のような汚点は必要ありませんの!」
クラウディアが扇子で俺を指差す。 その背後で, カンニング・【AI】が分析結果を表示した。
【AI:解析結果:クラウディア】 性格:冷徹、完璧主義、聖女狂信者 コタロウへの感情:侮蔑 80%、敵対心 15%、警戒心 5% 備考:第18話の恩義は「取引完了」として処理済み。デレ要素、現時点で皆無。
「(……マジかよ。攻略難易度SSじゃねえか)」
俺は天を仰いだ。 逃げ場はない。 聖教会の脅威に加え, 身内からの殺意と侮蔑, そして政治的な監視。
「(やるしかない……。全員、俺の『解析』で丸裸にして, 無理やりにでもチームとして機能させてやる!)」
俺は腹を括った。 こうして, 王立学園史上, 最も協調性がなく, 最も凶悪な代表チームが結成された。 目指すは王都。決戦の地へ向けて, いよいよ出発の時が迫る。
(第37.6話 完)
【第37.6話:あとがき】
お読みいただきありがとうございます!
ドリームチーム……いえ、コタロウ曰く「ナイトメアチーム」が結成されました。
今回のハイライトを振り返ると:
クラウディアの再登場: 第4.5話、第6話、第10話、第18話……これまでの因縁を全て「ビジネス」と「聖女崇拝」に振り切った彼女。コタロウへの冷たさが、逆に清々しいレベルです。
新キャラ:アイザックとソフィア: 首席は能力だけでなく、性格の歪みもトップクラス。アイザックの義手や、ソフィアの握りつぶされるモップなど、一瞬で「関わっちゃいけない奴だ」とわかってもらえたかと思います。
コタロウの立ち位置: 禁忌スキル【イリーガル・アナライズ】を隠しながら、この爆弾岩のような連中を制御しなければならないという、無理ゲーに等しいノルマ。
さて、最凶の5人と1人が揃ったところで、物語の舞台はいよいよ学園を飛び出し、王都ルミナスへ!
【次回予告】
第38話:『王都行き魔導列車は、カオスと殺意を乗せて走る』
超豪華列車『シューティングスター』で優雅な旅……となるはずが、帝国のサイバーテテロにより列車が暴走!?
コタロウが懐から取り出した謎の「銀色のペン」が、時速300キロの鉄塊をハッキングする!
ついにベールを脱ぐコタロウのガジェット。そして、不敵に笑う帝国皇子ジークフリートの影……。
「魔法オリンピア」編、いよいよ本編開始です!
【作者からのお願い】
2月だけで5000PV、累計7000PVという驚異的な勢い、本当にありがとうございます!
新キャラたちも加わり、物語はさらに加速していきます。
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