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Ep.60 第37話:魔の森の48時間(後編):紅蓮の特攻と、進化せし光の聖女

【まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!


前回、第36話では不眠不休のデスマーチの中、司令塔コタロウが脳を焼きながらハッキングを続け、3人のヒロインを支え続けました。しかし、限界を悟った首席リリスが選んだのは、コタロウとのリンクを断ち切り、自らが「捨て石」となって要塞をこじ開ける自爆特攻でした。


今回の第37話は、魔の森サバイバル完結編! 夜明けの森に響き渡るパラリラ音(暴走族精霊)と共に、リリスの紅蓮の炎が難攻不落の要塞を包みます。


そして、絶体絶命の危機に追い詰められたアヤネが、ついに「真の聖女」としての翼を広げる……。 羽化した精霊の名は、【リュミエール・アステリア】。


「サボりたかったはずが、いつの間にか神様相手に喧嘩を売る羽目になった」 そんな、コタロウの想定外すぎる運命の転換点をお楽しみください!

【本文】

1. 途切れたリンクと、夜明けの暴走族


『パラリラパラリラァッ!! 姐さん、お待たせしましたァッ!!』


早朝の魔の森に、場違い極まりない爆音が響き渡る。 リリスが通信機で呼び寄せた、精霊暴走族「特攻座布団部隊」の到着だ。


VIP席の特別観覧室。 俺、神木コタロウは、激しい耳鳴りと頭痛に耐えながら、端末のキーボードを叩き続けていた。 肩に浮遊しているY字型の**音叉の精霊【シンク】**が、不協和音を上げて激しく震えている。


「くそっ……! リリスの奴、完全に精神障壁メンタル・ウォールを閉じてやがる!」


俺は鼻血を拭いながら、焦燥に駆られた。 リリスは俺との思考リンク(シンク)を一方的に遮断した。 これ以上、俺に負担をかけないためか、それとも――俺に「止める隙」を与えないためか。


モニターの中で、リリスがアヤネとモモを蹴り起こし、最後の言葉を告げているのが見えた。 その表情は、いつもの高慢な令嬢のものではない。覚悟を決めた戦士の顔だ。


『……後のことは任せたわよ。同じSクラス(2年選抜)の誇り、見せてきなさい!!』


リリスは相棒の火トカゲ・イグニスと共に、旗艦となる金ラメ仕様の座布団に飛び乗った。


「やめろ、リリス! それはただの特攻じゃない、魔力回路が焼き切れるぞ!」


俺の声は届かない。彼女はもう、引き返すつもりはないのだ。


2. 紅蓮の特攻バーンアウト・ストーム


「総員、突撃カチコミじゃあァァァッ!! 私に続けぇぇぇッ!!」


リリスの号令と共に、50機の座布団が一斉に機首を下げた。 目指すは一点。難攻不落の「氷の要塞」。 朝日を背に急降下するその姿は、まるで天から降り注ぐ流星群のようだ。


【AI:警告】 対象:リリス・フレアガード 魔力回路:暴走クリティカル状態。リミッター解除を確認。 警告:生存確率が著しく低下しています。


「馬鹿野郎……!」 俺は拳で机を叩いた。もう、誰にも止められない。


「燃え尽きなさい、イグニス! これが私の、最後の炎よ!!」


イグニスの全身が純白に発光し、座布団編隊全体が巨大な「炎の矢」へと化した。


「「超・自爆特攻:紅蓮の暴走火炎旋風バーンアウト・ストーム!!!」」


ズガァァァァァァァンッ!!!!!


凄まじい轟音と熱波が、魔の森全体を揺るがした。 VIP席の防弾ガラスがビリビリと震え、モニターがホワイトアウトする。 その衝撃で、俺の思考リンクシステムも強制的にダウンした。


【AI:報告】 敵要塞、損壊率 98%。崩壊。 リリス・フレアガード、魔力反応消失リタイア


煙が晴れると、そこには無残な光景が広がっていた。 ヴァイパーが自慢した毒植物の迷路は跡形もなく焼き払われ、シルビアが誇った絶対零度の城壁は融解して蒸発していた。 要塞は消え去り、焦土と化した大地だけが残っている。


リリスは脱落した。だが、彼女は鉄壁の守りをこじ開けた。 Sクラス(選抜)の首席としての魂が、戦場の空気を一変させていた。


「……あいつの覚悟を無駄にするな。シンク! 周波数変更! 対象、アヤネとモモだ! 強制接続オーバーライドしろ!」


『キィィィィン!!』


シンクが高周波を発する。 俺は限界に近い脳を酷使し、再び戦場への介入を試みた。 ここからは、俺が「見えない司令塔」として、残された二人を導く番だ。


3. 風を纏う野獣(モモ × ストーム・ライダー)


「ゲホッ、ゲホッ……! くそっ、なんて熱量だ……!」


黒焦げになった地面で、毒使いヴァイパーが立ち上がろうとする。 彼は即座に杖を振り、残った魔力で再び毒霧を生成しようとした。


「まだだ……! まだ終わらん! この距離なら、毒で窒息させてやる……! 2年生ごときに、我々の牙城が崩されてたまるか!」


紫色の致死性の毒ガスが渦を巻き、迫り来るモモの前に立ち塞がろうとする。 モモが一瞬、足を止めた。視界が塞がれ、どこへ進めばいいか迷ったのだ。


その瞬間、俺の思考こえがモモの脳内に直接響いた。


『――迷うな、モモ! 12時の方向へ突っ込め!』


(あ? コタロウか!? でも毒が……息ができねぇぞ!)


『心配するな。リリスが残した「風」がお前を守る! AIの計算上、あと3秒で気流が変わる。信じて走れ!』


(……へっ、了解だ! 大将!)


俺の言葉と同時に、リリスの自爆から生き延びた**風の精霊ストーム・ライダー**たちが、ボロボロの体で毒霧の中に突っ込んだ。 彼らは自身の体を高速回転させ、強引な「突風」を巻き起こし、一本の綺麗な「風のトンネル」を作り出した。


「なっ!? 精霊たちが自ら風穴を!? 術者の命令もないのに!?」 ヴァイパーが驚愕する。


『今だ! 精霊と同調シンクロしろ! お前ならできる!』


モモが加速する。 彼女の体に風の精霊たちが纏わりつき、空気抵抗を極限まで消し去る。


ドォンッ!!


音速を超えた獣の一撃。 俺が転送した「ヴァイパーの死角」の座標へ、正確無比な裏拳が叩き込まれた。


「ガハッ……!?」 ヴァイパーはきりもみ回転しながら吹き飛んだ。


『ヴァイパー(3年)、戦闘不能! リタイア!』


4. 進化せし光の聖女(アヤネ × リュミエール・アステリア)


一方、瓦礫の下から無傷のゴライアスが現れた。 彼は仁王立ちし、目の前に立つ小柄な少女――アヤネを見下して笑った。 それは侮蔑ではない。3年生のエリートが、同じSクラスの後輩を見る、強者としての余裕の笑みだ。


「なんだ、次は貴様か? 2年選抜(Sクラス)の紅一点……神楽坂アヤネだったな」


ゴライアスが丸太のような腕を振り上げる。 アヤネはバットを構えたまま動かない。


『アヤネ、聞こえるか』 俺の声に、アヤネが小さく頷く。


(うん、聞こえるよコタロウちゃん。……あの人、すっごく硬そう。私のスイングじゃ弾かれちゃうかも)


『ああ。AIの解析だと、物理攻撃は全て「金剛肌アダマン・スキン」に無効化される。だが、お前には「光」があるだろ?』


(光……うん。リュミエールちゃんがいるもんね)


アヤネがポケットから光の結晶を取り出すと、**【光の大精霊(幼体)・リュミエール】**が現れた。 リュミエールがバットに融合し、まばゆい光を放つ。


「くっ、聖女だろうがなんだろうが! 3年生の意地で潰してやる! うおおおおッ!!」 ゴライアスが突進してくる。


ドォォォンッ!!


ゴライアスのタックルと、アヤネの光るバットが激突する。 凄まじい衝撃波が周囲の樹木をなぎ倒す。


「ぐぐぐっ……! 重い……!」 アヤネの足が地面にめり込む。幼体リュミエールの力だけでは、ゴライアスの質量を押し返せない。


(コタロウちゃん、押されちゃう……!)


『アヤネ! 負けるな! イメージしろ! お前は落ちこぼれなんかじゃない。誰よりも強い「Sクラスの聖女」だ! お前の中にある光を……リミッターを外して解き放て!』


俺はシンクを通じて、アヤネの精神リミッターを解除する「暗示コマンド」を送った。 アヤネの瞳が輝き、強い意志が溢れ出す。


「負けない……! リリスちゃんが繋いでくれたんだ! 私たちは、Sクラスなんだから!!」


その叫びに呼応し、リュミエールのコアが太陽のように激しく発光した。


【AI:感知】 高エネルギー反応! 個体進化エボリューションを確認! 第1段階(幼体)→ 第2段階(成長体)へ移行!


光の繭が弾け飛び、以前よりも一回り大きく成長し、背中に優雅な翼を持った**【光の大精霊(成長体)・リュミエール・アステリア】が顕現した。 バットの輝きが桁違いに増幅され、神々しい「真・光の聖剣トゥルー・エクスカリバー・バット」**へと変貌を遂げる。


「なんだ……その神聖な気配は……。マナの桁が跳ね上がっただと……!? そうか、やはり貴様は教会が血眼になって探す『聖女』そのものだったか……!」 ゴライアスの顔が、恐怖と畏敬に歪む。


『今だ、アヤネ! フルパワーで振り抜け!』


「ありがとう、アステリアちゃん! みんなの力を合わせて……かっとばせーッ!!」


カキィィィィィィィィンッ!!!!


激突の瞬間、閃光が視界を埋め尽くした。 進化した光の圧力が、ゴライアスの「金剛肌」を原子レベルで分解・粉砕する。


「ば、馬鹿な……私の硬度が……存在が消し飛ぶゥゥゥゥ……!?」


ゴライアスは光の尾を引きながら、彗星のごとく空の彼方へ飛んでいき、やがて一番星キラッとなって消えた。


『ゴライアス(3年)、場外ホームラン! リタイア!』


5. 最後の計算外


残るは、副会長シルビアただ一人。 彼女は半壊した氷の壁を背に、信じられないものを見る目で二人を見つめていた。


「ありえない……。ストーム・ライダーを従える獣人に、戦闘中に進化する光の大精霊を宿す聖女……? こいつらは、紛れもない『本物(Sクラス)』だったというの……!?」


彼女の周りには、リリスを失った悲しみと、ヴァイパーに森を汚された怒りを力に変えた精霊たちが集まっていた。 風がモモの背中を押し、光がアヤネの道を照らす。


『計算間違いだ、副会長』 俺はVIP席で呟き、最後の指示を送った。


『モモ、右から撹乱しろ。アヤネ、正面から光で圧力をかけろ。これで終わりだ。チェックメイト!』


「計算? そんなの知らないよ」 アヤネが光るバットを肩に担ぐ。


「うん。腹減ったから早く終わらせようぜ」 モモが風を纏った爪を研ぐ。


二人は俺の指示通り、完璧な連携でシルビアを追い詰めた。 モモが氷の槍を残像で回避し、アヤネが障壁を光で蒸発させる。


ドスッ! カンッ!!


モモの手刀と、アヤネのバット(寸止め)が同時にシルビアを捉えた。 氷の女王は、熱き革命の風と、聖女の光の前に崩れ落ちた。


『シルビア(3年)、戦闘不能! 全滅! 勝者、神楽坂アヤネ、および百獣モモォォォッ!!』


終了のブザーが鳴り響く。 VIP席で、俺は力尽きて椅子に沈み込んだ。


「……はぁ。やっと終わったか……」


鼻血が止まらない。精神疲労で指一本動かせない。 シンクが力を失って俺の膝に落ちた。 だが、モニターの中の二人は、最高の笑顔で手を振っていた。


6. 決着の夕暮れ


その日の夕方。学園の医務室。 俺は頭に冷却シートを貼り、ベッドに横たわるリリスの横に座っていた。


「……ん。あら、コタロウ。酷い顔ね」 目を覚ましたリリスが、俺を見て呆れたように笑う。


「誰のせいだと思ってる。お前がリンクを切るから、再接続するのに死ぬほど苦労したんだぞ」


俺は窓の外を指差した。 中庭では、アヤネとモモが、精霊たちや進化した光の大精霊リュミエール・アステリアと一緒にパレードを行っている。 生徒たちはアヤネを「Sクラスの聖女様」と呼び、拝んでいる。


「アヤネの精霊、進化したんだって?」


「ああ。光の大精霊(羽化)『アステリア』だ。俺のAIとシンクの解析によると、あと2回変身を残しているらしい」


「……バケモノね」


「違いない」


俺はため息をついた。 留年は回避した。最強の代表も決まった。


(第37話 完)

【第37話:あとがき】

お読みいただきありがとうございます! 「かっとばせーッ!」の一撃で、3年生の精鋭を一番星キラッにしてしまう聖女。……進化した**【リュミエール・アステリア】**の輝きは、漆黒の魔の森を白昼のように照らし出しました。


今回のハイライトを振り返ると:


リリスの特攻: 首席としての誇りと、金ラメ座布団による執念のカチコミ。


アステリアの羽化: 神々しい翼と、原子分解バットという圧倒的な暴力の調和。


勝利の代償: 無事に生き残った三人。しかし、その輝きが強すぎたせいで、運命の歯車は思わぬ方向へと動き出してしまいます。


コタロウは「これで俺の仕事は終わりだ」と安堵していますが、残念ながらそうはいかないようです。


【次回予告】 第37.5話(幕間):『禁忌の代償と、聖教会からの招待状』 歓喜に沸く学園の裏側で、コタロウを待ち受けていたのは「血判状」と「禁忌スキルの露見」。 「サボりたい」というささやかな願いが、国家規模の陰謀によって粉砕される瞬間をお見逃しなく!


次回、コタロウが正式に「地獄のマネージャー」に就任する運命の幕間へ。


【作者からのお願い】 物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると嬉しいです! 皆様の評価が、アヤネのデザート代と、コタロウの胃薬代に直結します!

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