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第3.5話:【AI講義】精霊は社畜である / 【学園生活】天上の聖女と地上の囚人

【第3.5話:まえがき】

前話で、Fクラスという名の「動物園」に足を踏み入れたコタロウ。 一方その頃、Sクラス「天上の庭」に連れて行かれたアヤネは、どのような学園生活を送っているのでしょうか?

「美味しいお菓子」と「きらびやかな同級生」。 一見すると天国のような環境ですが、コタロウのいない世界は、彼女にとって鳥籠の中と変わらないようです。

そして、物語は夜の男子寮へ。 なぜ、モモの魔法は爆発するのか? なぜ、この世界の精霊魔法は不安定なのか? その原因をAIが解析した結果、ファンタジー世界にあるまじき**「世知辛い真実」**が判明します。

今回は、魔法の概念を覆す「精霊労働組合」のお話です。

【 Sクラスの風景:天上の孤独 】


Fクラスでコタロウが、モモの指南役になろうとしていた頃。

学園の上空に優雅に浮かぶ浮遊島、「天上のセレスティア」。


選ばれし者しか足を踏み入れることを許されないSクラスの教室は、学び舎というよりは王宮のサロンだった。

床には真紅の絨毯が敷き詰められ、壁には名画が飾られている。

生徒たちは皆、金糸の刺繍が入った特注のローブを纏い、専属のメイドが淹れた最高級の紅茶を片手に談笑していた。


「――ですので、精霊とは心を通わせる『友』なのです! 分かりますか、友愛! そしてパッションです!」


教壇で暑苦しいほどに熱弁を振るっているのは、精霊魔法学部(通称:Sクラス)の創始者(の弟子)であるヴォルコット学部長だ。

彼は黒板をバンバンと叩き、チョークをへし折りながら叫んでいる。


その最前列。

特等席に座らされたアヤネは、目の前に置かれた山盛りの高級マカロンを見つめながら、深い深い溜息をついていた。


「(はぁ……。コタロウくん、どうしてるかなぁ……)」


周囲の貴族令嬢やイケメンたちが、アヤネに媚びるような視線を送ってくる。


「聖女様、この後のお茶会にいかがですか?」

「聖女様、僕の家の別荘へご招待しますよ」


皆、アヤネそのものではなく、「聖女」という肩書きを見ている。

ちやほやされるのは悪くない。ご飯も美味しい。

でも、ここには遠慮なく突っ込んでくれる幼馴染がいない。


「アヤネ君! 君なら分かるね? 精霊へのパッションが!」


突然、ヴォルコットに指名された。


「は、はいぃ!? え、えっと……バイブスぶち上げでぇ……?」


「素晴らしい! その通りだ! 精霊とはバイブス(振動)なのだ!」


アヤネの適当なギャル語返答に、教室中が「おおぉ……!」と感嘆し、拍手喝采に包まれる。

アヤネの瞳からハイライトが消えていく。


「(……帰りたい。コタロウくんのいるボロ校舎の方が、絶対楽しいよぉ……)」


輝かしいSクラスの牢獄で、聖女は孤独を噛み締めていた。



【 夜の講義:精霊労働組合について 】


その夜。Fクラスの男子寮。

といっても、俺の部屋は寮ですらない。

アヤネとの同室を拒否した結果、あてがわれたのは寮の廊下の突き当たりにある**「元・物置」**だ。


広さは四畳半。窓からは隙間風。だが、一人部屋というだけで俺にとってはスイートルームだ。

俺は煎餅布団の上で胡座をかき、脳内ディスプレイに表示されるAIの講義を受けていた。


【Lesson 5: 精霊魔法の社会学】


- 講師: カンニング・AI

- テーマ: なぜFクラスの生徒(特にモモ)は魔法が下手なのか?


「(才能がないからだろ? さっき教室で、お前のAR(拡張現実)映像で見たら、あいつ全身から真っ赤なエラー警告(魔力)を垂れ流して自爆してたぞ)」


俺は昼間の光景を思い出す。

肉眼では見えなかったが、AIの視覚サポートを通すと、モモの体からは煙突のように凄まじい量の魔力が噴出し、それが制御できずに爆発しているのがはっきりと見えていた。


【AI】 半分正解で、半分間違いです。


- 真実: 「精霊との雇用条件(契約)」がブラックすぎるからです。


画面に、疲れ切ったサラリーマンのような姿をした、半透明の小人(精霊)のイラストが表示される。彼らは「残業反対」「マナ上げろ」というプラカードを持っている。


【精霊魔法のメカニズム】


- 発注: 術者が詠唱を行う(業務命令)。

- 支払い: 術者が魔力を捧げる(賃金の支払い)。

- 納品: 精霊が現象を起こす(業務遂行)。


【現状のルミナス王国】


- 人間側は「精霊は道具」だと思っています。

- そのため、「安い魔力で、長時間働け!」というブラック契約が横行しています。ヴォルコット学部長の「パッション」などは、典型的な「やりがい搾取」です。

- 結果、精霊たちは現在、目に見えない**「サボタージュ(手抜き工事)」**を実行中です。


「(うわぁ……。世知辛いな、ファンタジー)」


夢も希望もありゃしない。


【モモ・イヌガミの場合】


- 彼女は魔力量が多すぎて、精霊に対し「大量の札束(魔力)を顔に叩きつける」ような雑な発注をしています。

- 精霊たちは「金払いはいいけど、指示が雑すぎて現場が混乱する!」とパニックになり、結果として暴発(自爆)しています。


「(なるほど。現場監督がいないわけか)」


【AI】 あなたの優位性:


- 無限回転(ペン回し): あなたには枯渇しない魔力資金があります。

- AI演算: 私が「精霊労働基準法」を完璧に遵守した契約書を一瞬で作成します。

- 戦略: 精霊に対し、**「相場の10倍の報酬」と「ホワイトな労働環境(明確な指示)」**を提示してください。


「(つまり、俺は魔法使いっていうか……)」


【AI】 Yes. あなたはこの世界で唯一の「ホワイト企業の経営者」になれます。


- 明日の実技授業では、この理論を応用してモモの魔力制御を行います。


「(……分かった。要するに、金(魔力)と契約で解決ってことだな)」


俺はニヤリと笑った。

ブラック企業から逃げてきた俺が、異世界でホワイト経営者として精霊をこき使う……いや、雇用するとは皮肉な話だ。

だが、これで勝算は見えた。


「よし、寝るぞ。明日は『猛獣使い』のデビュー戦だ」


俺はAIのウィンドウを閉じ、布団に潜り込んだ。

窓の外、遠くに見える女子寮(貴賓館)の明かりが消えるのを見届け、俺は泥のように眠った。


(第3.5話 完)

【第3.5話:あとがき】

お読みいただきありがとうございます!

「精霊=ブラック企業の社畜」説。 夢のあるファンタジー世界かと思いきや、実態は「やりがい搾取」と「賃上げ要求サボータジュ」が横行する、現代社会の縮図のような世界でした。

Sクラスの授業で叫ばれていた「パッション!」「バイブス!」というのは、要するに「給料(魔力)はケチるけど気合で働け!」という精神論だったわけですね。そりゃ精霊もグレます。

そんな中、無限の資金(魔力)と完璧な事務処理能力(【AI】)を持つコタロウは、精霊たちにとって**「救世主(超ホワイト企業の社長)」**となる素質を秘めていました。 「金と契約」で魔法を解決する……実にコタロウらしい、夢のない(?)攻略法です。

次回はいよいよ、この「ホワイト経営理論」の実践編! 落ちこぼれの人狼娘・モモを、コタロウがどうやって「更生」させるのか?

第4話『借金まみれの人狼を、放課後の特訓で懐柔してみた』。 コタロウによる「飴と鞭(物理的な意味ではない)」の教育指導にご期待ください!



【作者よりお願い】 「精霊の社畜設定が刺さる」「アヤネの適当なギャル語が好き」など、少しでも楽しんでいただけたら、ぜひブックマーク登録をお願いします!

また、下にある【☆☆☆☆☆】を**【★★★★★】**に染めて応援いただけると、精霊たちの基本給マナがアップし、物語の更新頻度が上がるかもしれません。 よろしくお願いいたします!

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