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カンニング・AI~Fランクの俺、カンニングで楽したい~なのにやり過ぎAIが深層ボスを倒し、自分の葬式中に英雄として帰還!ご褒美がエリートコースへの強制編入って正気ですか?俺のサボり人生を返してくれよ!  作者: とうふ
第2.5章:学年末休み編(後半)【北方リゾート、海底神殿編】

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Ep.43 第25話:空白の管理人室~次期管理人はジャンケンで決まる~

【第25話:まえがき】


いつもお読みいただきありがとうございます!


前回、第24話では、不格好な鉄のクルミ『ネモ・ウォルナット号』に乗り込み、水深500メートルの漆黒へとダイブしたコタロウ一行。


「地面に植えられた竜」というシュールな障害を、コタロウの地味すぎる特技【ゴミ箱シュート】で見事に突破し、ついに海底神殿への「Nice In!」を決めました。


命がけの潜航を終え、ようやく辿り着いた神殿の深部。


本来なら、そこには厳格な管理人が待ち構え、侵入者を阻む古代の罠が渦巻いているはず……。


しかし、重厚な扉の向こう側に広がっていたのは、全読者が「……は?」と声を漏らさずにはいられない、あまりにも世俗的で、あまりにも「酷い」光景でした。


シベリアをハワイに変えるための「悪魔の契約」が結ばれる第25話。どうぞ!

【本文】

1. 静寂の回廊と、生活感あふれる惨状


「……静かすぎるわね」


リリスが掌に灯した松明の魔法ウィッチ・トーチを掲げながら、不安げに呟いた。


俺たちは即席潜水艦**「ネモ・ウォルナット号」**を神殿内のドックに停泊させ、濡れた服から予備の防寒着に着替えて、海底神殿の内部を進んでいた。


外観は白亜の大理石で造られた荘厳な宮殿だったが、一歩中に入ると、そこはカビ臭く、どこか澱んだ空気が漂っていた。


本来なら、重要施設であるダンジョンコアを守るために、自律型の「ガーディアン(警備ゴーレム)」や防衛システムが稼働しているはずだ。しかし、廊下には人の気配も魔物の気配もなく、ただ俺たちの足音がコツコツと響くだけ。


「コタロウ様、あっちですぅ。突き当たりの部屋から、すごく強いマナの反応があります」


アヤネが通路の奥、一際巨大で装飾過多な両開きの扉を指差した。


扉の上には、古代語と共通語で**『管理人室スタッフルーム ※関係者以外立ち入り禁止』**と書かれたプレートが斜めに掛かっている。


「……行くぞ。何が出ても驚くなよ。暴走した古代兵器か、あるいは狂った管理人か……」


俺はスタイラス・ワンドを構え、全身の筋肉を緊張させて、重厚な扉をゆっくりと押し開けた。


中には、どんな凶悪な魔物や、暴走したシステムが待ち受けているのか――。


ギィィィ……。


扉が開く。そこにあったのは、俺たちの予想を遥かに裏切る光景だった。


「……は?」


そこは、六畳一間ほどの、酷く散らかった部屋だった。


床には読み捨てられた週刊漫画雑誌(地上からの漂着物だろうか?)が散乱し、机の上には食べかけのカップ麺の容器(恐らく供物として捧げられたもの)が積み上げられている。壁には「努力」「根性」と書かれた掛け軸が破れて垂れ下がっており、隅には脱ぎ散らかされたジャージのような服が山になっている。


まるで俺の寮の部屋……いや、それ以上に堕落しきった「独身男性の汚部屋」そのものだった。


「な、なんですかここ……? 本当に神殿の中枢ですかぁ?」


アヤネが鼻をつまむ。生活臭がすごい。


そして部屋の中央には、美しく青白く輝く巨大なクリスタル――このダンジョンの心臓部である**【ダンジョンコア】**が鎮座していた。


だが、そのコアに接続された石造りの制御盤コンソールには、信じられない光景があった。


制御盤には一本の巨大なレバーがあり、そこには『マナ出力調整』と書かれている。そのレバーが、なんとガムテープでグルグル巻きに固定され、「MAX(最大出力)」の位置に無理やり押し込まれていたのだ。


「……えーっと」


俺は呆然と立ち尽いた。「これが、マナ暴走の原因か?」


案内役の精霊が、顔面蒼白で駆け寄った。


「こ、これは……! 『自動オート運転モード』に固定されています! しかも出力調整機能が壊れたのか、物理的にレバーを固定して……これじゃあマナが垂れ流し状態です!」


「管理人は? どこにいるんだ? まさか魔物に食われたのか?」


精霊が、散らかった机の上にあった一枚の羊皮紙を、震える手で拾い上げた。そこには、殴り書きのような汚い字で、こう記されていた。


『寒すぎてやってられん。有給とって南の島へ温泉旅行に行ってくる。探さないでくれ。 P.S. 留守番はオート機能に任せた。上手くいくよう祈っててくれ』


「…………」


「…………」


俺たちは深い沈黙に包まれた。


魔物が凶暴化し、海辺の街の経済が死に、俺たちが命がけで深海500メートルまで潜ってきた原因。


それは、古代の呪いでも魔王の復活でもなく。


ブラック職場に耐えかねた管理人の、**「職場放棄バックレ」**だったのだ。


「ふざけんなぁぁぁぁッ!!」


俺の魂の絶叫が、海底神殿に虚しく木霊した。


「俺だってサボりてぇよ! でもここまで迷惑かけてサボるやつがあるか! 二度と帰ってくるなバカヤロー!!」


---


2. 精霊王の怒りと、残酷な命令


「……なるほど。そういうことか。理解したわ」


俺たちはすぐに、案内人が持っていた通信用魔導具「水鏡」を使って、地上のセレインに報告を入れた。


空中に投影されたセレインのホログラムは、その美しい顔に青筋を浮かべ、般若のような形相になっていた。背景の氷の城が、彼女の怒りに呼応してガラガラと崩れ落ちているのが見える。


『あのバカ……! 捕まえたら極刑よ! 水責め百年の刑のあと、永遠にトイレ掃除の刑に処してやるわ!』


セレインの怒号で映像がノイズ混じりに乱れる。


「まあまあ、落ち着いて。とりあえずガムテープを剥がして、レバーを『通常』に戻したからマナの暴走は止まった。これで一件落着だろ? 俺たちは帰るぞ」


俺が踵を返しようとすると、セレインが冷徹な声で呼び止めた。


『待ちなさい』


「……はい?」


『帰るのは許可するけれど……誰がダンジョンを守るの?』


嫌な予感がした。「え? そりゃあ、あんたの部下が……」


『管理人が不在のままでは、またいつシステムが誤作動するか分からないわ。それに、一度暴走したコアの微調整には、常に誰かが張り付いてマナを監視する必要がある』


セレインは、無慈悲な命令を下した。


『新しい管理人を精霊界から派遣するまで、最短で一週間かかるわ。……それまでの間、そこにいる**「誰か」**が、臨時管理人として住み込みで留守番をしなさい』


「「「えっ」」」


全員の動きが止まった。ここ海抜マイナス500メートル。


窓の外は漆黒の闇。水圧できしむ神殿。娯楽なし、ネットなし、湿気100%のカび臭い部屋。そして何より、極寒。


「……俺は嫌だぞ。人間だし。学生だし」


俺は即座に拒否権を発動した。


「私も嫌よ! こんなジメジメしたところじゃお肌が乾燥しちゃうわ!」


リリスも拒否。


「私もお魚がないと死んじゃいますぅ! ご飯がおいしくないところは嫌です!」


モモも拒否。


「私も無理ですぅ! 暗いのは怖いですぅ! お化けが出そうですぅ!」


アヤネも涙目で拒否。


全員が首を横に振る。すると、セレインの視線が、俺たちの後ろに控えていた**【精霊調査団】**の面々に向けられた。


『……分かっているわね? 貴女たちの中から選びなさい』


「ヒッ……!」


精霊たちが息を呑んだ。彼女たちにとっても、ここは「精霊界の左遷先」「最果ての監獄」として有名な、最悪のブラック職場なのだ。


---


3. 仁義なき戦い、精霊ジャンケン


「こ、公平に決めましょう……!」


リーダー格の精霊(案内人)が、震える声で提案した。彼女の顔色は、幽霊のように青白い。


「精霊界の掟に従い……**『マナ・ジャンケン』**で勝負です!」


「「「望むところだ!!」」」


精霊たちが円陣を組んだ。その瞬間、部屋の空気が張り詰めた。深海の圧力以上に重い、命がけのプレッシャーが場を支配する。


負けた者は、この暗く冷たい牢獄で、一週間も「レバーの監視」という虚無の作業に従事せねばならない。それは死刑宣告にも等しい。


「い、いくわよ……! 最初はグー……!」


全員の目が血走っている。彼女たちは「水」の精霊だ。本来なら穏やかで慈愛に満ちた性格のはずだが、今の彼女たちは生き残りをかけた修羅だ。


「ジャン・ケン……!!」


「「「ポイッ!!!」」」


それぞれの精霊が、手から魔力を放出する。


水球グー」「水流チョキ」「水膜パー


「ああっ!?」


「勝った! 私の勝ちよ! さよならみんな!」


「くそっ、あと少しだったのに!」


一回戦、二回戦……。次々と勝者が決まり、歓喜の声を上げて勝ち抜けゾーン(俺たちの後ろ)へ逃げていく。


そして最後に残ったのは――――。


「……あ、あぁ……」


一番最初に俺たちを案内してくれ、ここまで丁寧に解説してくれた、あのリーダー格の精霊だった。


彼女は膝から崩れ落ち、絶望のあまり半透明の体がさらに薄くなっていた。


「嘘よ……嫌よ……。こんな暗くて、寒くて、何も無いところで一週間も……カップ麺だけで過ごすなんて……」


他の精霊たちは「お疲れ様!」「お土産持ってくるね!」「元気でね!」と無責任に励ましているが、彼女の耳には届いていない。彼女は床に突っ伏し、子供のように足をバタバタさせて泣き叫んだ。


「嫌だぁぁぁッ! 寒いのはもう嫌ぁぁぁッ!!」


「……おいおい, いい大人が泣くなよ」


俺が見かねて声をかけるが、彼女の嘆きは止まらない。


「だってぇ! ここ, 暖房もないんですよ!? お風呂もないし! ただ広いだけで何もないし!」


彼女は涙目で俺を睨んだ。その目は本気だった。


「せめて! せめてここが、**『ハワイみたいな常夏の海』**だったら、私だって喜んでやるのにぃぃ! 暖かくて、明るくて、ビーチでトロピカルジュース飲みながらコアをいじるなら、天国なのにぃぃ!」


その言葉を聞いた瞬間。


ピクリ。


俺の耳が反応した。そして、俺の脳内で、バラバラだったピースがカチリと音を立てて嵌まった。


『ハワイみたいな常夏の海』


『ダンジョンコア(環境制御装置)』


『聖女アヤネ(隔離結界)』


俺はゆっくりと、泣き叫ぶ精霊に歩み寄った。


「(【AI】。今の発言、実現可能性は?)」


【AI】 解析: 条件は揃っています。理論上、可能です。


俺はニヤリと笑った。


---


4. 悪魔の提案、あるいは救世主


「……なぁ、アンタ。名前は?」


俺はハンカチを差し出した。


「ぐすっ……アクアです……」


「アクア。今, なんて言った?」


「え? だから、寒くて嫌だと……」


「違う、そのあとだ。『常夏の海ならやる』と言ったな?」


アクアはキョトンとして涙を拭った。


「え、ええ。言いましたけど……そんなの夢物語です。ここは北の深海ですよ? 水温マイナスですよ? コアの出力で水温を上げることはできますが、そんなことしたら外の生態系が壊れて、セレイン様に消されます」


俺はスタイラス・ワンドを指先で回しながら、悪魔が契約書を差し出すような顔で言った。


「もし、俺がここを**『常夏』**に変えたら……お前、文句言わずに管理人の仕事をするか?」


「は? ……常夏に?」


アクアは俺の頭がおかしくなったのかという目で見た。「無理ですよ。さっきも言った通り、外への影響が……」


「外を変えるんじゃない。**『ここだけ』**を変えるんだ」


俺は背後のアヤネを手招きした。


「アヤネ、出番だ。お前の最強スキル**【聖域サンクチュアリ】**……あれの仕様について確認したい」


「ふぇ? サンクチュアリですかぁ?」


アヤネが首を傾げる。「はい、あれは『悪いものを寄せ付けない』結界ですけどぉ……中に入った人はポカポカするって言われますぅ」


「【AI】。解説頼む」


【AI】 解説: 【聖域サンクチュアリ】の本質は、指定空間を外部から完全に隔離し、術者の理想とする環境に書き換える『世界改変魔法』の一種です。


【AI】 結論: つまり、結界内部の物理法則や気候は、術者のイメージ次第で自由に変更可能です。環境を切り離せば、内部を真夏にしても、外部(極寒の海)への熱伝導はゼロになります。


「聞いたか、アクア」


俺はアクアの肩に手を置いた。


「アヤネの結界で、この神殿と、地上の街周辺のビーチだけを囲う。そして、ダンジョンコアの膨大なマナエネルギーを使って、結界内部の気候設定を**『真夏』**に固定する」


「なっ……!?」


アクアが目を見開いた。「聖女の結界で環境を切り離して……コアで空調管理するってことですか!? そ、そんなことしたらアヤネ様の魔力が尽きてしまいます!」


「そこも計算済みだ」


俺はスタイラス・ワンドの先端を、ダンジョンコアに向けた。


「俺のスタイラスを使って、アヤネの『サンクチュアリ』のスキル権限を、一時的におアクアに委譲する。そして、結界維持に必要な魔力を、このダンジョンコアから直接供給する**『バックドア(裏口バイパス)』**を作る」


「ええええええッ!?」


アクアが絶叫した。「ダ、ダンジョンコアのハッキング!? しかも精霊へのスキル譲渡!? そ、そんなことしたら……!」


「バレたらヤバいか? でも、お前はここで一週間、極寒の地獄でカップ麺をすするか……それとも、**『常夏の楽園』**でトロピカルジュースを飲むか。どっちがいい?」


俺はアクアの顔を覗き込んだ。


「どうだ? もし成功すれば、お前は罰ゲームから一転、**『誰にも邪魔されないプライベート・ビーチ』**で、一週間の有給バカンスを楽しめるってわけだ。……もちろん、俺たちも一緒に遊ばせてもらうがな」


アクアの目が揺れた。絶望の色が消え、代わりに強烈な「欲望」の光が宿る。彼女もまた、セレインの部下として激務に追われる中間管理職。バカンスという言葉の響きには抗えない。


「……やります」


アクアは立ち上がり、俺の手をガシッと握った。その握力は凄まじかった。


「やりましょう! コタロウ様! 私、ハワイに行きたいです! ビキニ着てカクテル飲みたいです! 日焼け止め塗って日光浴したいですぅぅぅ!」


「交渉成立だな」


俺は振り返り、アヤネ、リリス、モモ、順に相棒に向かって宣言した。


「作戦開始だ。これより、この極寒のシベリアを、**地上の楽園ハワイ**へと強制アップデートする!」


こうして、史上類を見ない**「ダンジョン環境改竄計画」**が幕を開けた。


全ては、俺たちが(そして精霊が)快適にサボるためだけに。セレインが知ったら泡を吹いて倒れるであろう、禁断の秘技が今、発動しようとしていた。


(第25話 完)

【第25話:あとがき】


読んでいただきありがとうございました。


管理人の不在理由が**「ブラック職場からのバックレ」で、レバーが「ガムテープ固定」**。 あまりにも世俗的すぎるトラブルに、海底神殿の神秘性がカップ麺と一緒に霧散しました。


今回のポイント:


• 管理人の汚部屋: まさかの独身男性スタイル。コタロウが絶叫するのも無理はありません。


• 精霊ジャンケン: 負けた精霊アクアの絶望。しかし、それがコタロウの「悪知恵」に火を付けました。


• ハワイ計画: 聖女の結界とダンジョンコアのハッキング。バカンスのためなら、神の領域すら書き換えるのが我らが主人公です。


負けた精霊アクアを相棒に、海底と地上の両方を「常夏の楽園」に変えるという暴挙に出たコタロウ。


聖女アヤネの理不尽なまでの奇跡の力と、コタロウのハッキングが合わさったとき、極寒の北海はどう変貌するのでしょうか。


次回、第26話。 【聖女の奇跡と真夏の楽園:環境破壊は結界の中で】 ついに実現する「真夏のバカンス」。水着に着替えた一行を待ち受けるのは、最高の休息か、それとも精霊王の激怒か。


次回もよろしくお願いします!


---


【作者よりお願い】


「管理人のバックレ理由が世俗的すぎる」「ガムテープ固定の力技に笑った」など、少しでも楽しんでいただけたら、ぜひブックマーク登録をお願いします!


また、下にある【☆☆☆☆☆】を**【★★★★★】**にして評価いただけると、アクアのバカンス予算マナが少し増え、管理人室の汚部屋が0.1%くらい綺麗になるかもしれません。応援よろしくお願いいたします!

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