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カンニング・AI~Fランクの俺、カンニングで楽したい~なのにやり過ぎAIが深層ボスを倒し、自分の葬式中に英雄として帰還!ご褒美がエリートコースへの強制編入って正気ですか?俺のサボり人生を返してくれよ!  作者: とうふ
第2.5章:学年末休み編(後半)【北方リゾート、海底神殿編】

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Ep.38 第22話:水の精霊王との謁見:タダより高い温泉はない

【第22話:まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回、第21話では、資本主義の勝利者(成金)となったコタロウが「南国の楽園」を夢見て旅立ちましたが……扉を開けた先に待っていたのは、マイナス15度の殺人的ブリザードでした。ハワイだと思ったらシベリア。シャツ一枚で凍りついたコタロウの叫びは、虚しく極寒の空に消えていきました。

今回の第22話は、そんな死の淵から一転。命からがら逃げ込んだ先で待っていたのは、幻想的な氷の館と、この地を統べる絶対者、水の精霊王セレイン。

そして、日本人のDNAを刺激する「究極の接待」――雪見風呂とカニ三昧!

「ハワイじゃなかったけど、これはこれでアリだな……」

そう言って湯船でとろけるコタロウですが、忘れてはいけません。

タダより高い温泉ものはない。

胃袋を掴まれ、骨の抜きにされた一行に突きつけられる「あまりにも冷酷な請求書」とは?

甘美な罠の香りが漂う、湯気と殺気の第22話。どうぞ!

【本文】

1. 極寒の街と、氷の館

「……寒い。痛い。誰か、俺にファイアーボールを撃ち込んでくれ」


リゾート地(極寒)に到着して一時間後。 俺たちは、海辺の街にある高級防寒具店で、ガント親方の金に物を言わせて最高級の「雪男イエティの毛皮コート」を全身に装備していた。それでも、顔に当たる風は刃物のように鋭い。


「コタロウ様ぁ、元気出してくださいよぉ。街並みは綺麗ですよぉ?」


アヤネが白い息を吐きながら、俺の背中をさする。 確かに、雪化粧をした港町は風情がある。レンガ造りの建物に積もる雪、ガス灯の淡い明かり。絵葉書になりそうな光景だ。だが、俺の心はハワイ(概念)に置き忘れたままだ。


「……とりあえず、学園長との約束ノルマを果たすぞ。さっさと挨拶して、一番高い宿で冬眠するんだ」


俺たちは街を見下ろす高台へと向かった。 そこには、学園長が言っていた**『水の精霊王セレイン』**の住まう館がある。 断崖の上に建つその洋館は、壁も柱もすべてが透き通るような「魔法氷」で造られており、夕日を受けて幻想的に、そして寒々しく輝いていた。

「うわぁ、綺麗……! お城みたい!」


リリスとモモが歓声を上げるが、俺には「巨大な冷蔵庫」にしか見えない。 俺は凍える手でインターホン(魔導ベル)を鳴らした。


『……どちら様かしら?』


スピーカーから響く声は、美しくも冷徹で、まるで氷柱が落ちた音のようだった。


「王立精霊学園の使いの者です。学園長からの手紙を預かってきました」


『……入りなさい』


重厚な氷の扉が、音もなく左右に開いた。



2. 精霊王と聖女

通されたのは、天井の高い謁見の間だった。 床は鏡のように磨かれた氷。壁には精緻な雪の結晶のレリーフ。 そして部屋の中央、一段高い場所に設置された氷の玉座に、その女性は座っていた。


流れる水そのもののような、透き通る水色の長い髪。 深海の色を宿した、底知れぬ瞳。 ドレスのように身体を包むのは、実体化した高密度のマナの衣。 この地を統べる絶対者、**【水の精霊王・セレイン】**だ。

彼女は頬杖をつき、気だるげに俺たちを見下ろした。 その視線に晒された瞬間、ただでさえ寒い室温がさらに5度ほど下がった気がした。


「……遠路はるばるご苦労様。その狸親父(学園長)からの手紙、受け取るわ」


セレインが指を動かすと、俺の手から手紙がふわりと浮き上がり、彼女の手元へと吸い込まれた。 彼女は封蝋を指先で弾き飛ばし、中身を一瞥すると、鼻で笑って燃やしてしまった。


「ふん。相変わらず中身のない挨拶文ね。……で? 用件はそれだけ?」


セレインの視線が、俺たちをゴミでも見るような冷ややかなものに変わる。 噂通りの人間嫌いだ。このままでは「さっさと帰れ」と氷漬けにされかねない。


「(やばい、帰りたい。今すぐコタツに入りたいが、ここで追い返されたら学園長への報告がマズい)」

俺は学園長の言いつけを思い出した。 『セレイン様に、必ずアヤネ君を紹介しなさい』


俺は背後に隠れてモジモジしていたアヤネの首根っこを掴み、グイッと前へ押し出した。


「えっ、あわわっ! コタロウ様ぁ!?」


「セレイン様。こいつが、今回の手土産……じゃなかった、同行者の聖女アヤネです。精霊に愛される特異点ですので、以後お見知り置きを」


「ふぇっ!? は、は、初めましてぇ! アヤネですぅ! よ、よろしくお願いしますぅ!」


アヤネが慌てて深々と頭を下げる。 その瞬間、アヤネの内側から溢れ出る無垢な「聖女のオーラ」が、部屋の冷たい空気をふわりと温めた。館に仕えていた下級の水精霊たちが、アヤネの周りにわらわらと集まり始める。


それを見た瞬間、セレインの絶対零度の瞳が、驚きに見開かれ、そして優しく和らいだ。


「……ほう。貴女が噂の『無自覚の聖女』ね。……なるほど、私の配下の精霊たちが警戒心もなく懐くわけだわ」


セレインは玉座から立ち上がり、氷の階段を降りてアヤネの前に立った。 「可愛らしい子ね。……よろしい。私は人間など唾棄すべき存在だと思っているけれど、精霊の友人を無下にはできないわ」


どうやら第一関門は突破したらしい。 俺がホッと胸を撫で下ろしていると、セレインの視線が再び俺に戻った。 今度は優しさなど微塵もない、すべてを見透かすような鋭い眼光だ。


「それに、そちらの男……神木コタロウと言ったかしら。貴方のことも知っているわよ」


「……え?」


「公爵家のダンジョンでの一件。そして先日の深層……『クリスタル・イーター(奔流の調停者)』を討伐、いや『捕食』し、あのマナの奔流を脱出した規格外のFランク。……違うかしら?」


「ッ……!?」


俺の背筋に冷や汗が流れた。なぜそれを知っている? 深層での出来事は、学園の上層部と一部の関係者しか知らないはずだ。


「ふふっ、私の情報網を甘く見ないことね。水はどこにでも流れる。世界中の水脈は私の耳であり目なのよ」


セレインは妖艶に、しかし恐ろしく微笑んだ。 「まあいいわ。貴方の底知れぬ力……興味深いけれど、今は問わないでおきましょう。遠路はるばるよく来たわね。歓迎するわ」



3. 極楽の温泉宿「竜宮」

「歓迎……ですか?」


俺が警戒して身構えると、セレインはパンと手を叩いた。


「ええ。貴方たちは学園長からの紹介、そして聖女アヤネ様ご一行よ。この極寒の地で凍えている客人を放置したとあっては、精霊王の名折れだわ」


セレインが指を鳴らすと、窓の外に一台の豪華な送迎馬車が現れた。


「私の馴染みの宿を用意させたわ。今日はそこで旅の疲れを癒やすといいでしょう」


案内されたのは、街の最奥、海に面した断崖絶壁に建つ、街一番の老舗高級旅館**『竜宮りゅうぐう』**だった。 和風建築の重厚な門構えに、手入れの行き届いた庭園。そしてロビーに入った瞬間に香る、上品なお香の匂い。


「いらっしゃいませ。セレイン様より伺っております」


仲居さんたちの丁寧な出迎えを受け、俺たちは最上階の特別室に通された。


「す、すげぇ……!!」


襖を開けた瞬間、俺は言葉を失った。 30畳はあろうかという広い客室。そして窓の外のテラスには――専用の**「源泉かけ流し露天風呂」**が湯気を上げていた。


岩造りの湯船からは、こんこんと透明な湯が湧き出し、目の前には(極寒だが)雄大な冬の日本海……いや、北方の海が一望できる。 雪が舞う中、湯気越しに見る海。これぞ「雪見風呂」。日本人のDNAに刻まれた、究極の贅沢だ。


「きゃーっ! 温泉だぁ! すごーい!」


「お部屋も素敵! カニ料理の準備もできてるそうよ!」


女子たちが歓声を上げて浴衣を選び始める中、俺もたまらず服を脱ぎ捨てた。


「悪い、一番風呂はいただくぞ!」


俺はテラスへ飛び出し、極寒の外気に肌を晒してから、熱い湯船へと滑り込んだ。


「ふはぁぁぁぁ……生き返るぅ……」


ドボンと湯に浸かった瞬間、俺の魂が溶け出した。 冷え切った手足の末端に、ジンジンと熱が染み渡る。頭には冷たい雪が降り注ぎ、体はポカポカ。この「頭寒足熱」のバランスがたまらない。


俺は懐から、防水仕様の(というかミスリル製なので錆びない)スタイラス・ワンドを取り出した。 湯船にプカプカと浮かせ、指先でクルクルと回しながら、俺は灰色の空を仰いだ。


「ここが天国か……。ハワイじゃなかったけど、これはこれでアリだな……」


「カンニング・AI。この湯の成分は?」


【AI】 解析: ナトリウム・塩化物強塩泉。疲労回復、冷え性改善、美肌効果あり。極上です。


「だろうな。……ああ、最高だ」


俺は完全に油断していた。 この世に「タダより高いものはない」という真理を、湯気と一緒に脳内から蒸発させていたのだ。この極上の接待が、逃げ場をなくすための「撒き餌」であることに気づかずに。



4. 宴の終わりと請求書

夜。部屋の中央には、目も眩むような豪華絢爛な海鮮料理が並んだ。


大皿からはみ出すほどの巨大な「北海タラバガニ(魔獣キングクラブ)」のボイル。 宝石のように輝くイクラのこぼれ盛り。 脂が乗りすぎて醤油を弾く寒ブリの舟盛り。 アワビの踊り焼きに、ウニの軍艦巻き。


「うまい! なんだこのカニ、身が詰まりすぎてて甘い!」


俺はカニの足をへし折り、無言で貪り食った。


「お酒が進みますぅ〜! コタロウ様もどうぞぉ!」


「おかわりだ! どんどん持ってこい! 金ならあるんだ!」


俺たちは食って食って食いまくった。 ガント親方の金があるから、追加料金も怖くない。俺は成金の余裕で宴を楽しんでいた。これこそが「資本主義の勝利者」の特権だ。


そして数時間後。 全員が満腹で動けなくなり、畳の上でトドのように転がっていた時――襖が静かに開いた。


「楽しんでいただけたかしら?」

現れたのは、夜会用のドレスに着替えたセレインだった。 彼女は優雅に微笑みながら、俺の前の座布団に正座した。


「ああ、最高だったよ。こんな美味いカニは初めてだ」


俺は楊枝を咥えながら、太っ腹な態度で言った。 「セレイン様、この宿の手配には感謝する。支払いは俺が持つから、請求書を回してくれ」


俺は懐から、金貨が詰まった革袋を取り出そうとした。 しかし、セレインは扇子でそれをピシャリと制した。


「お金はいらないわ。この宿も料理も、すべて私の『奢り』よ」


「え? マジで?」


「ええ。貴方たちは大切なお客様だもの」


「太っ腹だな! さすが精霊王! じゃあ、お言葉に甘えて……」


俺が笑顔で革袋をしまおうとした、その時だ。

「――その代わり」


セレインの瞳が、スゥッと細められた。 その瞬間、部屋の温度が急激に下がり、窓ガラスにピキピキと霜が走った。温泉の湯気が凍りつくような、冷徹なる殺気にも似たプレッシャー。


「貴方たちに、一つだけ**『仕事クエスト』**をお願いしたいの」


「……仕事?」


嫌な予感がした。俺は後ずさりする。 「い、いや、俺たちはバカンスに来ただけで……」


「この海には、私が管理する古代の海底ダンジョンがあるのだけれど……そこの**『管理人』と連絡が取れなくなってしまったの**」


セレインは淡々と、しかし獲物を逃がさない捕食者の目で俺を見据えた。 「管理が疎かになっているようで、ダンジョンコアのマナ制御も乱れているわ。その影響で海中の魔物が凶暴化し、この街の漁業にも甚大な被害が出ていてね。……先ほど貴方たちが食べたカニも、漁師たちが命がけで獲ってきたものよ?」


「うっ……」


胃の中のカニが急に鉛のように重くなった気がした。


「本来なら私の部下の精霊調査団を送るのだけれど、今回は異常事態。未知のトラブルに、部下の精霊たちだけでは対処できない恐れがあるわ。……そこで、深層の主すら撃破した『英雄』である貴方たちの出番というわけ」



5. 逃げ場なしの契約

「いや、無理です。断ります」


俺は即答した。 「俺はFランクの学生です。そんな危険な任務、荷が重すぎます」


「あら、ごめんなさい。もう『予約』は完了しているの」


セレインはニッコリと、花の咲くような(しかし氷のような)笑顔を見せた。


「この宿の宿泊代、宴会代、温泉の入湯税。……これらを正規料金で請求してもいいけれど、それよりも」

セレインは懐から、一枚の紙を取り出した。 それは、まだ白紙の**「学園長への手紙」**だった。


「学園長への『紹介状の返事』。私がここに何を書くか……コタロウ君には興味がないかしら?」


「……ッ!?」


「『コタロウ君たちは、街の危機を救うためにとても良く働いてくれました』と書くか……それとも、『ただ飯を食って、街の危機を見捨てて逃げました。礼儀知らずの生徒です』と書くか」


「(……この女、完全にハメやがった)」


外堀は埋められていた。 飯は食った。恩は売られた。そして学園長という人質も取られている。 ここで断れば、学園での立場が悪くなるだけでなく、最悪の場合「精霊王の不興を買った」として退学処分もありえる。


「それに、この問題を解決しないと、この街の海鮮料理はもう食べられないわよ? 漁師たちが海に出られないから。明日の朝食の焼き魚もナシね」


「なっ!?」


「それは困ります! 朝ごはんは楽しみにしてたのに!」


モモとリリスが即座に反応した。食い物の恨みは怖い。 さらにセレインは、アヤネに向かって微笑みかけた。


「聖女アヤネちゃん。貴女も、魔物に怯える街の人々を放っておけないわよね?」


「はいぃ! もちろんですぅ! 私でよければお手伝いしますぅ!」


聖女アヤネは即答だ。チョロすぎる。いや、彼女にとってはそれが正義なのだ。 俺は頭を抱えた。味方はいない。逃げ場もない。全方位包囲網だ。


「……はぁ。分かったよ。負けだ、あんたの勝ちだ」

俺はやけくそ気味に承諾した。 「やればいいんだろ、やれば! ……ただし! 成功報酬は弾んでもらうぞ。この宿のタダ券一年分とか、土産のカニ100杯とかだ!」


「ふふっ、交渉成立ね。期待しているわ、コタロウ君」


セレインは満足げに立ち上がり、ドレスの裾を翻した。 「詳しい状況は、明日の朝、港で部下の精霊に説明させるわ。……ああ、最後に一つ言っておくけれど」


セレインは部屋を出て行く直前、振り返って悪戯っぽく言った。


「ダンジョンの入り口は深海にあるから、頑張って潜ってね」


「……は?」

バタン、と襖が閉じた。 残された俺たちは、暖かい部屋の中で凍りついた。


「おい……今、深海って言わなかったか?」


「言いましたね。サラッと」


俺はおそるおそる窓の外を見た。 そこにあるのは、荒れ狂う冬の海。流氷がぶつかり合い、波しぶきが凍りついている地獄の光景。 船など出せば一瞬で転覆し、海に入れば数分で心臓が止まる。そこに潜れだと?


「(……カンニング・AI。生存確率は?)」


【AI】 解析: 現在の水温はマイナス2度。生身での潜水は不可能です。即死です。何らかの耐圧・潜水手段サブマリンがなければ、到達不可能です。


「潜水艦なんて、この世界にあるわけないだろぉぉぉッ!!」


俺の悲痛な叫びが、高級旅館「竜宮」に木霊した。 やはりタダより高いものはない。極上のカニと温泉の代償は、命がけの「極寒深海ダイビング」だったのだ。

(第22話 完)

【第22話:あとがき】

お読みいただきありがとうございました。

「潜水艦なんて、この世界にあるわけないだろぉぉぉッ!!」 はい、コタロウの悲痛な叫びで幕を閉じた第22話。 最高級のカニと絶景の露天風呂。その代償が「冬の荒海、水深500メートルへの命がけダイビング」だなんて、セレイン様、精霊王というよりやり手のブラック経営者ですね。

今回の注目ポイント:

• セレインの「ハメ」: 聖女アヤネをダシにしつつ、完璧に外堀を埋めて「強制予約」を完了させる辣腕。

• コタロウの油断: 温泉の湯気に脳を溶かされ、警戒心を完全に蒸発させてしまったサボり魔の末路。

• 絶望のミッション: 魔法も生身も通じない深海。行けば「冷凍カニ」の仲間入り確定です。

しかし、ここで大人しく引き下がる神木コタロウではありません。 布団の中で涙を拭いながら、彼は閃きます。「AIに全部丸投げしてハッキングさせれば、俺はここから一歩も動かずに解決できるんじゃないか?」と。

次回、第22.5話。 【幕間】コタロウの最後の足掻き ~シュレディンガーのサボり魔~ サボるために鍛え上げたAIが、まさかの「量子力学的な屁理屈」でコタロウを絶望の淵へと叩き落とします。

【作者からのお願い】 カニの美味しさと引き換えに深海行きが確定してしまったコタロウを応援してくださる方は、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**をいただけると大変励みになります! 皆様の星の数だけ、コタロウの防寒着のヒーター出力が上がり、AIの口の悪さが(ほんの少しだけ)改善されるかもしれません。

次回もよろしくお願いします!

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