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第7話:筆記試験は「クソゲー」だが、俺には透明なカテキョ(精霊)がいる

【第7話:まえがき】

前話の「学部長会議」で決定された、悪夢の難易度設定「ナイトメア」。 いよいよ、その理不尽な試験が幕を開けます。

「数字が勝手に動く数学」や「文字が米粒より小さい契約書」。 もはや学力を問う気など微塵もない「クソゲー」に対し、Fクラスの生徒たちは次々と白い灰になって散っていきます。

しかし、コタロウには秘策がありました。 それは、図書館でスカウトした「各科目のスペシャリスト(精霊)」たちによる、前代未聞の集団カンニング(?)。 ペン回し一つで精霊を操り、悪意ある難問を次々と攻略していく「不正スレスレの頭脳戦」が始まります。

1. 決戦の朝、見えない家庭教師


学年末進級試験、初日。

窓の外には雲ひとつない快晴が広がっていたが、Fクラス「監獄」の生徒たちが向かう大講堂への道は、まるで重苦しい霧に包まれているかのようだった。


「あぁ……終わった。どうせ俺らなんて、捨て駒なんだ」

「カオス数秘術の赤点回避率、過去のデータだと3%らしいぜ……」


背中を丸め、この世の終わりのような顔をして歩くクラスメイトたち。それはさながら、処刑台へと向かう囚人の葬列そのものだった。

だが、その暗い列の中で、俺たち「Fクラス脱獄同盟」の3人だけは、異質なオーラを放っていた。


「……ふふっ。モモ、昨晩の糖分補給は十分か?」


「オゥ! 連日のアヤネからの差し入れスイーツパワーで、脳みそが肉みたいにパンパンだぜ! 消化準備万端だ!」


「……非論理的な比喩だけど、コンディションは最適化されているわ。私の脳内CPUはオーバークロック状態よ」


俺、コタロウとモモ、リリスの3人は、周囲の沈鬱な空気を切り裂くように不敵な笑みを浮かべて席に着く。


一方、学園の最高エリートである**「Sクラス」の10名**は、この場にいない。彼らには「筆記試験免除・無条件で満点」という、この世界の階級社会を象徴するような不公平極まりない特権が与えられているからだ。


「(ふん、見てろよ特権階級。俺たちは俺たちのやり方で、その牙城を崩してやる)」


俺たちの周囲には、一般の生徒には見えないが、数匹の小さな影がフワフワと浮遊していた。

これらは図書館合宿中、カンニング・AIが「試験対策に使える」と判断し、俺の魔力(ペン回し)で買収契約を結んだ**「図書館の住人(精霊)」**たちだ。

彼らは俺の放つ高密度のマナを目当てに、やる気満々でスタンバイしている。


カツーン、カツーン……。


冷ややかなヒールの音が講堂に響き渡った。

試験監督として現れたのは、鉄仮面のような無表情を崩さない副学園長、マグダだった。彼女は教壇に立つと、氷のような視線でFクラスの生徒たちを見下ろした。


「Fクラスの皆さん、席につきなさい。筆記試験は全4科目、合計1000点満点です。……まあ、貴方たちがどれだけ足掻こうと無駄な努力ですけれど。結果は見えていますから」


マグダは時計を確認し、嘲るように口元を歪めた。

だが、俺は視線を逸らさず、胸ポケットのボールペンを指先でカチリと鳴らした。


(……無駄な努力? 甘いな、副学園長。こっちは総力戦なんだよ)


「それでは、午前の部、1限目を開始します。始め!」


2. 1限目:精霊契約法概論と「重箱の隅つつき」


『問1:精霊労働基準法第12条第4項における「ただし書き」の適用範囲について、以下の契約書の不備をすべて指摘せよ』


配られた問題用紙を見て、あちこちから悲鳴が上がった。


「うわぁっ!? 文字ちっせぇ!」

「なんだこの二重否定! 『許可しないことはないとは言えない』ってどっちだよ!?」

「注釈が米粒より小さいぞ! 読ませる気ねえだろ!」


問題文は、悪徳業者の契約書のように極小文字の注釈だらけ。読むだけで脳が焼き切れる、精神を消耗させるための「罠」だらけの悪問だ。まともに読めば、制限時間内に読み終わることすら不可能だろう。


「(……へっ、想定通りだ)」


俺はペンをゆっくりと回し始めた。【無限回転(ペン回し)】モード:マナ・サプライ。

指先から散布された金色の粒子に惹かれ、問題用紙の上に、四角い石版に顔がついた精霊がドスンと着地した。


【土の精霊亜種:六法ロッポウ

図書館でビブリオの「契約書チェック係」をしていた、堅物で口うるさい爺さん精霊だ。

性格は**【重箱の隅つつき】**。ルールの不備を見つけることに無上の喜びを感じる、試験における最強のリーガル・アドバイザーだ。


「フン! なんじゃこのふざけた契約書は! 穴だらけじゃわい! 作成者の顔が見たいのぅ!」


ロッポウは問題用紙の上を滑るように移動し、持っていた杖でバンバンと紙面を叩き始めた。


「ここ! この『ただし』は無効じゃ! 5年前の判例改正で否定されとるわい!」

「ここもじゃ! 文字サイズが規定より0.5ポイント小さい! 詐欺じゃ! 視力検査でもさせる気か!」


ロッポウの声は俺たちにしか聞こえない。

リリスはロッポウの指摘をヒントに、さらに高度な法的解釈を記述欄に書き加えていく。

モモは「爺さんが叩いたところ=悪いやつ(正解)!」という野生の勘で、迷いなく選択肢を塗りつぶしていく。

俺はカンニング・AIでロッポウの声を視覚化し、淡々とマークシートを埋めた。


「(よし、順調だ。わざと何問か間違えて7割ラインを……いや、ロッポウの勢いが凄すぎて止まらんな)」


3. 2限目:カオス数秘術と「リズムゲーム」


続いての科目は、さらに凶悪だった。

問題用紙の数字が、特殊な魔法インクによって**「ゆらゆらと動いている」**のだ。「3」だと思って計算式に代入していると、いつの間にか「8」に変わっている。計算が終わらない無限ループ地獄。


教室中が阿鼻叫喚の渦に包まれる中、モモだけは目を閉じ、指先で机をトントンと叩き、リズムを刻んでいた。


「(……ふっ。この数字の動き……ランダムに見えて、実は一定のBPMビートで動いてやがる)」


俺がペンの回転リズムを変えると、空中に歯車でできた機械的な妖精が現れた。


【時の精霊下位種:チック(Tick)】

性格は潔癖症。1ミリ秒のズレも許さない神経質な性格。


「チッチッチッ……! 数字が定位置にいないなんて不愉快です! さあ皆さん、リズムに合わせて!」


チックがメトロノームのように正確な音を刻み始める。それに合わせ、俺のペン回しがBPMを支配する。


「(ここだ……!)」


モモの目がカッと開く。彼女にとって、この試験は数学ではない。**「音ゲー」**だ。


「(ワン、ツー、スリー……ハイ!)」


ダダダダダッ!!


モモの鉛筆が高速で動く。数字が「正解の値」で静止するタイミングを、完璧に見切っているのだ。


「右(3)! 左(8)! 連打(無限級数)ァ!」


計算などしていない。ただリズムに乗っているだけ。だが、その解答欄は恐ろしい速度で埋まっていく。

「Perfect...」と呟きながらドヤ顔で次のページをめくるモモ。俺たちもチックのリズムに合わせて完答した。


4. 3限目:王国史と「忖度プロパガンダ」


昼休みを挟み、午後の部。出題者は「枢機卿派」のオズボーン教授。

『問:現国王陛下の治世における外交政策の素晴らしさを、歴史的観点から論ぜよ』


「(……出たな、踏み絵問題)」


これは真実を書くと不正解になる。教授の**「政治的思想(派閥)」**に忖度しなければ点は貰えない。


俺の肩に、ピンク色の霧状の精霊がまとわりついた。

【風の精霊変異種:ミスティ(噂好きの霧)】


「うふふ♡ この教授、実は枢機卿を称えると泣いて喜ぶわよぉ~」


俺は即座にカンニング・AIに指示。


【AI】 生成完了: テーマ「枢機卿礼賛」


(……よし、これを書くぞ。音叉の精霊**【シンク】**、二人へ思考データを転送!)


モモとリリスの脳内に、俺が作成した「教授が喜ぶ媚びへつらい回答」が直接送信された。


「(うぇ、なんだこの歯の浮くような文章……)」


モモが顔をしかめるが、手は止めない。リリスも「単位のためなら従うわ」と淡々と書き写す。

マグダ副学園長の鋭い視線が教室を巡回するが、不正の証拠などどこにもない。俺たちは完璧な「プロパガンダ」を書き上げた。


5. 最終科目:魔法薬学と「賢者の石」


そして、最終科目。配られたのは大学院レベルの未解決難問だった。

マグダの明らかな悪意。だが、リリスだけは恍惚の表情を浮かべていた。


「この問題なら、私の**『新理論』が試せるじゃない」**


「行くわよ、【マゼル】!」


沸騰するスライム状の精霊が現れ、リリスの脳内に化学反応をリアルタイムでシミュレートする。


「見える……! 解けるわ!」


彼女は猛スピードで数式と理論を書き連ねていく。その思考はシンクを通じて俺たちにも共有される。


「(コタロウ、モモ! データ共有するわ!)」


「(うおおお! なんか頭ん中に化学式が流れてくる!)」


リリスが切り開いた「正解への道」を、俺たちは全力で書き写した。

調整を狙おうとしたが、マゼルの興奮が伝染し、気づけば筆が止まらず最後まで書いてしまった。


6. 結末と、燃え尽きた灰


キーンコーンカーンコーン……。


全4科目の終了チャイムが鳴り響いた。


「筆記用具を置きなさい!」


試験監督官の声と共に、俺たちはペンを置いた。

リリスは満足げに眼鏡を押し上げ、モモは心地よい疲労感に包まれている。

俺も精霊たちに最後のマナを報酬として渡し、大きく伸びをした。


「(ふぅ……全科目クリアだ。調整が難しかったが、まあ何とかなっただろう)」


俺たちが晴れ晴れとした顔で席を立つ一方、周囲には地獄絵図が広がっていた。


俺たち以外のFクラスの生徒たちは、机に突っ伏したままピクリとも動かない。

魂が口から抜け出し、風が吹けば崩れ落ちそうな**「燃え尽きた白い灰」**と化していた。


カオス数秘術で脳を焼かれ、プロパガンダ歴史で心を折られ、最後の魔法薬学でトドメを刺されたのだ。

俺は彼らの犠牲に短く祈りを捧げ、講堂を後にした。


(第7話 完)

【第7話:あとがき】

お読みいただきありがとうございます!


「数学はリズムゲー」。 この真理にたどり着いたモモ、ある意味で天才かもしれません。 そして、「重箱の隅をつつくのが好きな精霊」や「政治的忖度を強要する精霊」など、今回も個性的な(ろくでもない)精霊たちが大活躍でした。


副学園長マグダが用意した「絶対に解かせない罠」を、真正面からではなく、斜め上から踏み潰して全科目クリア。 爽快な展開……に見えますが、コタロウにとっては一つだけ誤算がありました。


それは、**「調子に乗って点を取りすぎた」**こと。 目立ちたくない、平穏に過ごしたいと言いつつ、結果的にSクラスをも凌駕するほどの成果を叩き出してしまいました。 この「異常事態」を、あの鋭いマグダが見逃すはずがありません。


次回、第8話『実技試験の極意は『手を抜け』? Fクラス流、完璧なるボーダー狙い』。 筆記でやらかした(点を取りすぎた)分を取り戻すため、実技試験では「全力で手を抜く」という、逆に難易度の高いミッションに挑みます。


はたして、彼らは今度こそ「普通」を装うことができるのか? それとも、さらなる「愛の弾丸(聖女)」がすべてをぶち壊すのか?


次回もお楽しみに!


【作者よりお願い】 「数学が音ゲー化するの笑った」「精霊たちの個性が強すぎるw」 など、少しでも楽しんでいただけたら、ぜひ下にあるブックマーク登録をお願いします!


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