第6.5話:【幕間】悪意の晩餐会(学部長会議)
【第6.5話:まえがき】
前話で「特級呪物」を克服し、束の間の団結を手に入れたFクラス脱獄メンバー。 しかし、その楽しげな声は、ある人物の神経を逆撫でしていました。
副学園長・マグダ。 彼女は「落ちこぼれが楽しそうにしている」という事実が許せません。
今回は視点を変えて、学園を支配する「大人たち」のお話。 深夜の会議の様子を覗いてみましょう。
1. 深夜の円卓会議
決戦前夜。Fクラスの寮でコタロウたちが奇跡の「カレー」を囲み、束の間の団結を深めていた頃。
その喧騒を冷ややかに見下ろした後、副学園長マグダは本校舎の最上階にある「大会議室」へと足を踏み入れた。
部屋の中央にある巨大な円卓を囲むのは、この学園を牛耳る各学部のトップたち。
通称、**「賢人会議(学部長会議)」**である。
「――お待たせしました」
マグダが席に着くと、部屋の空気が一段と重くなった。
彼女の背後には、居眠りをしているオスモンド学園長の姿があるが、実質的な進行役は彼女だ。
「先ほど、Fクラスの寮周辺を視察してまいりましたが……嘆かわしいものです。明日の試験を前に、緊張感の欠片もなく宴会に興じておりました」
マグダは不快そうに眼鏡の位置を直した。
「彼らはすでに諦めているのでしょう。ですが、我々としては『不合格』の印を押すだけでなく、二度と学園の敷居を跨ごうと思わないほどの『教育』を施す必要があります」
2. 問題児たちの報告書
「教育、とは?」
口火を切ったのは、精霊魔法学部長のヴォルコットだ。彼は暑苦しい身振りを交えて問いかける。
「彼らにパッション(情熱)が芽生えたとでも言うのかね!?」
「いいえ。もっと悪質な『秩序の撹乱』です」
マグダは手元の資料をテーブルに滑らせた。
「まず、人狼のモモ・イヌガミ。魔力制御不能の欠陥品でしたが、先日、第3演習場のカカシを木っ端微塵にしました。……目撃情報によれば、奇妙な『リズム』を用いていたとか」
「リズムだと? 精霊への冒涜だ! バイブスが足りん!」ヴォルコットが憤慨する。
「次に、エルフのリリス・アルケミア。彼女は『空飛ぶ座布団』なる奇行に走り、航空力学の教授を卒倒させました」
「そして……」
マグダの視線が、歴史学部のヘンドリックス教授に向けられた。
「ヘンドリックス教授。貴方が先日発表した『神代文字の解読論文』。……あれに協力したのが、Fクラスの生徒だという噂は本当ですか?」
指名された老教授が、ビクリと肩を震わせた。
「あ、あくまで『協力者K』だ! 彼の翻訳は完璧だった! 神々の深遠なるメッセージを……」
「ええ。その論文の内容、『濡れた手で触るな(禊を行え)』でしたか? あまりに都合が良すぎる解釈です」
マグダは鼻で笑った。
「私の見解はこうです。Fクラスの生徒たちは、真面目に学ぶことを放棄し、小手先の『奇術』や『インチキ』で点数を稼ごうとしている」
会議室にざわめきが広がる。
名門校のプライドが高い彼らにとって、Fクラスのような落ちこぼれが目立つことは許しがたい屈辱なのだ。
3. 難易度設定:ナイトメア(悪夢)
「そこで、提案があります」
マグダは立ち上がり、明日の試験問題のデータを空中に投影した。
「明日の進級試験。難易度を**『Hard』から『Nightmare(理不尽)』**へと引き上げます」
「なっ……!? 正気かね副学園長!」
とある教授が声を上げた。
「そんなことをすれば、Fクラスどころか、一般クラス(A〜E)の生徒まで全滅してしまう!」
「構いません。Sクラスは免除ですから」
マグダは冷酷に切り捨てた。
「目的は『間引き』の徹底です。小賢しい手を使うFクラスのゴミどもに、本物の絶望を教えてやるのです。……各学部長、協力なさい」
マグダの圧力に、教授たちは顔を見合わせ、そしてニヤリと笑った。
彼らもまた、自分の権威を守りたい「教育者という名の支配者」だったのだ。
「……ふむ。ならば数学(数秘術)の問題だが」
数秘術の教授が手を挙げた。
「インクに細工をして、**『数字が勝手に動く』**ようにしてはどうかな? 正解を書こうとしても数値が変わる。これならカンニングなど不可能だ」
「採用です」マグダが頷く。
「歴史学はどうする?」
枢機卿派のオズボーン教授が、陰湿な笑みを浮かべた。
「事実ではなく、**『私への忠誠心(忖度)』**を問う問題にしよう。教科書通りの正解を書いた者は減点。私の政治思想を称賛した者のみ加点する」
「素晴らしい。思想教育も兼ねられますね」
「魔法薬学は?」
「大学院レベルの未解決問題を出そう。どうせ誰も解けん」
次々と決まっていく「悪意のトラップ」。
それは教育的配慮など微塵もない、ただFクラスを退学に追い込むためだけの「処刑リスト」だった。
4. 眠れる獅子の警告
「――完了です」
全ての科目が「理不尽」に書き換えられた。
マグダは満足げに、決定ボタンを押そうとした。
「……むにゃ。やりすぎはいかんぞ、マグダ君」
不意に、寝ていたはずのオスモンド学園長が呟いた。
「ん? 学園長、お目覚めですか?」
「……窮鼠猫を噛む、と言うてのぉ。追い詰めすぎると、逆に『予想外の力』を引き出すこともある」
好々爺然とした瞳が、一瞬だけ鋭く光った。
「特に今年のFクラスには……『常識の外』にいる者が混じっておる気がするのじゃよ」
「常識の外、ですか?」
マグダは嘲笑した。
「ええ、確かに常識外れな無能たちです。だからこそ、ここで排除するのです」
ポチッ。
決定ボタンが押された。
試験データが魔道サーバーにアップロードされ、明日の「地獄」が確定した。
「おやすみなさい、学園長。明日は素晴らしい『処刑ショー』になりますよ」
マグダは優雅に一礼し、会議室を後にした。
残されたオスモンド学園長は、再びテーブルに突っ伏しながら、誰にも聞こえない声で呟いた。
「……知らんぞ。その『処刑台』が、奴らにとっての『演芸場』になっても」
決戦前夜。
教師たちの悪意(慢心)と、コタロウたちの決意(食欲)。
二つの思惑が交錯し、運命の朝が訪れようとしていた。
(第6.5話 完)
【第6.5話:あとがき】
お読みいただきありがとうございます!
「数字が勝手に動く数学」「政治的忖度を求める歴史」……もはや試験ではなく、ただの嫌がらせですね。 教育者としてのプライドをかなぐり捨てた大人たちのエゴによって、Fクラスには「不合格」以上の絶望が用意されてしまいました。
しかし、マグダ様たちはまだ気づいていません。 コタロウという「常識の外」の存在が、この理不尽なナイトメア・モードをどう攻略してしまうのかを。
窮鼠が猫を噛む……どころか、鼠の皮を被った怪物が猫を捕食する準備は整いつつあります。
次回、いよいよ第7話『筆記試験は「クソゲー」だが、俺には透明なカテキョ(精霊)がいる』。 大人たちの悪意を、斜め上の「ズル」で粉砕する爽快な逆転劇にご期待ください!
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