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よびだし
「私に?」
呆然とした声が、女の口から零れた。
「はい。姫様に。国王陛下がお会いになりたいと」
使者は深々と頭を下げたまま、視線だけで女の反応を窺っている。
――父が、私に?
皇女と呼ばれながら、腫れ物のように扱われてきたこの身を。
今まで一度も会おうとせず、舞踏会にも呼ばなかった父が。
なぜ、今になって。
胸に湧くのは喜びではない。
戸惑いよりも、もっと重いもの――恐怖だった。
「来ていただけますね?」
それは問いではなく、確認だった。
女はただ、黙って頷いた。
女に与えられている部屋は、巨大な城の最奥だった。
村一つ飲み込むほどの城の中で、国王はおろか、兄弟姉妹に会うこともほとんどない。
それは、女が一定の場所から出ぬよう、暗に警告されていたからでもある。
理由など、考えるまでもない。
確かに存在しているのに、いないものとして扱われる。
囁きの中でしか名を呼ばれない存在。
嘲り、嫌悪、恐怖、憐憫。
輝かしい城の中で、女の居場所はそれら負の感情の檻だった。
――けれど。
女は、ある意味で自由でもあった。
見て見ぬふりをされることを、利用する術をいつの間にか身につけていたからだ。
父が会おうとしないことも、もう平気だと――そう言い聞かせてきた。
……はずだった。




