表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

つき

月を見つめる女の横顔を、翁は黙って見つめていた。

言葉をかけるのをためらうほど、その姿は静かで、完成されていた。


ああ、なんて美しい。

私の娘。


胸の奥で、何度もそう繰り返す。

拾い上げた日のことを思い出すたび、奇跡だと思わずにはいられない。


この子は、天からの贈り物。

誰よりも清らかで、誰よりも儚い。

土に根を張る人の世には、本来いない存在だ。


だからこそ、守らねばならない。

そう信じてきた。


だが最近、娘の横顔には、かすかな憂いが宿るようになった。

月を見上げる時間が増え、微笑みは薄れ、夜ごと沈黙が深くなる。


翁の胸に、不安が芽生える。

理由のわからない恐れが、静かに広がっていく。


「どうしたのだ、なよ竹の……」


名を呼びかける声は、思ったより弱かった。

老いも、不安も、すべて滲んでいた。


娘は振り返った。

泣いているとも、笑っているともつかぬ表情で。


人の感情を模した仮面のようでいて、

その奥に、決して触れられぬ何かを隠している顔。


「私は、もうすぐ月へ帰らなくてはいけないのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ