覚悟[2/2]
血の刻印覚醒。
影盾で刀を破壊、一刀両断。
零、初めての戦闘。
瓦礫の上で、男が刀を構える。
近距離なら肉弾戦、
少し離れれば即座に飛ぶ斬撃。
隙のない、完璧なバランス。
俺は内心で舌打ちする。
(近距離特化ってほど火力もないし、
遠距離牽制スキルも皆無。
本当に困った相手だ)
男が笑う。
「どうした? もう終わりか?」
猛攻開始。
斬撃が嵐のように降り注ぐ。
俺は影を盾に変え、必死で凌ぐ。
シロが叫ぶ。
「このままじゃジリ貧よ!
一旦退いて体勢を立て直し――」
「そうしたいのは山々だけど、
今は影で防ぐだけで限界なんだよ!」
男の斬撃速度が、さらに一段上がる。
「まだ上がるのかよ!」
「影の変形が追い付かない!」
男が嘲る。
「お前の影の変形速度も落ちてきてるみたいだなぁ!」
次の瞬間――
ズガアアアアアア!!
影盾を突破した一閃が、
俺の胴体を真正面から捉えた。
「ここまでのようだな!」
衝撃で俺は後方へ吹き飛ぶ。
シロが絶叫。
「零!? 生きてる!?」
ドサッ。
地面に叩きつけられながら、
俺は薄く笑った。
「……あぶねぇ。
段々、影の応用が上手くなってきたな」
服の下から、
漆黒の影が滲み出る。
俺は立ち上がり、
全身を影で覆う。
初めての、影の鎧。
薄く、しかし確実に体を包む黒い外殻。
男が目を細める。
「……ほう。
隠し玉か」
シロが息を呑む。
「……零、いつの間に……!」
「さっきのビル崩落で、
ギリギリのところで気づいただけだ」
男が感心したように笑う。
「実力にそぐわない頭の回転力で
生きながらえてるのが悲しいな」
「まぁ、このゲームやってるんでね」
とは言ったものの、
正直、本当にギリギリだ。
男がニヤリと笑う。
「まだ隠し玉はあるかな? もうおしまいかな?」
あと少しだけ……時間が欲しい。
「もう打つ手がないなら、いかせてもらうぞ!」
男が剣を片手に突進。
俺は小さい影盾を生成し、
間一髪で刀身を受け流す。
その瞬間、地面から影棘が爆発的に突き出る!
男の足に深く突き刺さる。
男「チッ、こざかしいな!」
シロが口から毒ブレスを顔面に浴びせる!
男「グアアッ! なんだこれ! 目が――!」
視界を奪われ、悶絶。
俺たちは全力で離脱。
数ブロック先のビルに飛び込み、
ドアを影で塞ぐ。
「はぁ……はぁ……助かった。ありがとうシロ」
「いいえ。今の私はこれしかできないから」
息を整えながら、左腕を見ると、
黒い痣が浮き上がっている。
システムを開く。
【状態】
・シロの加護
・血の刻印(覚醒前)
【スキル】
・影武装(進化)
・戦闘の記憶
「……なるほど。
なら、この痣が完全に黒くなったら覚醒か」
外から、破壊音。
ドオオオオオオオオン!!
正面玄関が吹き飛ぶ。
男「どこだぁ! このビルにいるのは分かってるぞ!」
俺は苦笑い。
「随分早い登場だな」
シロ「本当に策なんかあるの?」
「まぁ、見ててくれ」
俺は男を背にして、
ビル奥へ全力疾走。
男「言ってることとやってること違うじゃねえか!」
猛追。
背後から飛ぶ斬撃が壁を削り、
瓦礫が俺の背中に直撃して転倒。
男「人をコケにしやがった罰だ!
ここまでだ! くたばれ!!」
振り下ろされる刀。
俺は叫ぶ。
「今! ここだ!!」
壁面・床・天井から、
同時に無数の影棘が爆発!
男は咄嗟に刀で防ごうとするが、
その一瞬の隙を俺は逃さない。
影刃で袈裟斬り!
鎖骨から腹まで、
深い一文字。
男「ぐっ……!」
血が噴き出す。
男は激昂し、
剣をグルグル振り回して周囲を破壊。
柱が折れ、
ビルが大きく傾く。
「まずい! 盾が間に合わない!」
俺は影で体を包み、
崩落するビルから飛び出す。
男も血まみれで追ってくる。
外はもう、
崩壊したビルの瓦礫の海。
男が息も絶え絶えに笑う。
「……まだ、やれるぜ……」
俺も血を吐きながら立ち上がる。
左腕の痣が、
完全に真っ黒に染まった。
【システム通知】
『血の刻印 覚醒』
『基礎身体能力 大幅上昇』
『攻撃スキル最大威力 上昇』
シロが息を呑む。
「……零……!」
男が目を見開く。
「……化け物かよ」
俺は静かに告げる。
「……お前もな」
最後の一撃。
男が最大の斬撃を放つ。
ズガアアアアアアアアア!!
俺は影を巨大な盾に変形。
衝撃で盾が軋むが、
血の刻印の力で耐えきる。
盾が、
男の刀を粉々に砕く。
男が目を見開く。
「……っ!?」
俺は影刃を握り、
一歩踏み込む。
影刃が、
男の体を一刀両断。
ズシャアアアアアアアアアアア!!
血が噴き出し、
男の上半身と下半身が、
別々に地面に落ちる。
男が、
最後に呟く。
「……楽しかった……ぜ……」
【システムアナウンス】
『プレイヤー殺害確認
ランキング変動:452位 → 83位
獲得スキル:斬撃波(一部)』
静寂。
俺は血まみれの影刃を下ろす。
シロが、
震える声で呟く。
「……零……
やったわね……」
俺は自分の手を見る。
真っ赤だ。
男の肉体が、
光の粒子となって昇華し、
その場から崩れ去った。
俺は、
静かに呟いた。
「……ありがとう。
俺はお前の戦闘で、大きく成長できた気がする」
「お前の分も、頑張るよ」
白い靄が立ち込める。
――第5話 完――




