虚像と実像[2/2]
・使徒=死んだプレイヤー判明
・敵数2倍&Top500入り
淡々とした零が、少しだけ前を向く。
――ピピピピ。
06:30。布団で目覚める。
左腕と肋骨がズキズキと疼く。
昨夜の夢の傷が、現実にも残っている。
枕元のスマホが震える。
地図アプリが自動更新。
『ステージ2 開始確認
新ルール:出現敵数通常2倍
エリア制覇Top500入賞(現在498位→481位へ上昇)
残存プレイヤー:457名』
「……上がったか」
昨夜の廃病院で見た真実――
使徒は死んだプレイヤー。
昨晩倒した鵺型が相羽航希だったこと。
淡々と受け止めた。
感情はもう、邪魔になるだけだ。
俺はシャワーを浴び、
傷口に絆創膏を貼り、
プロテインを流し込む。
夜を待つ。
19:00。部屋の電気をすべて消す。
地図アプリを再確認。
【今夜のエリア】
名称:古い村落
敵数:トカゲ型200体(2倍)+鵺型使徒1体
脅威レベル:B+
「……行くか」
布団に横になり、目を閉じる。
◇
――古い村落。
月が血のように赤く、
提灯の灯りがすべて消えている。
霧が足首まで這い、土と苔の匂いがする。
【クエスト開始】
最初に襲ってきたのはトカゲ型の大群。
200体が四方八方から這い寄る。
影刃を地面に突き刺し、
放射状に刃を展開。
一気に30体を両断。
だが、残りは怯まない。
再生しながら襲いかかる。
屋根を蹴って跳躍。
影刃を10本に分裂させ、
雨のように降らせる。
瓦が砕け、血と鱗が舞う。
50体突破。
100体突破。
150体目で、初めて爪が左腕をかすめる。
皮膚が裂け、血が滴る。
「……痛ぇ」
再生はしない。
ステージ2は甘くない。
残り50体が一斉に跳躍。
俺は地面を蹴り、中央に着地。
影刃を巨大な円環に変形し、
回転斬り。
トカゲ型の半身が宙を舞う。
最後の一匹を貫いたとき、
静寂が訪れた。
境内に到達したとき、
空気が歪み、
鵺型使徒が出現。
猿の頭、狸の胴、蛇の尾、虎の翼。
「霧島零……任務だ」
戦闘開始。
俺の影刃は完全に弾かれる。
一瞬で間合いを詰められ、蛇尾の一撃で20メートル吹き飛ばされる。
背中から家屋に激突、肋骨がさらに折れる。
システムを呼び出す。
【敵情報】
鵺型使徒 脅威レベル:???
最初はB+だったはずが、完全に異常値。
「何だ……これ……」
考える隙に鵺が消え、
次の瞬間、俺の目の前。
虎の翼が薙ぎ払い、
俺は血反吐を吐きながら吹き飛ぶ。
死ぬ。
そう思った瞬間、
鵺の動きがピタリと止まった。
体が痙攣し、猿の口が震える。
「……に、げ……て……」
掠れた、女の声。
「……い……ま、すぐに……時間、いっぱいまで……に、げて……」
使徒の人格と、元のプレイヤーの人格が分裂している。
鵺は必死に首を振りながら、
「だめ……体が……言うことを……聞かない……」
俺は這って立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
その場に座り込む。
鵺が絶叫。
「や、やめて……! 動くな……!」
体が勝手に突進してくる。
残り数メートル。
俺は最後の力を振り絞り、
影刃を一本の巨大な刀に変形させた。
鵺が自ら首を突き刺す形で突っ込んできた。
ズブゥッ!
反動で俺は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
鵺は首を貫かれたまま激しくもがく。
再生しようとするが、人格同士の反発でしているのか再生ができていない。
肉体を維持できていない。
俺は這って近づき、血まみれの声で叫んだ。
「がんばれ!
次はお前が勝て!!」
鵺の眼が真っ赤に染まる。
次の瞬間、
体が爆発的に霧散。
猿の頭、狸の胴、虎の翼……すべて消える。
ただ、
蛇の尾だけが、地面に残った。
蛇がゆっくりと首をもたげ、
震える声で呟いた。
「……わたし……生きてる……の?」
女の声。
人間の声。
俺は息を呑み、
掠れた声で返す。
「……どういうことだ?」
――第3話 完――
第3話完結しました!
蛇が生き残った。
使徒じゃない。
でも、完全に人間でもない。
「……どういうことだ?」
これで第3話終了。
蛇の正体はまだ一切明かしません。
次回から、少しずつ謎が動き出します。




