表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

虚像と実像[1/2]

夢で見た扉が、現実にもあった……

虚像と実像の境界が、崩れ始める。


使徒の正体が少しだけ……!?


――ピピピピ。

06:30。俺は布団から起き上がった。


腕の筋肉がまだ疼いている。

昨夜の航希の叫び声が、耳に残っていた。


スマホを握り、通知を確認する。

同僚からのLINE。昨夜の飲み会で送られてきたSNSスクショだ。


「霧島、これ見てみ。最近バズってる心霊スポットだってさ。ヤバくね?」


添付画像は、廃墟と化した古い病院の内部写真。

崩れた壁のひび割れ具合、埃まみれの非常灯の位置、床に転がった点滴スタンドの角度……

すべてが、俺のスマホ地図アプリに表示された今日の担当エリア「廃病院・地下3階」と完全に一致していた。


「空似じゃない……」


半年間、このゲームで見た廃墟は、現実のものと微妙に違うディテールがあった。

ガラスの割れ方、コンクリートの崩れ具合、錆の食い込み方。

だが、これは違う。

現実の場所が、夢のバトルフィールドに使われている。


心臓が早鐘のように鳴る。

確かめに行かないと、今日の夢が始まる前に気が済まない。


スマホの地図アプリを開く。

「廃病院・地下3階」はまだ赤く塗りつぶされていない。

今日のクエストだ。


「……行くか」


深呼吸して、目を閉じる。



――意識が落ち、廃病院・地下3階に到着。


空気は重く、腐臭と消毒薬の残り香が鼻腔を刺す。

壁はカビだらけ、天井からは水滴がポタポタ落ち、床は血痕と蜘蛛の糸で覆われている。


【システムログ】

本日の参加者:462名

クエスト:廃病院・地下3階の毒蜘蛛群を全滅させろ

討伐対象:78体


「また蜘蛛か……」


廊下の奥から、ガサガサという無数の足音。

大小さまざまな毒蜘蛛が、天井や壁を這いながら一斉に襲いかかってくる。


俺は影刃を生成。

戦闘記憶が自動で起動し、過去の蜘蛛パターンが頭に線として浮かぶ。


最初の波、10体。

跳躍してくる奴の軌道を読み、横に滑って複眼を一閃。

背後から来る3体は、後ろ手で連続斬り。


毒の霧が噴き出し、皮膚がチリチリ焼ける感覚。

だが、慣れた。息を止め、霧の濃度を予測して前進。


20体目あたりで、上位個体が混じり始める。

体長2メートル、黒い棘を飛ばしてくるタイプ。


棘が耳元をかすめ、壁に突き刺さる。

「近いな」


棘の軌道を記憶に刻み、次の1体を脚から薙ぎ払い、複眼を粉砕。

残り30体。連携パターンが複雑化するが、戦闘記憶の予測率80%で外さない。


毒霧が視界を覆う中、最後の一体を貫く。


【システムアナウンス】

『廃病院・地下3階 全滅確認

 クエストクリア』


静寂。


……が、いつもの白い光が来ない。

強制目覚めが、訪れない。


「どういうことだ……?」



周囲を慎重に見回す。

倒した蜘蛛の死骸が霧散し始め、床が元のコンクリートに戻る。


すると、奥の壁に――

これまで一度も存在しなかった鉄の扉が出現していた。


重厚な鋼鉄製、錆びた取っ手、表面に奇妙な刻印。

半年で182エリアクリアしたが、こんなものは見たことがない。


地図アプリを呼び出す。


【システムマップ表示】

担当エリア「廃病院・地下3階」は赤く塗りつぶされかけているが、扉の先は真っ白。

システム上、**存在しない空間**だ。


「隠しエリア……?」


好奇心と警戒心が交錯する。

無視して帰る選択肢もあるが、航希の死以来、何か「変わり目」を感じていた。


影刃を長く伸ばし、錠を破壊。

無理やり扉をこじ開ける。


ギギギィィィィッ!!


金属の軋む音が響き、向こう側が露わになる。


薄暗い資料室だった。

埃まみれの机の上に散乱する黄ばんだファイル束、無数の写真が壁にピンで留められ、中央に埃をかぶった古いモニター。


空気がさらに重い。

何かの予感がする。


一歩踏み込んだ瞬間――


【システム音声 異常】

『ギギ……ギギ……強制覚醒まで……残り30秒……ノイズ……』


システム音声が初めて乱れる。

視界の端が歪み始め、吐き気がこみ上げる。


慌てて床に落ちた一枚の写真を拾い上げる。


写っていたのは、

**現実世界の廃病院入り口**。

崩れた門、雑草だらけの敷地、遠くに見える同じ非常灯。


そして、入り口のコンクリートに赤いマジックで殴り書きされた――


【警告】


写真の裏に、手書きの小さなメモ。


次の瞬間、世界が白く染まった。


――ピピピピ。


06:30。布団の中で目覚めた。


汗でびっしょり。



「……マジかよ」


写真の住所をGoogleマップで検索。

同僚が送ってきたSNSの心霊スポットと完全に一致。

都心から電車で1時間半の、立ち入り禁止の廃病院。


「夢の場所が、現実にある……」


今日は完全に会社をズル休みした。

上司に「体調不良」と適当なメールを送り、即座に支度。


電車に揺られながら、写真を何度も見つめる。

SNSの投稿者は「超ヤバい心霊スポット」とキャプション。

コメント欄は「ガチ怖い」「行ってみた人いる?」で溢れている。


午後2時、現地到着。

廃墟の入り口は、写真と寸分違わない。

雑草が膝まで伸び、風が不気味に吹き抜ける。


スマホが震えた。


画面に赤い文字が浮かぶ。


【警告】


心臓が止まりそうになる。

夢と同じ警告。


意を決して中へ。

階段を降り、地下3階まで。


埃っぽい廊下、チカチカする非常灯。

夢と現実の境目が溶けていく。


そして、あった。


”鉄の扉”


夢で見たのと完全に同じ錆び方、同じ傷跡、同じ刻印。


持ってきたバールで錠を破壊。


ギギギィィィィッ!!


扉の向こうは、夢で見た資料室と完全に一致していた。


散乱するファイル。

壁いっぱいの写真。

中央のモニター。


俺は震える手で一枚のファイルを手に取った。


表紙に書かれていたのは――


『夢喰いの使徒 任務概要(抜粋)』


埃を払い、読めたのは最初の数行だけ。


『使徒とは、プレイヤー同様にシステムから任務を与えられた存在。

 主な役割:指定エリアのプレイヤー妨害、魂回収補助。

 任務報酬:生存延長、スキル強化。

 選抜基準:――――――(以下破損)』


「使徒が……俺たちと同じ……?」


その瞬間、スマホが激しく震えた。


【警告】




虚像(夢)と実像(現実)が完全に重なった。

そして、使徒はプレイヤーと同じ……


続きは【第3話・後編】「虚像と実像――使徒も“任務”を抱えていた」で!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ